32.羊姫と牛魔王と勇者
――AL103年4月20日――
「本当に獣人だらけですね・・・」
「これでもまだ少ない方だよ? 羊王国は人族との交流に力を入れているからね。
獣人王国はもっと沢山の種類の獣人が居るよ」
「そう・・・ですか。これは気を付けなければいけませんね」
ハーティーは周囲の獣人を見て少し忌々しげに眺めていたが、トリニティの言葉を聞いて更に気持ちを改めようとしていた。
「つーか、本当に付いてきたな・・・どこまで本気なんだか」
「本気なんじゃない? 少なくとも主義を変えようと頑張っているみたいだし」
「そうかぁ? 何か意地になっている部分もあるように見えるけど」
俺とアイさんはそんなハーティーを眺めながら羊王国の町並みを見渡す。
周囲には今まで見ることが少なかった獣人が多く見られた。
特に多いのは羊の獣人・羊人だ。
王族からして純血な羊人が治めている王国なのだ。羊人が多いのも当然と言えよう。
そんな獣人の多い町中をハーティーは少し自分の主義を変えて俺達と一緒に歩いていていた。
ハーティーは昨日宣言した通り俺達と一緒に行動を共にすることにしたのだ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「俺達と一緒に行きたいって・・・どういうつもりだ?」
俺はハーティーの言葉に何か裏があるのではと感くぐる。
さっきまで下手をすれば命のやり取りまで発展していたのかもしれないのに、多少わだかまりが無くなったとは言え、急に一緒に行きたいとはそりゃあ何かあると思うに決まっている。
「僕は少し1人でいるのが長すぎたみたいです。そのせいか価値観が凝り固まっているところが今日この戦いで分かりましたよ。
色々と音楽を通じて見聞を広めてはいますが、最近の僕の行動はほぼお決まりのパターンですからね。
そこで鈴鹿達に一緒について行きたいと思ったのですよ。
君たちとならこれまでの価値観を吹き飛ばすような世界を見せてくれるのではと」
「あー、確かに少なくとも鈴鹿と一緒なら否が応でも価値観は変わるわね~」
「何だ、トリニティ。俺が常識外れだと言いたいのか?」
「常識外れと言うより無鉄砲? 猪突猛進? 無我夢中?」
「・・・いや、余計意味が分からん」
少なくともハーティーは俺達と行動を共にすることによって自分の中に新しい風を入れたいと言う事か。
それに今まで自分の信じてきた剣姫流にも疑問を感じ、剣姫流の真実を確かめると言う点では何故か裏(?)の事情に詳しいアイさんに付いてくると言うのはあながち間違ってはいない。
「俺としては師匠の事は一応謝ってくれたから別にかまわないけど・・・アイさんとトリニティはどう?」
「あたしは構わないけど」
「私もハーティーが付いて来てくれるのなら助かるわ。
私と鈴鹿くんは異世界人だからね。2人揃って離魂睡眠するとトリニティ1人になっちゃうから、他の天地人が居てくれると助かるわ」
「クルゥ!」
そこでスノウは自分も居ると言わんばかりに鳴き声を上げる。
「ああ、ごめん。スノウも一緒に居てくれて心強いわよ」
ふむ、確かにスノウも居るとは言え、トリニティ1人にしてしまう事もあるな。
そう言った点で言えばハーティーの加入はとても助かる。
「ま、付いてきたいなら付いて来てもいいぜ。
但し、俺達に付いてくると言う事は今後エンジェルクエストやら何やらでトラブルに巻き込まれても自己責任って事で」
「その辺は承知の上ですよ。寧ろそのトラブルを歓迎したいところですね」
そうそうトラブルが起きてたまるか!って言いたいところだが、これまでの旅で何事も無かった時があったかと聞かれれば否とは言えないからなぁ・・・
そんな訳で俺達は新たな仲間としてハーティーが加わった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
俺はハーティーとトリニティのやり取りを見ながら、隣にいるアイさんの様子を伺う。
アイさんには何か秘密が隠されている。
アイさんの規格外な強さは勿論の事、その何処から入手したのか俺やこの世界の住人であるトリニティすら知らない情報を何処ともなく手に入れてくるのだ。
アイさんの強さに関しては、現実での電脳警備会社としてのVR経験があるためだと思っていたが、それだけでは説明つかない所も多々見受けられる。
