お昼休みには見回りを
今日はお昼に何かがあるようです。
理事長室にお弁当を届けた後、必ず教室にいてねと京ちゃんにいたずらっぽく微笑まれたので約束どおり教室でまったり本を読んでいます。
亮君は一緒にご飯を食べたらどこかへ行ってしまいました。
なぜか教室にはいつもよりたくさんの人がざわめいています。
そのうちの一人が堪えきれないようにこちらに話しかけてきました。
「ねえ、水月さん。今日のお昼に・・・キャー、いらっしゃったわ」
周りの女子も悲鳴をあげます。
あたりはあっという間にアイドルコンサート状態です。
そんな中、廊下を悠々と歩いてきたのは、亮君とユリウス君。
その後ろに2列になって4名が続きます。
みなさん、まだ昼間は暑いので夏服だらけの生徒の中を冬服を涼しげに着こなしての登場です。
詰襟をきっちり上まで閉め、入学式と卒業式くらいにしかお目にかからない帽子をかぶり、胸ポケットからは白のミサンガをたらし、腕には白の腕章を細く巻いていました。
制服の2ポイントの改造が自由に許されているということは、前学期の学年5位以内かつ、今まで学年1位を3回獲ったことのある人間ということです。
亮君は髪をきっちりなでつけ、ユリウス君はカールした髪を学生帽からたらし、まっすぐ歩いてくる姿はまるで軍人さんのようにも見えます。
しかし、モデルもびっくりの長い脚に引き締まった体が制服に入ることにより、何とも言えない色気と美しさを周りに垂れ流しています。
後ろに続く4名もそれぞれ2ポイントが許された人間ばかりで、整った顔をしています。
制服は5割ましで恰好よく見えるといいますが、15割ほど恰好よくなっているのではないでしょうか。
そのままうちの教室に入ってくると、前に整列しました。
きちんと等間隔に並び、その真ん中に亮君とユリウス君がいます。
2人は教室を見渡し、その後で亮君が前に進み、声を張り上げました。
「これから昼休みに見回りをはじめる。いじめをするような人間、及びその友人は覚悟するように。またその一味は私たちに話しかけるな、以上」
キッとこちらを睨みつけ、それだけ言うと、また去っていきました。
視線に射抜かれたようでドキドキします。
亮君がしゃべるとき以外は悲鳴の渦でえらいこっちゃでした。
ええ、悲鳴をあげたい気持ちはよくわかります。それだけ綺麗で恰好よかったのですから。
男子も格好よさに憧れを覚えたようです。
6名の後ろをぞろぞろと付いて行く一団にかなりの人数が吸い込まれていきました。
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そして、火曜と木曜日はお弁当を食べた生徒たちが全く外に遊びにいかずに、ひたすら教室で白の騎士団待ちという異常な事態になっています。
あまりに追っかけが激しく、巡回中の2人に握手をねだったりと進路妨害なども著しいので、はじめにいた6名の後に白の騎士団のうち時間がとれるものが警備をかねて後ろに付き、そのあとにこそこそと追っかける生徒たちといった図ができあがっています。
この暑い中、なぜか冬服を着る男子が増え、登下校時にも今まで着てなかった帽子をつけるのが流行っています。
2人の影響力のすさまじさに、ただただ吃驚するばかりです。
最初考えたときには校内巡回していじめを見つけようというコンセプトだった気がするのですが、悲鳴に包まれたこの校内巡回では何も見つけられそうにありません。
亮君たちが言うには、一応白の手のあいてる人間が放課後なんかも見て回ってくれているけれど、それよりもいじめを傍観する人間を減らすほうが効果的なのではないかとのこと。
確かに、貧乏人だからと馬鹿にする空気はなくなりました。
いじめてる人をみたら、白の誰かに知らせに行く姿も見かけるようになりました。
心の底からの行動かどうかはわかりませんが、白の騎士団の行動により、学園の雰囲気が変わったのは確かなようです。




