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叫びたかっただけよっ
白鳥の悲鳴が聞きたかったら、ジェットコースターに乗せればいいよ。別に聞きたくて聞いた訳ではないけど。
「いやあああああ」とか「死ぬ死ぬ死ぬ~」とか、壊れたように、叫びまくっていた。
「だ、大丈夫か、白鳥?」
「ど、どうってことないわよ。丁度、叫びたい気分だったのよ」
涙目のくせに。苦しい言い訳である。
普段は怖いものなんてありませんという顔をしているが、この表情は、かなりのレア物だ。
意外なところで、欠点を発見してしまった。
「本当に、叫びたかっただけよっ」
「はいはい、分かってる、分かってる。誰にでも苦手なものはあるさ」
少し遅めの昼食を食べた後、白鳥が時計を見て言った。
「そろそろ、時間ね」
「そうだな。最後に何か、乗りたいものあるか?」
「……観覧車」
「そりゃまた、最後には持ってこいだな」
「あくまでもデートじゃくて、散歩よ。勘違いしないように」
「へえへえ、分かってますって」
「それに、私、遊園地に来たら、必ず観覧車に乗るって決めているのよ」
「何で?」
「まあ、乗ってみれば分かるわ」
作者もお化け屋敷よりジェットコースターの方が苦手です。