情報の入手に関しては最初は現実のネットから拾い集めて来たと思っていたが、ネットでは説明つかない情報――特に天と地を支える世界でしか入手できない情報を手に入れてくることすらある。
特に100年前の大災害時や旧セントラル王国の情報なんかどうやって入手しているんだと、アイさんの情報源が聞きたいくらいだ。
だが、昨日のアイさんの巫女神フェンリルの情報に対して俺は何か引っかかりを覚えたのだ。
確かAIWOn以外で聞いたことあるような・・・
昨日はそのまま直ぐに次の使徒、『勇敢な使徒・Valiant』を目指すところだったが、俺のAIWOn滞在時間が1週間近くなったために一度離魂睡眠することになったので、アイさん達3人はその日はそのままシグレットに滞在を延長することになった。
俺は一度現実に戻るにあたって、そのフェンリルに関して調べることにした。
そこで出てきたのが、フェンリルと言う名のプレイヤーが23年前の VRMMOに存在したと言う事だ。
そのVRMMOのタイトルはAngel In Online。
今はAngel In Onlineは存在しないため詳細までは調べることが出来なかった。
だが、AIWOn――Alive In World OnlineはAngel In Onlineと繋がりがある。
Angel In Onlineの運営会社の幹部がAlive In Word Onlineを経営し、今回の事件を引き起こしているのだ。
これは俺の勘でしかないが、Alive In World OnlineはAngel In Onlineの世界観を元にして作っているのでは?
Angel In Onlineのプレイヤー・フェンリルは世界を救った最強プレイヤーだと言う。
Alive In World Onlineの100年前の魔王を倒した冒険者の名前もフェンリルだと言う。
Alive In World OnlineとAngel In Onlineを結びつけるには当然と言えよう。
そしてそのことから導き出されるのは、アイさんは23年前のAngel Inプレイヤーではないかと言う事だ。
それならばAIWOnでの戦闘も知識も持っていても何ら不思議ではない。
「ん? なぁに? 私の顔に何か付いているの?」
「ああ、いやなんでも無いよ」
アイさんの横顔を見つめていると、こちらの視線に気が付いて声をかけてくる。
俺は何でもないといいながら、今はまだアイさんの秘密については心の内に仕舞っておく。
まだ俺の推論にしか過ぎないし、いつかはアイさんの口から聞きたいからだ。
アイさんにも23年前のAngel In事件について何か思うところもあるのだろうし。
今は頼りになるお姉さんの立場と言う事でいいだろう。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
今回の離魂睡眠は短めで俺は天と地を支える世界ではハーティーと戦った19日の昼に離魂睡眠をし、次の日の20日の朝には戻ってきた。
一応、俺が離魂睡眠している間にハーティーにもう一度よく考えろと言ってはいたが、帰魂覚醒した時に聞いた答えは変わらなかったので、ハーティーと共に俺達は『勇敢な使徒』の居る羊王国へと向かったのだ。
スノウに乗って約2時間ほどで羊王国王都ウルバリンに着き、ざっと王都内を見学した後でトリニティは『勇敢な使徒』の情報を調べに行く。
「トリニティ1人で大丈夫なのですか?」
「ああ、あいつはああ見えてもうちの情報担当の盗賊だし、そこそこ戦えるよ。それに1人の方が身動きが取りやすいからな」
「そうそう。それに最近は私が鍛えてあげてるからそこら辺のチンピラ如き相手にはならないわよ」
ハーティーがトリニティの心配をするが、俺とアイさんは何の問題も無いと平然としていた。
つーか、アイさん、俺が居ない間にどんなスパルタを強いたんだよ。何か内容を聞くのが怖いな。
思ったよりも短時間――1時間ほどでトリニティが戻ってきた。
どうやらあっさりと『勇敢な使徒』の居る場所を突き止めたらしい。
「うーん、正直半信半疑だけど、そこら辺の子供も知っているみたいなのよね」
「それだけ有名ってことか?」
「有名っちゃ有名みたいだけど・・・まぁ行ってみれば分かるわ」
何やら奥歯に物が詰まったような言い方をするトリニティに訝しげに思いながらも俺達はその『勇敢な使徒』の居ると言う酒場へと向かう。
・・・酒場?
