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白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
白鳥さんと嘘吐きカラス
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夏だからだろ

◆カラスの手記

カラスが誰なのか推理しながら、お楽しみ下さい。


◇高村語り



        ◆






 僕は、このキレイな世界が嫌いだ。




 青く澄んだ空、野に咲く花々、無邪気に笑う人々。




 そのキレイな世界の中で、僕だけが異質だ。




 僕は真っ黒で、周りとは相容れない存在だ。




 だから、僕はとびきりキレイな仮面を被り、皆に笑顔を振りまいた。




 そうしたら、皆もつられて笑った。




 僕が作った嘘の笑顔なのに。




 僕は皆を騙し、嘘を吐き続けながら生きている。




 もし僕の嘘がバレたら、皆は僕から離れ、僕を嫌悪するだろう。




 ゴミを漁る汚らしいカラスを見るような目で、僕を見るだろう。




 僕は、この世界で生きていてはいけない存在なのだ。






 僕は、このキレイな世界が嫌いだけれど、本当は醜くて汚い自分が、一番嫌いだった。





 ◇






 夏……。眩しい日差しが容赦なく照りつける季節……。






「暑い暑い暑い暑い、何で夏ってこんなに暑いのかしら」




「夏だからだろ」




 夏は暑い、当たり前だ。




 七月中旬。




 修学旅行、期末テスト、夏季クラスマッチを終えた、県立桜木高校には夏休みムードが流れていた。




「ねえ、五月の蠅って書いて、五月蠅い(うるさい)って読むじゃない」




「そうだな、それがどうした?」




「七月か八月の蝉って書いて、七月蝉いの方が合っていると思わない?」




 この、漢字に文句を付けている美少女が白鳥美和子。




 自称白魔導師であり、おれ高村秀の御主人様でもある。




おれが白鳥の下僕にされてから、早や、一年と数ヶ月。




 今日も今日とて、こいつのお供をしている訳で……。




「それよりも、五月蠅いか七月蝉いか、よ。どう考えたって、蝉の方がうるさいじゃない。この蝉の鳴き声が暑さを助長させているのよ」




 セミが鳴いていると、夏って感じだもんな。




「おれにとっては、どっちでもいいんだけどな」




 うるさいを漢字で書かないから。




「そうね、高村君は蠅という字も蝉という字も書けないものね。残念でした」




 白鳥は毒舌キャラである。特に、おれに対しては酷い。




 本人は「ツンデレ」と言っているが、デレが極端に少ない。見れたら、超ラッキー。




「そういえば、また恋愛相談が来てたぞ」




 自称白魔導師、白鳥様をこの学校で知らない者はいない。




 かなりの美少女だから嫌でも目立つし、何せキャラが濃いのだ。白魔導師って……。




 白魔導師の使命なのか、白鳥の気まぐれなのかは分からないが、悩み相談を請け負っている。




 白鳥の本命は心霊的な悩みだが、今までほとんどが恋の悩みであった。




 高校生だから、仕方ないけど。




「何で、こう暑いのに恋なんかするのかしら。見てるこっちも暑くなるわ」




 夏休み前だからな。彼氏彼女を作っておきたいんだろう。




「で、どうすんだ? 今日は止めるか?」




「まあ、仕方ないから受けてあげるわよ」




 こんな奴のアドバイスで上手くいくのかと思うだろうが、実際に上手くいっている。




 カップル誕生も、それなりに多い。

七月蝉いは、けっこう自分でも気に入っています。

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