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理事長と恋



さて、急な変化というものは、やはり反発も呼ぶようです。


「騙されるな!何が白の騎士団だ!そいつらは学園を支配する気だ」


そんな声をあげる人間がちらほら。


「格好つけやがって、貧乏人をいじめて何が悪い」


かえって裏でいじめに走る人間がごく少数。



何もかもすんなり上手くいくとは思っていませんが、なんとも難しいですね。


コツコツ頑張るしかないと、本日も理事長室に来てみました。


一緒にお弁当を食べる理事長は10キロの減量に成功したようですが、まだまだ1人掛けのソファーには座れません。


なんだか、さっきからモジモジと赤くなっているのが正直気持ち悪いです。


「その、水月さん。あの・・・」


そんなモジモジが許されるのはどうがんばっても20代までです。


「あの、その、実は僕・・・」


そこまで言うと耐え切れないようにガバッと顔を伏せて一気に言い切りました。


「実は僕を好きな人がいるんです!」


「はぁ?僕がじゃなくてですか?」


まぁ、どうせ勘違いだろうと思い話を聞いてみるとなんとも言えない気持ちになるお話です。


「理事長、勘違いですよ」


「え、でも、僕にニコって笑ってくれたんですよ」


どうやら毎朝の歩行訓練時にこけてしまった理事長を、大丈夫ですか?と起こしてくれた美人さんがいたらしいのです。


「ママン以外の人の手をにぎってしまいました」


と、まぁ助け起こされ、心配され、頑張ってくださいねと励まされ、笑いかけてくれたとのこと。


「あんなに優しくされたのは初めてです。きっと僕のことが好きになったのに違いありません」


どうしてそんな自信がでてくるんでしょう。

というか、助けおこされたくらいの触れ合いが人生で初めてって・・・。


「でも、すぐに立ち去ってしまったんです。きっと恥ずかしがり屋さんなんですね。それで、今度は僕からデ、デデデ、デートに誘ってみようかと・・・」


「り、理事長でも、デートに車椅子で行くわけにもいかないでしょう?何キロ歩けるようになったんですか?」


「う、そ、それは・・」


「だいたいママンからの愛が減ったとか何とか言って全然トレーニングしない理事長にデートが終わるまで女性をエスコートできるとは思えません」


「う・・・うぅ」


「だいたい、その女性が理事長のこと好きかどうかは本人に聞いてみないとわかりませんよ。理事長は好きなんですか?」


「・・・・・・。その、あの、前からすれ違うことがあって、リンリンちゃんに似てるなぁと・・・」


ポッと顔を赤らめて、両手の指をつんつんあわせている姿はいまだに視覚の暴力です。


「じゃあ、まずは告白ですね」


「そ、そんな、僕から?」


「理事長」


キッと理事長を睨みつけてゆっくりと話す。


「いつまで待ってても、可愛い女の子は空から降ってきたりはしませんし、相手から告白されるなんてこともありません。そんなことがあるのは選ばれた人間だけです。理事長はただでさえもうお年なんですから、自分で動かなきゃ何もつかめませんよ」


「で、でも」


「とはいえ、いきなり告白なんて大変だと思うので、まずはダイエットを自分でがんばったらどうでしょう?」


「そ、そうだね」


理事長は頷くと、早速散歩にでかけました。


また何処かで動けなくなってママン捜索隊がでないといいのですが・・・。





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