表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Alive In World Online  作者: 一狼
第9章 Unknown
45/83

44.XXXの使徒と超女性とレズビアン

大神鈴鹿、『力の使徒』と腕相撲をする。

大神鈴鹿、『知恵と直感と想像の使徒』に協力する。

大神鈴鹿、第四衛星都市ハレミアで違法奴隷摘発に動く。

大神鈴鹿、魔徒野盗団の頭と対決する。


                       ・・・now loading


「はぁ~、久々の王都ね」


 トリニティは王都の町並みを見て伸びをしながらこれまでの空の旅の疲れをほぐしていた。


「そう言えばトリニティが俺達を騙して小銭を稼ごうとしていた時以来だな」


「うっ、それは言いっこなしよ。もうあの時とは違うんだから」


「そうね。今はトリニティも立派な私たちの仲間ね」


 トリニティも当時の時を思い出していたのか少し赤面しながら言い訳をする。

 そんなトリニティをからかっていたが、アイさんがさり気なくフォローをしていた。


 第四衛星都市ハレミアで違法獣人奴隷の事件を解決して『力の使徒』と『知恵と直感と想像の使徒』のクエストをクリアした俺達はスノウに乗って約1か月半ぶりに王都エレミアへ戻ってきた。


 王都エレミアでは2人の26の使徒のクエストを攻略しなければならないが、取り敢えずは泊まる場所を確保するために知り合い――デュオの居るクラン『月下』を訪ねることにする予定だ。


 王都エレミアに居る使徒は2人。

 『模倣の使徒・Copy』と『XXXの使徒・XXX』だ。


 『模倣の使徒』はどうやら王族関係らしく、一筋縄じゃいかないらしい。

 その辺りの繋ぎは王宮の伝手があるデュオに頼むことになる。


 そしてもう1人の使徒、『XXXの使徒』なんだが・・・トリニティの仲間の盗賊(シーフ)曰く関わらない方が身のためだと言う。

 名前からしてXXXなんて訳が分からずどんな使徒なのか不明なのだが、俺としてはだからと言って関わらないわけにもいかないのだ。


「さて、と。それじゃあお姉ちゃんのところに行きましょうか」


 俺達はトリニティの案内でクラン『月下』のあるクランホームへと向かった。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「えっと、何これ・・・」


 俺達の目の前には建物があったと思われる瓦礫の山があった。

 トリニティはそれを見て呆然としていた。


「トリニティ、ここで合っているのか?」


「う、うん。お姉ちゃんのクランホームには来たことが無いけどここで間違いないはず・・・」


 ああ、そう言えばトリニティは冒険者になったことや盗賊(シーフ)になった事をデュオに隠していたからなるべく会わない様にしていたって話しだったな。


 『災厄の使徒』の騒動の時にデュオとの事は解決したらしいけど、それまで『月下』のクランホームには来たことが無いって訳か。

 あれ? でも『災厄の使徒』の時にデュオと合流したからクランホームは来たことがあるんじゃ?


「『災厄の使徒』の時、俺達と別れた後デュオと会ったんだろ? その時『月下』のクランホームに来なかったのか?」


「あ、あの時は急ぎだったからクランホームまでは来なかったのよ。それ以前にお姉ちゃんから色々装備とか貰ったりして寄る暇がなかったの」


「じゃあ、ここが『月下』のクランホームだとは限らないわけか」


 まぁ、こうしていつまでも瓦礫を眺めている訳にはいかないからな。

 取り敢えずは今『月下』のメンバーが何処に居るのか探さないと。


「トリニティは盗賊ギルドに行って『月下』の事や王都の状況を把握した方がいいだろう」


「う、うん。直ぐに行って情報を集めて来るね」


 俺達は『月下』にくれば情報が手に入るだろうと高を括っていたから盗賊ギルドはスルーしていた。


「あら? どうやらその必要はないみたいね。こちらに向かってきているのは『月下』のメンバーじゃない?」


 トリニティが早速盗賊ギルドへ向かおうとしたところ、『月下』のメンバーと思わしき人物が来たことをアイさんが見つけた。

 こちらへ向かってくる人物は剣を腰に差してラフな格好をしている男だった。

 よく見れば俺達の見知った顔だ。


「あれ? トリニティに、鈴鹿とアイさん? お前らいつ王都に戻って来たんだよ」


「ついさっきだよ。ウィル。と言うかお前、獣人王国で何の説明も無しに居なくなるんじゃねぇよ。てっきり後で説明があると思っていたら何の音沙汰もない上、居場所を訪ねればエレガント王国に戻っていったって言うし。

