60.ルーベットと対神部隊と戦女神
「は?」
目の前の幼女――『AliveOut』のクランマスター・ルーベットが放った言葉に俺は思わず聞き返す。
誰が最強の血を受け継ぎし者だって?
「ふむ、こうして対面してみても良く分かる。中々良い面構えをしておるのう」
「待て待て待て、話が見えないぞ。誰が何、だって?」
「何じゃ、わしの話を聞いておらんかったのか? お主が最強の血を受け継ぎし者だと言ったのじゃ」
「いや、それの意味が分からんって言ってんだよ。何だよ最強の血って」
「なんじゃ、嬉しくないのか? お主のような若者には『最強』とか『受け継ぎし血』とかが受けるのじゃろう?」
いや、確かに男としては気にならないわけじゃないが、そのワードを平気で口にするのはほぼ中二病患者だと思うぞ。
「ルーベット、鈴鹿のような年代になるとその手のワードは黒歴史になるのよ」
「む、そうか。こう言えば男の子には受け入れやすいかと思ったが簡単にいかんの」
俺の内心を代弁するかのようにルーベットの隣に立っているキャリアウーマンがルーベットを諌める。
それにしても・・・2人の様子を見ると明らかに異世界人だと分かるな。
それもルーベットは中身がかなりの年齢だと思われる。ロリ婆のロールプレイでない限りは。
それを証明するかのように唯姫から捕捉が入った。
「ルーベットさんはああ見えて90歳を超えるお婆ちゃんよ」
「はぁっ!?」
「ええぇ!? ちょっと待って、だってあの姿、どう見ても10歳にも満たない幼女じゃん!」
これには流石に俺だけではなくトリニティも驚いていた。
「これは身体じゃからの。天と地を支える世界に帰魂覚醒する時に女神アリスより授かった身体をこの姿にしたのじゃ。
中身はディープブルーの言ったように100歳近い婆じゃ」
あー、確かにAIWOnの初期設定で身体を設定するれば中身が婆さんでも幼女プレイが可能か。
と言うか、100歳近い婆さんがVRMMOだと・・・幾らなんでもアクティブ過ぎやしねぇか?
「さて、改めて自己紹介をしておこうかの。
この神秘界の唯一にして解放を目指すクラン『AliveOut』のクランマスター・ルーベットじゃ。共に戦う仲間じゃから無理をして敬語などを使わなくても良いぞ。
そして察しの通り、異世界人でもある。こっちの堅物っぽいのがわしの秘書役の狼御前じゃ」
「誰が堅物よ。私のこの姿はあくまで貴女の秘書役に合わせた姿よ。堅物だなんて心外だわ。
耄碌したお婆ちゃんの言う事は信じないでね。私はサブマスターの狼御前よ。ルーベットと同じく異世界人よ」
「あ、えーと、鈴鹿だ。何か俺の事を知っているっぽいが、説明してもらえるんだろうな?」
「トリニティです」
「ラヴィよ。知っていると思うけど、神秘界の騎士のThe Loversよ。
けど私を戦力としてカウントしないでね。幼馴染ちゃんの治療役として同行しているから」
取り敢えず初対面どうし自己紹介をするが、俺の視線は狼御前に注がれていた。
秘書役などと茶番のようなやり取りを見るとそんな風には見えないが、かなりの強者と思われる。
その身のこなし、雰囲気、気配、どれを取ってもただ者じゃない。
俺が知る限りこの感じはA級のデュオやウィル、下手をすればS級の美刃さんに匹敵する強さだと思われる。
「あら、そんなに見つめられると照れちゃうわね。あんまり見つめると隣のブルーが怖いわよ?」
どうも意識過ぎたみたいだ。俺の視線に気が付いた狼御前が注意をしてきた。
そして言われるままに隣の唯姫を見れば目を吊り上げてこっちを睨んでいる。
「鈴くんが見るのはこっち!」
そう言って唯姫は俺の顔を両手で挟み込んで自分の方へと向けさせる。
って、おいおい。ここが何処で周りに誰が居るのか分かってやっているのか?
「あらあらあら、早速ヤキモチかしら? うふふ、いいわねぇ。どんどんやっちゃさい!」
案の定ラヴィの目に止まり、からかわれて唯姫は慌てて手を話し顔を真っ赤にしていた。
「若いっていいのう・・・
さて、鈴鹿。お主の事じゃが、詳細はディープブルーより聞き及んでおる。何でも自慢の幼馴染だとか。お蔭で色々お主の事を知ることが出来た。
そこからお主が最強の血を受け継ぎし者だと判断したのだが・・・その様子じゃ知らぬようじゃの。ならばわしの口からは言うまい。現実世界に戻ってから聞くがよかろう」
・・・待て。ルーベットのその様子から最強の血って、俺の両親の事か!?