酒場の中に入ると真昼間にも拘らず、数人の客が酒を飲んでいた。
狼人と虎人の2人が飲み比べのように互いに早いペースでジョッキを飲み干していた。
奥のテーブルには鼠人が陰気臭く麦酒を煽っている。
入り口の近くには羊人のカップルがイチャコラしている姿が嫌でも目に入ってくる。
「・・・え? まさかこの中に『勇敢な使徒』が居るのか?」
「そのまさかよ」
そう言いながらトリニティは奥のテーブルへと向かって行く。
奥には陰気な鼠人しか居ないのだが・・・
「おめぇさん、いい加減それくらいにして飲むのを止めたらどうだ?」
「うっせぇよ。俺は客だぞ。いいから酒を持って来いよ」
酒場の店主とおぼしき熊の獣人熊人(まさに熊親父)に止められるも、鼠人はそんな事には構わずに麦酒を飲み干してお代わりを要求する。
そこへトリニティが割って入る。
「お話よろしいかしら? 『勇敢な使徒』のマクレーン・ディラウスさん」
声を掛けられた『勇敢な使徒』――マクレーンは胡乱げな目をこちらへと向けてきた。
「あん? 何だおめえら。
・・・ああ、エンジェルクエストの挑戦者か。丁度いいんだか悪いんだか」
マジか。このドブネズミのように腐った目をしたのが『勇敢な使徒』か。
鼠人は背が小さく、身長は成人した人間の胸くらいまでしかない。
マクレーンは男であるためまんま二足歩行の鼠なのだが、その陰気な雰囲気からしてドブネズミを連想させる。
顔の表情も表情の読みにくい獣人にも拘らず、どんよりしているのがありありと分かる。
マクレーンは何やら観念したように空になったジョッキを置き、熊親父に飲み代を支払ってそのまま外へと出て行ってしまった。
って、おいおい、俺達のクエストはどうなったんだよ?
「おい、取り敢えず俺に付いてきな」
出口から出て行こうとしたマクレーンは呆然としていた俺達に付いてくるように促した。
俺達は慌てて追いかけ、黙って歩くマクレーンの後を付いて行く。
「どこへ行くんだ・・・?」
「さぁ・・・?」
「ちょっと思っていた『勇敢な使徒』と違いますね」
俺とトリニティとハーティーで小声で話すも、マクレーンは終始不機嫌な顔をして黙々と前を歩いて行く。
「あ、あれが羊王国のウルバリン城ね。ふーん、純白の城なんてなかなかお目に掛かれないわね」
トリニティが見る先には真っ白な城がそびえ立っていた。
その白はただ白いだけではなく、絹を思わせるように艶やかな色合いを醸し出している。
「俺達が向かっているのはその城だよ」
唐突にマクレーンがポツリと呟いた。
「ん? 城で『勇敢な使徒』のクエストを行うのか?」
マクレーンは不機嫌な顔をこちらへ向けてこれから行う事を説明してきた。
「俺はこれから王に会って勅命を承る。お前たちにはこれからその勅命の手伝いをしてもらう。
だから一緒に王に会いに行くんだよ」
「は? おいおい、いいのか? 通りすがりの冒険者に勅命の手伝いをしても」
「いいんだよ。『勇者』の手伝いとしてなら王も認めているからな」
「この国じゃ『勇敢な使徒』は『勇者』って呼ばれているらしいよ」
トリニティがさり気なく補足してくれるが、マクレーンが言う『勇者』ってのは何か自虐的な言い方なんだよな。
投げやりと言うか、侮蔑していると言うか・・・
「それで僕達も一緒に『勇者』への勅命を受けて仕事を手伝うと言う事で宜しいのでしょうか?」
「ああ、本来の『勇敢な使徒』のクエストはモンスターの討伐の手伝いなんだが、今回は勅命が優先だな。
こんな時に来たあんたらは運がいいんだか悪いんだか」
確かに。一体どんな勅命何だか。
マクレーンが来ることが分かっていたのか城に着くなり面倒な手続きが殆んど省略され、あっという間に俺達を含めたマクレーンは王との謁見することになった。
「面を上げよ」
「ハッ」
マクレーンが最前列に位置し、その後方に俺達4人が並んで頭を垂れていた。
王の許可を貰いマクレーンは顔を上げる。
俺達もそれに習い頭を上げ玉座に座っている王を見る。
玉座に座っている他のは羊王国国王・シファーレン=ウルバリン4世だ。
羊人であるため頭は羊そのものだが、頭から生えた角や髪の毛色などは普通の羊人とは違い、威厳に溢れたものだった。
因みに壁際には執事の格好をした羊人が居る。
流石羊王国だけあって執事も羊だ。
「マクレーンよ。獣人王国国王・アーノルド=アルニム=アーマレストに攫われた我が娘ミューレリアを連れ戻してくるのだ」
は? 攫われた? え? ちょ? これって立派な国際問題じゃないのか?