 まぁ大体何があったかは想像付いているけど」


「あー、悪い悪い。あん時は色々あったんだよ。事件が大事過ぎて手が回らなくて。

 で、事件が解決したら依頼人の都合で戻る羽目になって会いに行く時間も無かったんだよ」


 ウィルはその時のことを思い出したのか、少々バツが悪そうな顔をして謝ってきた。


 獣人王国に居る時に思いがけずに出会ったウィルが夜中にずぶ濡れで大怪我をしていたので俺はユニコハルコンで治してあげた事があるのだが、ウィルはその後何の説明も無しにエレガント王国へ戻っていったのだ。


 その後で『逃走の使徒』ミントから前日奴隷市を襲ったテログループの大捕り物があったと聞いたのでウィルはそれに関わっていたのだろうと予想は付いたのだが、流石に説明なしで居なくなるのは無いんじゃないのか?


「多分お姉ちゃんと一緒にブライト商会の依頼を受けて獣人王国に来たと思うけど、居なくなるのが早かったわよね?

 もしかして天獣祭中に起きたテロ事件の所為かな?」


 どうやらテロ事件に巻き込まれたのは間違いないようで、トリニティの質問にウィルが答える。


「まぁ大体そんなところだ。詳しい事は後で幾らでも話してやるよ。

 それよりお前らこんなところで何してんだ? クランホームは見ての通り今は瓦礫の山だぜ」


「いや、クランホームが瓦礫の山になっているのも今初めて知ったばかりなんだがな」


「あーそうか。お前ら今王都に戻って来たばかりなんだっけ。

 まぁ、これも色々あってな。ちょいとばかり事件に巻き込まれてこうなっちまったんだよ」


「お前ら事件に巻き込まれ過ぎじゃないのか!?」


「クランホームが半壊する事件ってどんな事件よ!?」


 俺が言うのもなんだが、ウィルたちはちょいちょいトラブルに巻き込まれ、巻き起こしたりしているような気がするのは気のせいだろうか?


「それも追って話すよ。まぁ取り敢えず今は臨時でクランホームを借りているからそこでお互いの近況状況をはなそうぜ」


「了解。こっちは『月下』を当てにしてきたからな。ここで拒否られたら困るよ」


「ねぇ、あたし達の大概尋常じゃない旅をしているけど、もしかしてお姉ちゃんも尋常じゃないトラブルメーカーだったりしないかな?」


 トリニティの呟きにウィルは暫く考えて答える。


「・・・・・・・・・否定できないな」


 おい、そこは否定するところだろ。何かこっちまでトラブルに巻き込まれないか心配になるじゃないか。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「トリニティ! いつ王都に戻ってきたの?」


「お姉ちゃん、ただいま。王都に戻ってきたのはついさっきよ」


 臨時の『月下』のクランホームでトリニティとデュオは再開の抱擁を交わす。

 俺とアイさんも久々に顔見知りの『月下』のメンバーに再開の挨拶をする。


 どうやら美刃さん他数名の異世界人(プレイヤー)離魂睡眠(ログアウト)中のようだ。

 まぁ、現実世界(リアル)は平日の真っただ中だからな。普通であれば一部のニートや主婦、もしくは仕事の休みが一般と違う人たちでなければこんな平日に帰魂覚醒(ログイン)できないし。


