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白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
白鳥さんと関西旅行
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ホンマに、ありがとうな



 その日は仕事から帰って来た薫オトンも一緒に夕食を食べた。




 現役警察官の薫オトンは、とても大らかな人で、おれが割ったガラスの件も「子どもは元気が一番」と笑いながら許してくれた。






 風呂(旅館の大浴場)に入って、部屋に戻ろうとした時、薫に呼び止められた。




「秀、ちょっとええか?」




「え、うん、いいけど……」




 薫が、いつもの爽やか笑顔でないのが気になった。






「ここなら誰も来うへんやろ」




逢坂家から少し離れた山のふもとに連れて来られた。




「誰かに聞かれたくない話でもするのか?」




「……特に、美和子には聞かれたくあらへんね」




 薫の顔が今まで見たことも無いくらいに、シリアスであった。




 今までギャグばかりだったから、完全に油断していた。




 どうやら、シリアスパートに突入らしい。




「美和子は、楽しく学校に行ってるか?」 




 突然の質問だった。




「うーん、どうだろうな。アイツ、あまり自分のこと話さないからな。……でも、周りの奴らとはそれなりに仲良くやってるかな。最初は、黒魔導師ってことで浮いてたんだけど、白魔導師にジョブチェンジしてからは、段々とクラスに溶け込めるようになってきてさ。キャラが受けたのかな」




 薫が黙って聞いているので、おれは話を続けた。




「今じゃ、けっこう人気でさ。顔は可愛いのに、男子に媚びるとか彼氏作ろうとかしないから、女子に疎まれることもなくなったし。女子が白鳥に恋愛相談持ち掛けるのも多いし。……なんやかんやで、アイツけっこう人のこと見てるよ。アドバイスとか、的を射てるし。白鳥のお陰でカップル誕生とかも、多いんだぜ?」




 実際、クラスに溶け込むのに半年かかった。




 最初は、黒魔導師で「呪う」とか言って恐れられていたけど、最近はめっきり言わなくなったし。




 白鳥が変わったのと、おれの涙ぐましい努力で、今の白鳥人気は確立されたといっても過言ではない。




 自分から進んで、人の輪の中に入る奴ではないので、おれが何かとサポートしてやったりと。




「……それを聞いて一安心や。美和子が変われたんは秀のお陰やね。……ホンマに、ありがとうな」




 薫が和やかに笑う。

白鳥さんがクラスに溶け込むまでの様子は語られなかった物語です。

いつか語られるかもしれません。

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