え? 最強? 想像がつかんぞ!?
そもそも最強って、親父もお袋も武力は強くないし、権力も強いわけじゃない。まぁ、親父は新進気鋭のICEの部長を務めているから全く権力が無いわけじゃないが。
親父達はそんな事一言も言ってないし、何かの勘違いじゃないのか?
うーむ、何か余計な謎が増えたような気がしないでもないな・・・
「お主たちが『AliveOut』に加入してくれると言う話じゃが、わしらにとっては願ったり叶ったりじゃ。お主のような者が加わってもらえれば鬼に金棒じゃからな」
「レイダから聞いていると思うが、俺が神秘界に来たのは唯姫を助ける為だ。そしてそれはこれからも変わらない。
『AliveOut』に入るのも唯姫を神秘界から脱出させるのに一番可能性が高いからだ。
悪いが場合によってはあんたらの命令より唯姫を優先させるかもしれない。それでもいいなら『AliveOut』に加入させてくれ」
加入させてくれって随分上から目線だが、ここははっきりさせておかなければならない部分だ。
唯姫を助けられなければ何のために神秘界に来たのか分からないからな。
「構わぬよ。それでわしらに協力してくれるのじゃったらな」
どうやら俺の心配は杞憂だったみたいだ。
ルーベットにとっては1人でも多くの戦力を求めているから多少の理由でも構わないのだろう。
まぁ、だからギャンザみたいな輩も混じったりしているんだな。
「ねぇ、早速で悪いけど、人を1人探し出してもらえるかしら。あたし達にはもう1人仲間がいるのよ。何故か神秘界に転送された際にはぐれてしまって。
少なくともその人もクランに入ればかなりの戦力になるわよ」
そう言ってトリニティは早速クランの力を使いアイさんを探してもらうよう要請した。
あ~、そう言えばアイさんを捜さないといけなかったな。
アイさんの事だから1人でも十分やっていけると思うが、唯姫を優先しすぎて流石にこれ以上の放置は拙いな。
互いに連絡を取ろうにも連絡手段が無いからなぁ。
獣人王国で『投槍の使徒』のクエストの時に使っていた携帯念話があればまた違ったんだろうが、あれはアイさんが直ぐに回収してしまったんだよな。
まぁ、普段から一緒に居たから互いの連絡に困ることは無かったんで、こういった時の事を考えてなかったんだよなぁ。
「ふむ、分かった。こちらでも各都市のクランメンバーに連絡をして探しておくように言っておこう。
して、その者の名前と特徴は?」
トリニティがアイさんの名前と特徴を話すとルーベットと狼御前が少し驚いたような表情をしていた。
「・・・まさかの」
「でもその特徴はあり得るのではないかしら?」
「なんだ? もしかしてアイさんの事を知っているのか?」
「いや、気のせいじゃろう。忘れてくれ」
うーむ、気になるなぁ。
こういう時の態度って十中八九知っているんだよな。
で、言えない秘密が隠されていると。
そう言えばアイさんから後で隠している事を話してもらうって言ってたけど、まだ聞かされてないんだよな。
アイさんの隠し事を聞く為にも必ず探し出さないと。
「アイさんって、鈴くんを神秘界に来るまで色々助けてくれたもう1人の女性の人?」
「うん、そう。一応あたしの師匠でもあるのかな?
アイさんが居なければあたし達はまだ天と地を支える世界に居たかもしれないわね」
唯姫には木曜都市に来るまでの道中でもう1人の仲間が居た事は話している。
道中の唯姫の体調を考慮して負担を掛けないようにしていたから簡単な説明しかしていなかったので気になっていたのだろう。
因みに、ここに来るまでの道中で唯姫とトリニティが仲良くなったように見えていたんだが、空気がピリめいていたような気がするのは気のせいだと思いたい。
「さて、お主らが『AliveOut』に加入してくれたおかげで戦力は大幅にアップした。
本来ならこのまま攻略部隊と合流して神秘界の騎士の攻略に向かってもらうところじゃが・・・お主らには新たに設立する対神部隊に所属してもらおうと思っておる」
耐震? いや、対神か? その字面から察するにまさかとは思うが・・・
「そのまさかじゃ。対神部隊は対八天創造神の攻略をしてもらう部隊じゃ」
俺の心を読んだかのようにルーベットが対神部隊の内容を説明してくる。
「言うまでも無く、全ての元凶でありこの神秘界を支配しているのが八天創造神じゃ。
その八天創造神を攻略するのは神秘界の脱出の一番の近道と言えるじゃろう」
いや、ルーベットの言う事も分かるが、だったら最初っからそっちを攻略しろって言いたいんだが?