「ハッ、この命に代えましても必ずや」
マクレーンは王からの勅命を受け、頭を下げる。
俺達もそれに習い慌てて頭を下げた。
「『勇者』の従者よ。そなたらは『勇者』の力となり娘の救出の手助けをするのだ」
俺達はその言葉に従う様に更に深く頭を下げる。
『勇者』の従者って・・・ああ、そう言う建前で『勇敢な使徒』の手伝いをするってことか。
取り立て難しい事はせずに、たった2・3のやり取りだけで俺達は謁見の間から退出した。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
城を出るなりマクレーンはまた不機嫌な顔をし出した。
王からの勅命の時には今よりはマシな気を引き締めた顔をしていたのだが、城を出た途端これだ。
「あ~~~~~~・・・マジめんどい・・・マジだりぃ・・・
なぁ、おめぇらだけで獣人王国に行って姫を助けてきてくれないか? Vの使徒の証をやるからさ」
「ちょっとちょっとちょっと! 姫が攫われたのよ!? 何暢気な事言っているのよ!?」
「や、使徒の証をくれるのはありがたいが、これはマクレーンが行かなきゃダメなんじゃないのか?」
トリニティは投げやりなマクレーンを責めたてるが、マクレーンは一向に堪えた感じはしない。それどころかどうでもいいように右から左へと聞き流していた。
俺としては使徒の証を貰えるのなら構わないが、と言うか、これはマクレーンが受けた勅命だから俺らだけ行ってもしょうがないんだよな。
「32回」
「え?」
「32回。いや、今回のを入れれば33回か?」
余りにうるさく言うトリニティに向かってマクレーンはポツリと呟く。
「何が33回なんだ?」
「姫がアーノルドの色ボケ野郎に攫われた回数だよ」
「・・・・・・・・・・・・は?」
聞き返した俺は思わず何を言っているのか分からずに呆けてしまった。
俺だけではなく、責めたてていたトリニティも成り行きを見守っていたハーティーも何を言ってるんだこいつ?と言うような顔をしていた。
「つまり、この姫の奪還の勅命はもう33回も受けていると言う事なのね」
「そうだよ! いい加減にしろっての!! 城の警備は何をやっているんだよ!
何で何度も何度も何度も何度も警備を掻い潜られているんだよ!!