「何か色々報告もあるけど、お姉ちゃんの方も色々ありそうだね」


「ええ、まぁね。色々あったわよ。色々とね」


 なんか何時もより元気が無いと言うか、憂いていると言うか、大人びていると言うか。

 デュオの雰囲気がちょっと違うように感じた。

 尤もデュオとは『災厄の使徒』の時の面識があるだけでそれほど知ってるわけじゃないから気のせいかもしれないが。


 取りあえず俺達とデュオ達とで『災厄の使徒』以降のお互いの近況状況を交換し合う。


 そこで出てきたのは何とまぁ、俺達に劣らず波乱に満ちた1ヶ月だった。


 ブラント商会の護衛依頼を受ければ同行した同じ依頼を受けた冒険者が実は獣人王国の奴隷市を襲ったテログループの主犯だったり、王都の南の森・ザウスの森で保護した狐人(フェネックス)の幼女を保護したと思えば実は伝説の妖狐・白面金毛九尾の狐との関わりがあったり、その九尾事件によってクランホームが壊されたり王宮の派閥争いに巻き込まれたり、プレミアム共和国の第二都市シクレットからの隠密忍士による第三王子誘拐やブルブレイヴ神殿の神器争奪戦に巻き込まれたりと飛んでも事件ばかりだ。


 おまけに、『災厄の使徒』以前にもちょくちょく別の事件に巻き込まれているらしい。

 ここまで来ると笑えるレベルのトラブルばかりだな。

 当の本人にとっては笑ってられない事ばかりだが。


「はぁー、お姉ちゃんも色々あったんだね」


「まぁ、ね。本当、最近になって急に事件が起きて、図らずとも関わることになることが多いのよ。どうなっているのかしら、全く。

 あ、そうそう、トリニティ達だから話したけど、クオ――九尾事件の真相や王宮での事件の事は口外しないでね」


「分かっているよ。俺達の目的はエンジェルクエストの攻略だから唯姫――ディープブルーが関わっていなければ首を突っ込む真似はしないさ。

 俺にとってのディープブルーがデュオにとってのクオって娘なんだろう」


「お姉ちゃんが母親、ねぇ・・・なんか信じられない」


 最初はクオの母親になったと聞いて何時の間に一児の母になったのだと驚いたが、そのわずかな期間にも拘わらずデュオはクオの母親として絆を深めていったらしい。

 そんなクオとの繋がりを口外して悪い方向へと持っていくほど俺達は愚かではない。


「それはそうと、あたし達もだけどトリニティ達も色々あったわね。

 『旋律の使徒』との剣姫流問題だったり、『勇敢な使徒』と一緒に獣人王国の『牛魔王』と一戦やらかしたり、「とうそう」の四天王のクエストを連続攻略したり、第四衛星都市ハレミアで『力の使徒』と『知恵と直感と想像の使徒』と一緒に違法獣人奴隷の取り締まりをしたり、その騒ぎに紛れてのガルバッハ魔徒野盗団と一戦交えたり。

 それもほぼ一ヶ月でこれだけもあるってのが凄いわね」


「ちょっと待って、お姉ちゃん。あたしが主体じゃなく、鈴鹿が主体で騒動を大きくしているんだから。そこのところ間違えないで」


 あー、それは・・・否定できないな。確かに『旋律の使徒』のハーティーとの剣姫流騒動や、『牛魔王』のアーノルド国王と羊王国のミューレリア姫との関連は俺が大きく関わっているしな。


「へぇー、よく『刀装の使徒』の自在剣(エアリアルブレイド)を攻略できたな。

 俺達も複数で当たって何とか勝てたようなものだぜ」


「あー、ブルーちゃんの要請で協力攻略をした『刀装の使徒』ね。確かにあれは結構厄介だったわね」


 ウィルがその時の『逃走の使徒』との戦いを思い出していると、デュオも唯姫との共闘を思い出したようだ。

 そう言えば唯姫がAIWOn(アイヲン)に捉われる前に美刃さん達とKatanaを攻略したって言ってたっけな。


「あ、そっか、そう言う事ね。鈴鹿達が『刀装の使徒』を倒したからハルトさんが新たに『刀装の使徒』に任命されたのね」


「え!? マジで!?」


 デュオの爆弾発言に思わず俺は聞き返す。

 詳しく内容を聞けば九尾事件の最中に『刀装の使徒』に任命され窮地を脱したのだとか。


「そうかそうか。俺がこんな面倒くさい使徒に選ばれたのも全部鈴鹿達の所為か」


 冷やりとする殺気を放つ方を見れば、原因が分かったハルトが自在刀(エアリアルブレイド)の力を使い刀を浮かせ俺を見て微笑んでいた。


「え、それってお俺の所為になるのか・・・?」


「はっはっはっ・・・問答無用だぁ!!」


 怖いから笑顔で襲ってくるのは止めて!