俺のその疑問に狼御前が答える。
「まずは戦力の不足が上げられます。
八天創造神に対抗できる人物が居ないとは言えませんが、八天創造神と神秘界の騎士を比べるのなら確実性のある神秘界の騎士を選んだのです。
八天創造神は不明瞭な部分が多く、不確定要素が多いのです」
「そうね。あいつらは強いのか弱いのか分からないことが多いわ。戦力的な事を言えば神秘界の騎士の方が強いかもしれないけど、あいつらの持っている技術が未知な部分が多いのよ」
そう言って捕捉するのはラヴィだ。
もう少し具体的に言えば、ラヴィら神秘界の騎士に力を与えたのは八天創造神だ。
つまり奴らには他者に力を分け与える能力があるとも言える。
それはAIWOnを設計したのが八天創造神――Arcadia社の幹部らだからシステムをいじればそう言った事は可能なのだろう。
だからそう言った面では不確定要素が多いとも言える。
おそらくだが異世界人であるルーベットと狼御前もその事に気が付いているんだろう。
流石に八天創造神がArcadia社の幹部だとは思わないだろうが、八天創造神と言うボスがシステム面で不確定要素を持っているのに気が付いたんだろうな。
「その戦力の不足は鈴鹿が加入してくれたことで補われます。
不慮の力の発揮だそうですが、土曜創造神を倒したのは私たちにとっても驚異的な事です。
八天創造神に対抗できる手段があるにも拘らずそれを遊ばせておく必要はありません」
あー、あの鬼獣の力を当てにしているのか・・・
確かにあの力を使えば八天創造神に対抗できるだろうな。
だが、出来れば使いたくないんだよな。この前は辛うじて理性を取り戻せたが、この次もそうだとは限らない。
「そしてもう1つ、とびっきりの戦力が加わったことが対八天創造神の攻略部隊を設立することになりました」
「とびっきりの戦力?」
自惚れる訳じゃないが、俺を八天創造神の対抗としているにも拘らず、それ以上の戦力ともなれば気にならない方がおかしいだろ。
「うむ、とびっきりの戦力じゃ。わしの知る限り、この神秘界・・・いや、AIWOnで彼女に匹敵する者は6人と居らんじゃろう」
「随分と持ち上げるんだな?」
「それはそうじゃろう。何せAIWOnで最強とされる七王神の1人、戦女神が加入したのじゃからな」
「「は?」」
確かに七王神の1人が加入したのなら八天創造神に対し強気になるのは頷ける。
・・・そう言えば、確か七王神って23年前のAngel In プレイヤーの可能性があったはず。
そうだとすればデスゲームを生き抜いた力は紛れもない最強戦力だ。
「それは・・・本物なの? まさかここに来て偽物を掴まされて命を失うなんてしたくないわよ?」
トリニティの言う事は尤もだ。
偽物を騙りうまい汁を吸う者、もしくは奴らが偽物の七王神を仕向けた可能性もある。
七王神を名乗る者が本物だとは限らないのだ。
だがルーベット達ははっきりと断言した。
「いや、間違いなく七王神が1人、戦女神ローズマリー本人じゃ」
「本物だと思うその根拠を聞いてもいい?」
「うーむ、天地人であるお主には信じられないかもしれないが、鈴鹿、異世界人であるお主にはこう言えば通じるじゃろう。
お主の事じゃ、薄々気が付いておるじゃろう。七王神はAngel Inプレイヤーじゃ」
・・・っ! やっぱりそうなのか!
って、待てよ。ルーベット達がその事を知っていると言う事は・・・
「そしてわしらもAngel Inプレイヤーじゃ。わしらはかつて七王神と共に戦った事があるのじゃ」
「流石に7人全員とはいかないけど、何人かとは共に戦った事があるわ」
マジか!
確かに共に戦ったのなら本物と見間違うはずはないだろう。
「ええっと・・・よくわかんないんだけど?