それで姫さんも進んで攫われて行きやがって!! 何回も助けるこっちに身にもなれよ!!」
冷静に分析したアイさんに指摘され、マクレーンは今までの鬱憤が爆発するかのように喚き立てた。
「えーと、つまり? どういう事?」
事態に付いていけなくなったトリニティは周囲に説明を求めた。
と言うか、こっちも説明が欲しいよ。
「あー、何となく察しました。これは獣人王国アーノルド国王と羊王国ミューレリア姫との悲劇の恋愛譚と言ったところですか」
ハーティーは何やら合点がいったと、大よその事を説明してくれる。
とどのつまり、ミューレリア姫に一目ぼれしたアーノルド国王が周りの意見や国際問題もなんのその、羊王国に単独で潜入し、見事ミューレリア姫を攫って行ったと。
その肝心のミューレリア姫も満更ではないようで、アーノルド国王にホの字なんだとか。
「あれ? でも羊王国の王族って確か純血の羊人しか婚姻を結べないんじゃなかったっけ?」
「ええ、ですから悲劇の恋愛譚なんですよ。
差し詰め悲劇のヒロイン・ミューレリア姫と言ったところですかね」
トリニティの言う通り、この羊王国の王族であるミューレリア姫は同じ羊人の貴族との婚姻が決まっているらしい。
にも拘らず、ミューレリア姫は悲劇のヒロインとしてアーノルド国王に自ら攫われていくと。
おそらくだが、決まりきった婚姻よりも刺激を求めて自らを攫いに来るアーノルド国王に魅力を感じているのではないかと思う。
言ってみれば恋に恋しているのだろう。
アーノルド国王の方は良く分からないが、単身で乗り込んできて姫を攫って行くのだから余程のベタ惚れ状態なのだろうな。
マクレーンが言ったように色ボケ野郎と言われても仕方がないな。
国王自らってのも異常だし、隣国の姫を攫って行くのも異常すぎるし。
「アーノルドの野郎は色ボケしているが、戦歴の強者だからな」
「もしかして20年前の炎獣戦線ですか?」
「ああ、あの当時のアーノルドはメチャクチャだったらしいが、今でもその強さはそこら辺の牛人よりも桁が違うよ」
ハーティーは吟遊詩人よろしく英雄譚として各地の戦争時の活躍した人物を知っているらしい。
マクレーンとハーティーの話によれば、アーノルド国王は牛人の獣人であり、20年前の獣人王国と隣国の炎聖国との戦争で活躍しその名を馳せたらしい。
国王自ら最前線に立ち、迫りくる炎聖国兵を千切っては投げ、単身で戦況を何度もひっくり返したらしい。
その魔王の如く暴れる猛牛っぷりから付いた二つ名が『牛魔王』だとか。
「つーか、姫を何度も奪還していると言う事は、マクレーンはその『牛魔王』に30回も挑んでいるって事になるよな」
「・・・いったろ、色ボケ野郎だって。
姫に骨抜きにされたアーノルドの野郎には『牛魔王』としての強さはねぇよ。
強さはねぇんだが・・・何度叩きのめしても諦めると言う事をしらねぇし、姫も悲劇のヒロインぶって「何度離れてもお慕い申し上げてます」なんて言いやがるもんだからあの野郎、すぐその気になりやがるし・・・!」
ちょっとは落ち着いたと思ったマクレーンはその時の事を思い出したのか、再び怒りを爆発させていた。
まぁ、30回以上も同じことを繰り返せばそりゃあいい加減にしろって言いたくなるよな。
「ねぇ、そんなに嫌だったら勅命を受けなければいいじゃない」
「あー、確かに。と言うかこの場合、王と使徒って使徒の方が上なんじゃないのか?
なんせ女神アリスからの任命なんだからさ」
俺とトリニティが面倒事だって分かり切っているにも拘らず勅命を受けるのに疑問に思っていたが、そんな単純な事ではないみたいだった。
「確かに使徒と王と言えば使徒の方が上かもしれないが、俺は羊王国の市民でもあるからな。王の勅命には従うさ。
それに・・・俺が面倒になってあの姫さんを放っておけば、将来この国を治めるのはその姫さんになるんだぜ。
頭がお花畑な姫さんをそのまま王位に就けるより、今のうちに真っ当に戻しておきたいじゃないか」
あー、面倒だからって放りだせばこの国が荒れるか~
そりゃあ、確かに嫌々ながらも姫さんの矯正をしておいた方がいいよな。
「それにしても・・・仮にも王族をお花畑や色ボケ野郎って・・・不敬罪で捕まらないか?」
「少なくとも俺にはそれを言う権利があると思う」
「違いねぇ」
色々不満が募っているマクレーンだが、なんだかんだ言いながら30回も助けに言っているんだからそれなりに国を憂いての行動なのだろう。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「はー、普通であれば獣人王国には2・3日は掛かるはずなんだが・・・僅か半日程度で着いちゃうとはなぁ・・・」