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 俺達は予定通り王都に在住の使徒を攻略する為、その内の1つ『模倣の使徒』への取り次ぎをデュオへ頼む。


 『模倣の使徒』の正体はドッペルゲンガーと言うモンスターで、他人に変身する能力を有している。

 このドッペルゲンガーの凄いところは姿形は勿論、仕草や記憶までもコピーするので見分けるのに一筋縄じゃいかなかったりする。


 代々エレガント王国の王族の影武者として仕え天地人(ノピス)との交流もあり、その特殊能力も相まって女神アリスより『模倣の使徒』に選ばれた変種モンスターでもある。


 『模倣の使徒』自体のエンジェルクエストは『模倣の使徒』との戦闘なのでそれほど苦労するわけでも無いが、『模倣の使徒』はエレガント王国に所属している為、クエストを攻略するとなると王国からの許可が必要になってくるのだ。

 大抵は王国に縁のある人物からの紹介や、実績があり名を上げた人物とかでなければ『模倣の使徒』には挑めないことになっている。


 そこで王族との縁があるデュオの登場と言う訳だ。

 以前話を聞いたところによるとエレガント王国の第三王子との交流があるのだとか。

 その後も交流があり、さっきの近況状況の報告にもあったように第三王子の護衛なんかもしてたりするからこれほど打って付けの紹介者はいないだろう。


「と言う訳で、『模倣の使徒』とのクエストへの取りつけは頼んだぜ」


「はぁ、あんまりカイン殿下には借りは作りたくはないんだけどねぇ」


「お姉ちゃん、話を聞けば寧ろカイン殿下がお姉ちゃんに借りを作っているように聞こえるんだけど?」


「ばか、何を言っているのよ。王族と一般人の借りを一緒にしないでよ」


 現代日本人じゃ分かり辛いが、中世の王族の権力はハンパじゃないみたいだからなぁ。

 尤もここはAIWOn(アイヲン)でゲームの中だからそこまで忠実に再現しているか怪しいものだが。


 そんな訳で取り敢えずは『模倣の使徒』はデュオに任せ、俺達はもう1人の使徒である『XXXの使徒』の攻略をすることにする。


 トリニティが事前に仕入れた情報と、クラン『月下』の盗賊(シーフ)のシフィルとティシリアの情報により居場所は判明している。


 クエストの内容も調べてはいるのだが、トリニティの話だと盗賊ギルドの構成員の殆んどが『XXXの使徒』には関わらない方がいいと言う回答ばかりだ。シフィルやティシリアですらも言葉を濁して出来るだけ関わらない方がいいと言う始末だ。