ルーベット達が七王神と共に戦ったって・・・七王神は100年前の伝説だし、ルーベット達は最低でも3年前に女神アリスから召喚された異世界人でしょ?」
「Angel Inプレイヤーって、23年前のデスゲームの事でしょ? それと何の関係が・・・?」
トリニティは100年前と3年前のギャップに違和感を感じ、唯姫は23年前のデスゲームが関わっていることはまだ知らないから唯姫にとっては疑問だらけだ。
「あー、後で2人には詳しく説明してやるよ。少なくともその七王神・戦女神は間違いなく本物だって事だ」
そろそろトリニティにはAIWOnを話した方がいいのかもしれないな。トリニティに取ってそれが耐え難い現実だとしても。
唯姫にもこのAngel In OnlineからAlive In World Onlineへの一連の事件の関連性を知る権利がある。何せ今回の事件の一番の被害者の1人だと言えるからだ。
「以上の2点の理由から対神部隊の設立なのかご理解いただいたと思います。
後ほどローズマリーと顔合わせして対八天創造神の検討をいただく予定です」
うーん、確かに戦力としては申し分ないけど、よくよく考えれば23年前って事は中身がかなりの・・・
ぞわわっ!
そんな事を考えていたら背中に寒気が襲ってきた。それも特大の。
心なしか狼御前の見る目も絶対零度の目つきに変わったように感じる。
いかん、これ以上この話題はやめておこう。
気を取り直して狼御前が対神部隊の設立の一番の理由を述べた。
「そしてこれが何よりも最も重要な理由になります。
幾つかの七曜都市には八天創造神のみが使える天と地を支える世界への直通の魔法陣があるそうです。
これを鈴鹿達に押さえてもらいたいと思ってます」
「な・・・んだとっ!!?」
「え? それってマジ?」
思いがけない情報に俺とトリニティは思わず驚嘆の声を上げる。
それが本当だとしたら緊急避難口に固執する必要はなくなるじゃないか!
「え? それは初耳」
「マスター、それは俺も初耳だ」
どうやら唯姫は兎も角、ユリアもレイダもこの情報は知らなかったみたいだ。
一番八天創造神に接していたと思われるラヴィを見ると。
「いえ、これは私も知らなかったわ」
との事。
「この情報はつい先日、ローズマリーと共に加入した者がもたらした情報じゃ。
八天創造神が使える直通の魔法陣らしいが、解析してわしらにも使えるようにすれば天と地を支える世界への帰還や離魂睡眠の目途が付くはずじゃ」
「もし可能であれば、八天創造神の生け捕りをし協力を要請すれば直通魔方陣の使用も可能になります」
おお、こりゃあ俄然やる気が出てきた。
だが生け捕りって言うのはちょっと気に入らない。何で生かしておかなきゃならないんだよ。奴らは死んで当然だろ?
「生け捕りは可能であれば、じゃ。何も無理をしてとらえる必要はない。それはお主の望むところでは無かろう?」
そう言ってルーベットは俺を見据える。
・・・どうやらレイダから俺の復讐心を聞いているみたいだな。
つまり俺にとって対神部隊の設立加入を断る理由は無いだろ?と言う事なのだろう。
確かに断る理由は無いな。上手くすれば最速で帰還の目途が立つし、Arcadia社の幹部共には目に物を見せてやれる。
その後も簡単な打ち合わせをして、俺達は早速八天創造神攻略の為に火曜都市に向かう事になった。
因みに、攻略した土曜都市にその直通魔方陣が設置されてないかと言えば、どうやら土曜創造神は現実に何の未練も無かったのか、直通魔方陣は設置されてなかったみたいだ。
そして攻略するのならここ木曜都市が最初ではないかと思うのだが、今の俺には無理だと言う事らしい。
木曜創造神に敵う敵わない以前の問題だとか。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「それではこれからよろしくお願いいたしますわ」
「ああ、こちらこそよろしく頼む。噂の七王神が仲間だと心強いからな」
「あまりその肩書をおっしゃらないで欲しいですわね。なんだか気恥ずかしいものがありますわ」
まぁ、そりゃあそうだろうなぁ。自分たちの行ったことが伝説となり語り継がれる。中二病を擽られるかもしれないが、当の本人にとっては過去の黒歴史みたいなものだしな。
火曜創造神を攻略するにあたって仲間に加わったのが、ルーベット達が言っていた七王神・戦女神ローズマリーだ。