俺達はスノウに乗って獣人王国の首都・獣王都市ビーストロアまでひとっ飛びで辿り着いた。
獣人王国に着く頃には日も暮れ始めていたが、マクレーンは面倒事はさっさと片付けるに限ると今から城に突入するとの事だった。
「あ、城の中に飛竜が着陸する広場があるからそこに騎竜を下ろすといいぞ」
獣人王国には飛竜を騎竜とする飛翔竜騎軍が存在しており、その発着場が城の中にあると言う。
俺はスノウにその広場へと降り立つように指示を出す。
広場に降り立ってスノウを小さくしたところに兵舎から獣人王国の兵たちがわらわらと集まってきた。
獣人の種族はバラバラで、狼人、虎人、熊人、竜人等々、流石は獣人王国らしく肉食系な獣人が多かった。
「おい! お前ら、騎竜の着陸の許可は出ていない! 何処の部隊だ! 所属と階級を名乗れ!」
その中で一番偉いと思われる狐人の兵が広場に降り立った俺達に詰問してくる。
「ああ? 所属は羊王国、階級は『勇者』だよ。お宅の王に連れ去られたうちの姫さんを連れ戻しに来たんだ。何か文句あるのか?」
「・・・! ハッ、これは失礼しました! 陛下は只今執務室に居られるはずです。ご案内いたします!」
「案内はいらねぇよ。こっちはとっとと片づけて帰りてぇんだから。細々とした手続きとかやってられるか」
急に態度を変えた狐人の兵に何の興味も示さずにマクレーンは勝手に城へ向かって歩いて行く。
集まってきた兵は発着場に降り立ったのが『勇者』だと分かると直ぐに解散し持ち場へと戻っていくのを尻目に、俺達はマクレーンに付いて行く。
「おい、マクレーン。勝手に城の中を動き回っていいのか?」
「いいんだよ。勝手知ったるジオビースト城ってな。俺が何回この城に来たと思っているんだよ。
兵士たちも王の暴走にはほとほと手を焼いているから協力的なんだよ」
あー、そういやそうだ。30回以上も来ていればそりゃあ分かるか。
つーか、城の兵士たちも自分たちの王の所業にホトホト困り果てていると。
王を嗜める存在は居ないのかよ!? ・・・居ないんだろうな。ただでさえ『牛魔王』実力を考えれば力づくで止められる人が居る訳ないし、恋は盲目と言って周りが見えなくなった王に諫言したところで聞く耳持たないだろうし。
マクレーンの後をついて行き、目的地の執務室の前に辿り着く。
執務室の前には2人の狐人の兵が居た。
1人は金毛でもう1人は銀毛の狐人だった。
「よう、ゴールド、シルバー。悪いが中に入らせてもらうぜ」
「だ、ダメだ! 今はダメだ!」
「そうだ。兄者の言う通り、今は来客中の為中に入ってはならん!」
「ああ? 来客だ? 悪いがそいつには後にしてもらえるか? こっちはそっちの身勝手な理由で攫われた姫を返してもらいに来たんだよ。
それともお前が勝手に姫を返してくれるのか? そっちの方が俺に面倒が無くていいんだが」
「そんなことしたら俺が陛下に殺されちまうよ!?」
「マクレーン殿には悪いがこればかりは押し通ることは出来ん。誰であろうと今は中に入れるなと仰せつかっている」
「かー、相変わらず頭が固いな。シルバー。そしておめぇは胆が小さいな。ゴールド」
「う、うるさい! いいから今はまだダメだ。もうちょっと大人しく待っていろよ!」
「そうだ、少しの間でいいから待っていてくれ」
マクレーンは非はそっちにあると言って強引に中に入ろうとし、ゴールドとシルバーの兄弟は厳命されているからとマクレーンの侵入を阻む。
マクレーンもワザとなのか、敢えて力づくでは中に入らないで狐人の兄弟との押し問答を繰り返していた。
そうこうしているうちに、用事が終わったのか中から人が出てきた。
そう、人――人族の老人だった。
身長180cmの大柄の体格で、背中まである髪や長く伸びた髭は真っ白だった。
顔も皺だらけで一目見てかなりの歳だと言う事が分かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
AIWOn ケモモフを愛でるスレ413
415:とらとらとら:2058/12/1 (日)21:34:12 ID:Tora10RaT
ケモモフ王国キタ━━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━━!!
416:とらとらとら:2058/12/1 (日)21:35:12 ID:Tora10RaT
流石はケモモフ王国! 右見ても左見てもケモモフケモモフヾ(*゜∀゜*)ノキャッキャッ♪
417:ケモモフ命:2058/12/1 (日)21:37:41 ID:km0Nmfm2L
ようこそケモモフ王国へ! 歓迎するニャ!