 クエストの内容自体は『XXXの使徒』に会って受ければ直ぐに分かると。

 一応、対策はあるのらしいが、時間が無い事(俺達の都合で早急にクエスト攻略をする為)や対策を用意する為の相手の都合が付かないとかでぶっつけ本番で挑むことになる。


 因みにスノウは『月下』の仮クランホームでお留守番だ。

 騎獣縮小の首輪で小さくなったスノウは『月下』のクランメンバーに可愛がられている。

 どうやら居なくなってしまったクオの代わりになってしまったらしい。


 王都エレミアの北区商業区の一角、繁華街の西区寄りのエリアを俺達は歩いていた。


 トリニティは赤面しながら出来るだけ直視しないよう俯き加減で歩いており、俺も流石に凝視しないようには努めてはいるが中々目を逸らすのにかなりの精神力を使っていた。

 そんな中アイさんだけは平然といつもの自然体で堂々と歩いている。別の意味で尊敬しそうだ。


 今、俺達が歩いているのは扇情的な衣装に身を包み通りの男達を誘う娼婦や性的サービスの看板が立ち並ぶ建物が並んでいる風俗街だったりする。


「なぁ、流石にこんなところにその『XXXの使徒』が居るのか?」


「ま、間違いないわよ。ここの並びだって聞いたもの!」


「・・・まさかとは思うが、それ(・・)関係のクエストじゃないだろうな」


それ(・・)関係ってどれ関係よ!?」


「そ、そりゃあ・・・そう言う(・・・・)テクニックが求められる、とか?」


「す、鈴鹿の変態! スケベ! ドエロ!!」


「ちょっ! まだそうと決まった訳じゃないだろう!? 第一こんなところに連れて来られたらそう考えてしまうだろうが!

 そう言うトリニティこそそう考えているんだろう!」


「ち、違うわよ! あたしはそんなこと考えていないわよ!」


 こんな風俗街で人目も憚らず俺達はお互いを罵りあう。

 まぁ、文句を言いながらも目的地へは進んではいるが。


「あら、2人ともまだまだ子供ねぇ。こんな町並みくらいで騒いじゃって。まだ序の口にしか過ぎないんだけど? 本番はもっと凄いわよ」


「「本番って何っ!?」」


 アイさんの爆弾発言に俺は驚愕の目で見る。


 もしかして色々経験を積んでいるのだろうか・・・そう言えばついこの間までアメリカ在住って言ってたっけ。

 や・ヤバい・・・アイさんを見る目が変わってきそうだ。


「変態・・・」


「い、いや、違うぞ」


 トリニティが俺を見る目がさっきとは違い胡乱気な瞳をしていた。

 何故だかわからないが俺はトリニティに言い訳をしてしまう。


 そんなこんなで何とか目的地の『XXXの使徒』の居ると思われる建物の前に着く。


「た、多分ここだと思う・・・」


 トリニティの前に立つ建物は周囲の建物とはまた違った普通の一般住宅な感じな建物だ。


 周囲が風俗店だけに異様さがひときわ目立つな。


「よ、よし、行くぞ。もしそれ(・・)関係のクエストだったら時間は掛かってもしゃーない。一度出直してシフィル達のいう対策で対処しよう」


 流石にトリニティもそんな気は更々ないので俺の言葉に神妙に頷く。


「ごめんくださーい」


 家の扉を開けると中も普通の家と同じ構造になっており、玄関から伸びる廊下にそれぞれの部屋へ繋がる扉が見える。


「はぁーい、どちら様でしょうかぁ?」


 その扉の1つから1人の女性が現れる。

 多分その女性が『XXXの使徒』なのだろう。


 見た目は20歳代の若い女性で、見様によっては10代後半に見える容姿だ。

 流れる様なストレートのブロンドに、少々釣り目ではあるが美人と呼べる顔に出るところは出て締まるところは締まっている、所謂ボンキュボンの体形をしていた。


 そして何よりも目を見張るのが、外の娼婦と同じような扇情的なドレスを纏っているところだった。

 大きく胸元の開きたわわに実った胸の谷間が見えており、スカートには太腿まで見える切れ長なスリットが入っている。しかも左右にだ。

 見ようによってはチャイナドレスに見えなくもない。


「あー、えーと、あんたが『XXXの使徒』でいいのか? 俺達はエンジェルクエストを攻略しに来た者だが」


「あぁ、エンジェルクエストの挑戦者さんねぇ。ここの所暫く挑戦者が居なかったから寂しかったのよぉ。

 めぇいっぱいもてなしてあげるから楽しんでいってねぇ」


 エンジェルクエストで楽しむって何なんだよ!?

 いきなり不安になる発言はしないで欲しいな!


 『XXXの使徒』の声も艶めかしく、いちいち欲情を搔き立てる様に気持ちが高ぶってしまう。


 家が普通だから期待していたが、中に住んでいる人は外の娼婦と同じじゃねぇか。

 これってマジでそれ(・・)系のクエストじゃねぇのか!?


「あたしはレビっていうのぉ。これからそう呼んでねぇ。

 そぉねぇ、取り敢えずは上がって頂戴ぃ。詳しい話は家の中でしましょうねぇ」


 『XXXの使徒』――レビはそう言って俺達を家の中へ誘う。


 いざとなったら逃げられるよな・・・?