金髪縦ロールのどこぞのご令嬢を髣髴させる容姿をしている。実際にはお嬢様でもなんでもなく普通の一般家庭のお嬢さんだとか。
だが彼女の装備を見れば、全身鎧の剣と大盾と言ったただ身に着けているだけではなく、その身のこなし方から使いこなしている強者の気配を漂わせていた。
「大体の事情はルーベットさんや他の方からお聞きしましたが、まさかAI-Onが終わってなかったのは衝撃でしたわね」
ローズマリーにとっては23年前の終わった事だったはずだ。
それが実は続いており、こうして強制的に参加させられてしまったのだ。
彼女の弁によれば、これまでVRゲームとは関わらずに現実世界で生活していたのに突然足下に魔法陣が現れ、気が付けばAIWOnにログインしていたらしい。
この場合ログインと言うのは当てはまらないかもしれないが、ローズマリーの意識はこの神秘界にあったと言う。
「ローズマリーがVRにダイブしていないにも拘わらずAIWOnにインしているのが不思議なんだが・・・」
「わたくしがここに来る前に声が聞こえましたわ。“見つけた”とか言っておりましたわ。
その事から察するに、わたくしを呼んだ者が居る、と言う事なのでしょうね」
「VRギアを介さずにVR世界に呼び出せるって・・・どんな技術だよ、それ。くそ、ルーベット達の言う通り、奴ら未知の技術を持っている可能性が高いな」
「八天創造神が異世界人でArcadia社の幹部だと言うのも驚きだけど、何でわざわざローズマリーさんを呼び出したのか気になるわね。
やっぱり七王神と言うのが何か関係しているのかな?」
唯姫の言う通り、七王神の力が関係しているのなら他の6人も神秘界に呼び出されている可能性があるな。
もしそうだとしたら上手く残りの七王神を探し出し仲間にすればかなりの戦力になるだろう。
まぁ奴らが必要になって呼び出したからもろ刃の剣になる可能性があるが。
唯姫とトリニティにはこの神秘界や天と地を支える世界を構成するAlive In World Onlineの事や、それに関わる過去のAngel In Onlineの事を話してある。
唯姫は過去の事件・Angel In事件が絡んでいる事を驚きながらも自分の置かれている現状から納得していた。
ただ逆に、トリニティの方は自分の住んでいた世界が文字通り創られた幻想だと言う事に少なからずショックを受けていた。
そして自分も一泡の幻だと言う事にも
その所為かこの準備中の間、トリニティは口数が少なかった。
「あら? もし彼女らが呼び出されているのなら久しぶりに会ってみたいわね」
そう言って懐かしさに思いを馳せているのはラヴィだ。
驚いたことにどうもラヴィは七王神の何人かとは面識があるらしい。
「わたくし、『恋愛の女王』の貴女がここに居ることも驚きですわ。今は神秘界の騎士・The Loversでしたっけ? 23年――いえ、100年経っても貴女はわたくし達の前に立ち塞がるのですのね」
「いやだなぁ。私は恋する者達の味方よ? 今も昔も。
それに私たちが過去貴女達の前に立ち塞がったのは創造神の命令だったからよ。当時は逆らえるようには出来ていなかったから」
ローズマリーによれば、AIWOnでは100年前――つまりAngel In Onlineの事を指すが、そのAI-Onではラヴィはエンジェルクエストの26の王の1人、『恋愛の女王・Lovers』だったと言う。
過去にデスゲームの一役を担って、今もまた捕らわれのゲームの一役を担っているとなればそりゃあ嫌な顔をされるだろうよ。
「うむ、皆の者、準備は整っただろうか? もしよければ火曜都市に出発しようと思うが」
火曜都市に向かう準備を終え待機していた俺達に、竜人のリュナウディアが声を掛けてきた。
今回の火曜創造神攻略に対神部隊より選出されたメンバーは俺、唯姫、トリニティ、ローズマリー、そして攻略部隊から出向されてきたリュナウディアだ。
因みにラヴィは唯姫の治療要員で戦闘メンバーではない。
リュナウディアは俺達が神秘界に不慣れと言うこともあり、このPTのリーダーとしての加入だ。
勿論攻略部隊からの出向と言う事で実力もそれなりに保証されていた。
「よし、それでは火曜創造神攻略の為火曜都市に向かう。道中油断するなよ」
リュナウディアの号令の元、俺達は走竜に乗って火曜都市ドンフレイムへと向かう。
次回更新は10/25になります。




