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女友達


「ねえねえ、さらちゃん。もうチューした?」


「聞きたい、聞きたい。ねえ、どっちが上手だった?」


水月沙良、5歳。日本の教育について何かが間違っているのではないかと、お前ら幼稚園でなんて会話を繰り広げているんだと、頭を抱えております。


側にいるのは、京ちゃん、みっちゃん、茜ちゃん。

今日は女の子だけで遊ぶからと亮くんとユリウス君を排除した、そこで、子供らしくシロツメグサで冠を作っていたはずでした。


興味しんしんな京ちゃんが口火を切り、みっちゃんがかぶせ、大人い茜ちゃんも、目をキラキラさせながら答えを待っています。


「しないよ」


できるだけ平静を装いつつ、もうこの話題が終わることを望んでいるのですが、しゃべったとたんに悲鳴につつまれました。


「「「えええええええ」」」


「なんでしないの?」


いやいやいやいや、京ちゃん、なんでしないのって変な子を見るような目でみないでくれませんか?最近はチューとか幼稚園なのか?

前世では大学になってはじめてのチューだった私に対する挑戦状か??

てか、それ以前に二人にチューもおかしいだろう。なんだ、挨拶なのか?ここは異国の地なのか?


混乱しつつも、逆に聞きます。


「なんで、してると思うの?」


「えーだって、二人とも素敵な王子様だし、付き合ってるならチューくらいするでしょ?」


「うんうん」


京ちゃん、みっちゃんは積極的なんだな。

でも間違っているので訂正をいれておきます。


「つきあってないよ」


「まーまー、はいはい。それでなんで?」


む、京ちゃんがお姉さんぶって綺麗に流しましたよ。

日本代表サッカーチームもびっくりのスルーパスでした。


仕方ないので答えます。


「好みじゃない。私はもっと大人の人が好みなの」


「「あーわかるー。確かに同い年の男子ってなんだか子供っぽいよね」」


だから、お前らは本当に幼稚園生なのかと・・・。

しかし、チャンスです。その気がないことをアピールしておかなくては。


「私、パパと結婚するし、初めてのチューは結婚式でするの!」


お願いだから、お前何言ってるの?みたいな目でみないでください。

ええ、前世の記憶もちにしては羞恥心もなくよく言ったなと。

そんなこと自分が一番思っています。


でも、これからも日々をつつがなく送るために一生懸命考えた、公式見解ってやつなんです。

いくら綺麗で可愛くても幼稚園生とラブラブにもなれなければ、チューなんてしたくもありません。

これを掲げていれば、みんな納得せざるを得まいという、非常に打算にみちた考えから生まれた水月沙良のパブリックコメントでございます。


「「えー、ぱぱぁ?」」


あからさまにがっかりというか、ないわーって雰囲気をかもし出すのやめていただけますか?

大人二人組みはもうパパを卒業したようです。哀れパパ。


「パパはママのだもん」


「うんうん、それに王子様じゃないからやだ」


心の涙が止まりません。パパ、強く生きてください。

茜ちゃんだけは思案顔です。君はまだパパ好きなんだね。


「でも、さらとママと光くんのために、毎日おそくまで仕事してるんだよ。一度パパが帰ってくるまで待ってたけど、疲れてとちゅうでねちゃった。自分のために一生懸命働いて、人生使ってくれる人が一番かっこいいとおもう」


そう言うと、大人組み二人も少し気持ちが変わってきたようです。


「「たしかに、自分のために尽くしてくれる人って素敵かも」」


パパの地位は少し上昇したようです。

茜ちゃんも、ぽそっと言いました。


「あかねも、パパが好きだな」


きゃっわいーーー。


「じゃあ、みんな今日は自分のパパに、パパ大好きって言おう」


「「「えーーー」」」


せっかくの提案に全力否定です。

あがったと思った地位は、それほどではなかったようです。


「大人の女は告白なんて簡単なんだから。ちゃんと言えなかったらお子ちゃまね」


馬鹿にしたように言ったら、やる気になったようです。これならきっと言ってくれるでしょう。


毎日がんばってるパパに、たまにはご褒美があったっていいんじゃないかな。




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