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「でぇ、誰が相手になってくれるのかしらぁ?」


 レビのその問いに俺達は無言になる。


「・・・その前に聞きたいんだが、クエストって何をするんだ?」


「あらぁ? 知ってて来たんじゃなのぉ?」


 いや、誰も教えてくれないんだが?


「そぉねぇ、ぶっちゃけあたしはレズなのよぉ。レズビアン。でぇ、あたしを満足させてくれたら使徒の証を上げるわよぉ」


 ・・・・・・・・・マジか? マジでそれ(・・)系のクエストかよっ!?

 あ、いや待てよ。レビはレズビアンだと言ったな。じゃ相手は俺じゃなくてもいいのか。


「トリニティ、頑張れ」


 俺は爽やかな笑顔でトリニティの肩に手を置く。


「ふざけんなっ! てめぇ、人を売る気かよっ!?」


 思わず昔の盗賊(シーフ)口調で叫ぶトリニティ。

 うむ、俺も同じ立場だったら叫んでいたよ。

 流石に冗談とは言え、トリニティに相手をさせるのは酷だろう。

 そうなるとどうしたものか・・・


「最近は同類の人しか相手できなかったから詰まらなかったのよねぇ。今日は久々に楽しめそうだわぁ」


 同類って同じ趣味の人(レズビアン)の事だろう。

 ああ、シフィル達が言っていた対策って同類を宛がう事でクエストの攻略が出来るってことか。


「あ、いや待て、このクエストちょっと待った! ほら、あんたを満足させるのがこのクエストの趣旨だろう? 俺達より他に満足できる人を連れて来るよ」


「そ、そうそう! 寧ろ同類の方がお互いを分かっているからそっちの方がいいよ。だから同類を連れて来るからそっちでお願い!」


 トリニティも我が身に降りかかる危機を回避する為、必死になって説得をする。


「うーん、ダメよぉ。折角その気になっているんだからぁ、貴女たちの誰かに相手してもらうわよぉ」


 トリニティが駄目となると残りはアイさんしか居ないのだが・・・

 俺はチラリとアイさんを見れば、いつもと変わらず俺達を見守るように微笑んでいる。


「そう、だったら私が相手でもいいのかしら?」


「じぃぃぃぃぃぃ・・・ダメねぇ。貴女は何かヤバいってぇあたしの勘が訴えているわぁ」


 何を思ったのか、アイさんがレビの相手をすると言い出した。が、レビは警戒するようにアイさんを見つめ誘いを拒否した。


 どうすんだよ、これぇぇっ!?

 いや、ここは対策(相手)を用意する方向でOKだよな!? だよな!?


「だったらあんたが満足する同類を連れて来るよ! じゃあ、そう言う事で!」


 俺は片手を上げて何のためらいも無くこの場から去ろうとする。

 流石にこの流れはヤバい。

 俺の勘がこの場から逃げろと言っている。


「あらぁ、まだ1人いるじゃないのぉ。あたしの相手を出来る人が・・・」


 不意にレビが俺の肩を掴み、その唇で俺の口を塞ぐ。


 むぐっ!????


「ぷはぁ・・・これであたしの相手をしてもらおうかしらぁ」


「な、何を急に・・・・・・え・・・?」


 いきなりキスをされ思わずレビを振り払うも、何かが先ほどまでと違う。


「え゛? う・そ、鈴鹿・・・?」


「あら、まぁ・・・」


 トリニティとアイさんが驚愕の表情で俺を見ている。


 何だ、何が起きた?

 よく見れば、トリニティ、アイさん、レビの身長が高くなったような気がする。

 それだけではない。周囲の家具も高くなったような・・・


 いや、違う。俺の背が縮んだんだ。

 服がだぼついている。

 俺の体を調べれば胸には異物が、股間に違和感が。

 そう言えば、さっきの俺の声も高くなっていたような・・・


「って、おんなになっているぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!???」


「うふふ・・・貴女にあたしの相手をしてもらおうかしらぁ」


「おいぃぃぃ!! これはどういう事だよっ!?」


「あらぁ、あたしは『XXXの使徒』よぉ。あたしの能力はキスで相手を女にすることが出来るのよぉ。

 詳しい事は分からないけどぉ、何でもあたしはXの染色体が多いのでぇ、それを相手に与えることで女にすることが出来るって話しよぉ」


「何だよ、そのふざけた能力は・・・! 女になるなんて聞いてねぇぞ!