418:名無しの冒険者:2058/12/1 (日)21:40:29 ID:CU8082sake
や、普通に獣人王国だろ
419:名無しの冒険者:2058/12/1 (日)21:42:15 ID:GiNg2Nkon
彼らの間では既にケモモフ王国になってるんだな・・・
420:とらとらとら:2058/12/1 (日)21:45:12 ID:Tora10RaT
いや~いいねぇ~ケモ耳は
女性の美しさにアクセントされたケモ耳
ケモ耳は人類の至宝だよ
421:名無しの冒険者:2058/12/1 (日)21:48:02 ID:UcAn9cH3tha
ケモモフ '`ァ'`ァ (*´Д`*) '`ァ'`ァ '`ァ'`ァ (*´Д`*) '`ァ'`ァ
422:名無しの冒険者:2058/12/1 (日)21:48:56 ID:Pa9Ma3m3IL
はぁ? 何言っているんだ?
ケモモフと言ったらあのモフモフだろう
あの全身を覆うモフモフが堪らんのだろうが!
423:名無しの冒険者:2058/12/1 (日)21:54:44 ID:s1960nNkaze
そうですよ! あのモフモフフワフワがいいんじゃないですか!
野生逞しい顔付にモフモフのギャップ!
ああぁぁぁ、ずっと撫でまわしていたい・・・
424:名無しの冒険者:2058/12/1 (日)21:59:51 ID:B920Zfutya
いやいやいやいや
ケモ耳があってこそのケモモフだろう
ケモ耳を笑うものはケモ耳に泣くよ? そこんとこ分かってる?
425:名無しの冒険者:2058/12/1 (日)22:02:29 ID:CU8082sake
あー、始まった^^;
ケモ耳とモフモフの論争
426:名無しの冒険者:2058/12/1 (日)22:03:02 ID:UcAn9cH3tha
ケモモフ '`ァ'`ァ (*´Д`*) '`ァ'`ァ '`ァ'`ァ (*´Д`*) '`ァ'`ァ
427:とらとらとら:2058/12/1 (日)22:05:12 ID:Tora10RaT
全身毛むくじゃらがいいんだったら獣人じゃなくても普通のペットでもいいじゃん
ケモ耳だからこそ獣人が栄えるんじゃないか
428:名無しの冒険者:2058/12/1 (日)22:08:44 ID:s1960nNkaze
ケモ耳ケモ耳言ってる人たちって、要は女性獣人だからでしょ?
いやらしい目で見るためのケモ耳・・・まさにケダモノだわ!
429:名無しの冒険者:2058/12/1 (日)22:12:15 ID:GiNg2Nkon
これいっつも収集つかなくなるんだよね・・・
430:名無しの冒険者:2058/12/1 (日)22:13:29 ID:CU8082sake
ケモモフ命さんはどっち派でしたっけ?
431:名無しの冒険者:2058/12/1 (日)22:14:02 ID:UcAn9cH3tha
ケモモフ '`ァ'`ァ (*´Д`*) '`ァ'`ァ '`ァ'`ァ (*´Д`*) '`ァ'`ァ
432:ケモモフ命:2058/12/1 (日)22:18:41 ID:km0Nmfm2L
>>430 私はどっち派でもないニャ
どっちにも魅力があるから差は付けられないニャ!
433:名無しの冒険者:2058/12/1 (日)22:19:15 ID:GiNg2Nkon
ケモ耳VSモフモフは極論すれば女獣人VS男獣人だからなぁ~
434:名無しの冒険者:2058/12/1 (日)22:21:51 ID:B920Zfutya
男の毛を撫でまわしていたいって気持ち悪っ!!
435:名無しの冒険者:2058/12/1 (日)22:22:56 ID:Pa9Ma3m3IL
耳だけだと獣人とは言えないね
女獣人はケモモフの成り損ないだよ
436:名無しの冒険者:2058/12/1 (日)22:25:02 ID:UcAn9cH3tha
ケモ耳派至高! モフモフは正義! よってケモモフは最強!!
下らんことでケモモフを汚すな!!!!!!!!!!!!!!!
437:ケモモフ命:2058/12/1 (日)22:26:41 ID:km0Nmfm2L
おおう・・・珍しく436さんが切れたニャ・・・・・・ガク((( ;゜Д゜)))ブル
次回更新は10/29になります。