 ・・・なぁ、元に戻せるんだろうな。戻せるんだよな? まさかとは思うけど・・・」


「無理よぉ。言ったでしょうぉ。Xの染色体を与えることだってぇ。あたしにできるのは女にすることだけで、戻すなんて不可能だわぁ」


 ・・・・・・マジか。俺はこれからAIWOn(アイヲン)の世界では女の身体(アバター)で唯姫を助けに行かなければならないって事なのか・・・?


 俺は絶望の果てに床に手を付いて項垂れてしまう。

 そんな俺を見てトリニティはどうしたらいいかオロオロしていた。


 ああ、これが『XXXの使徒』には関わるなって事なのか。

 女であればレビのレズビアンの餌食になり、男でも無理やり女になって餌食になると。

 質が悪い事に一度女になったら二度と男には戻れないと言う悪夢付きだ。


「あー、流石にこれは目覚めが悪いわね。唯姫ちゃんにも申し訳ないし。あまり『力』を使いたくなかったんだけど、こればかりはねぇ」


 俺がリアルにorzをしている所へアイさんが前へと進み出る。

 そう言ってアイさんは俺の額に人差し指で突く。


 たったそれだけの事で気が付けは俺は男の身体(アバター)へと戻っていた。


「・・・え? 戻っている・・・?」


「あ、貴女、なにをしたのぉっ? 元に戻すなんてあたしにだって出来ないのにぃ!」


「さて、『XXXの使徒』のクエストは貴女を満足させればクリア出来るのよね?」


 アイさんはレビの言葉を無視して先ほど俺にしたのと同様に、レビの額に人差し指を突きつける。


「あ・・・ああああああ・・・・あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッッッ!!!!!」


 獣のような嬌声と共に股間はびしょびしょに濡れ床に水たまりを作り、とても人様に見られないあられもない姿を晒す。


「イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛ッッグゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッッッッ!!!!!!」


 気をやったレビは足下の水たまりの中へ崩れ落ち白目を剥いたまま暫くの間ビクンビクンと痙攣を繰り返していた。


「あら、少しやり過ぎたかしら」


「うわぁ・・・」


 アイさんが何をしたのかは知らないが、これはどう見ても度を超えた快楽地獄を味わったんだろう。

 同性であるトリニティも流石にレビの惨状に引いていた。


「流石にこのまま放っておくわけにもいかないわね。

 トリニティ、彼女を洗って着替えさせるから手伝ってもらえる?」


「え? あ、うん・・・」


「鈴鹿くんは床の後片付けをお願いね」


「あ、ああ」


 アイさんとトリニティは未だ気を失っているレビを抱え風呂場へと連れて行った。

 残された俺はびしょ濡れになった床の掃除をする。

 この水たまりが何であるかは出来るだけ考えないように。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「ああん、おねぇ様ぁ。もっとあたしのお相手をしてください」


 目が覚めるなりレビはアイさんをお姉様と呼び、更なる快楽を求めてきた。


「それはまた今度ね。それよりも、約束通り貴女を満足させて上げたのだからクエストはクリアよね?」


「それはぁ勿論よぉ。はぁい、Xの使徒の証は差し上げますわぁ」


 レビが手を翳すとそれぞれに首に下げた使徒の証が光り、Xの印に攻略したと言う明かりが灯る。


 ふぅ、何だかんだで『XXXの使徒』はクリアか。


「それじゃあ、一度『月下』に戻りましょう」


「そう、だな」


「なんか、今回は特にあたし何もしていないような気がする・・・」


 もう、これ以上ここに居る理由は無いしな。

 アイさんは纏わりつこうとしているレビをほっぽいて、俺達はレビの家を後にする。


「ああん、いけずぅ。おねぇ様ぁ、必ずまた来てくださいねぇっ!」


 聞こえない、聞こえない。俺は何も聞こえない。

 二度とこんなところに来るもんか。


「『XXXの使徒』は中々過激だったわね。流石にあれには私もビックリしたわ」


「あー、ですよねぇ。あれじゃあ盗賊ギルドの皆も関わらない方がいいって言う訳ですよ」


「そうね。下手にあの能力の事を話せば周囲に女に変えられましたって言っているようなものだからね」


「そっか。ここの所見かけない盗賊ギルドの野郎共はもしかしたら女に変えられた人も居るかもしれないって事なのね・・・」


 それを想像したトリニティは嫌なものを見たような表情をする。


「あら、鈴鹿君どうしたの? さっきから大人しいわね」


 そんな2人を黙って見ていた俺にアイさんは声を掛けてきた。


 考えることはアイさんの事だ。

 アイさんには色々言えない秘密があるのがこれまでの旅で分かっている。

 それはアイさんが自分から言ってくれるのを待っていたが、今回の件で俺はとうとう我慢できずにそれを口にした。


「なぁ、アイさん。アイさんは何者なんだ?」






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 AIWOn AQ攻略スレ163


105:名無しの冒険者:2058/6/30(日)01:06:30 ID:TrShaKnb69

 ちょっと聞いてくれ、女になってしまった・・・


106:名無しの冒険者:2058/6/30(日)01:15:42 ID:MyaA5neKo

 あー、ご愁傷様。それ、元に戻らないよ


107:名無しの冒険者:2058/6/30(日)01:24:02 ID:J9lnT4nHR

 XXXの使徒だね。あいつには関わらない方がいい


108:名無しの冒険者:2058/6/30(日)01:26:51 ID:TSD1sK111

 >>105 kwsk!!


109:名無しの冒険者:2058/6/30(日)01:35:15 ID:S3nb8D00I

 レズったんだね。可哀相に・・・。・゜・(*ノД`*)・゜・。


110:名無しの冒険者:2058/6/30(日)01:38:30 ID:TrShaKnb69

 え? マヂで? 戻らないの、これ?


111:名無しの冒険者:2058/6/30(日)01:42:33 ID:YariM3Sx69

 おねーさんが新しい世界を教えてあげるわよジュルリ


112:名無しの冒険者:2058/6/30(日)01:44:02 ID:J9lnT4nHR

 110は情報を集めて行かなかったのか?


113:名無しの冒険者:2058/6/30(日)01:51:29 ID:FuJ0s8a8a

 腐としては女体化よりは男性化の能力が良かった・・・

 耽美な世界を味わってみたい・・・


114:名無しの冒険者:2058/6/30(日)01:59:42 ID:MyaA5neKo

 今は対策として同類者を連れて行く事が確立しているけど


115:名無しの冒険者:2058/6/30(日)02:02:22 ID:I9raSaZaE3

 別名生贄ですぅー


116:名無しの冒険者:2058/6/30(日)02:10:51 ID:TSD1sK111

 女体化サイコー!

 早速『XXXの使徒』へ行ってくるわ


117:名無しの冒険者:2058/6/30(日)02:12:15 ID:S3nb8D00I

 逆に女だからって対象にならないかって言えばそうとも言えないし・・・

 女でも狙われます・・・!


118:名無しの冒険者:2058/6/30(日)02:15:30 ID:TrShaKnb69

 そんな対策情報より元に戻る方法PLZ!!!


119:名無しの冒険者:2058/6/30(日)02:16:02 ID:J9lnT4nHR

 そんなものは無い


120:名無しの冒険者:2058/6/30(日)02:17:42 ID:MyaA5neKo

 生㌔










XXX

・XXX指定。成人向けであることを示す文字列。

・トリプルX症候群。Xの染色体を3つ持ち超女性とも呼ばれる。

・手紙などにおいて接吻を表すXを3つ重ねたもの。

                       ウィキペディアより抜粋


やっちゃった感は否めないが、反省はしていない。


*********************

次回更新は4/23になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