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白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
しずかとしょかん
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浅羽さんと大久保君



 放課後、しずかとしょかん談話室。


 でも考えてみれば、しずかとしょかんに入れるのは僕と浅羽さんだけなのだから、ここで脚本を完成してしまえば良いだけなのだ。


 どうせ、大久保君は陸上部期待のエースなんだから、部活で忙しくて、なかなか手伝えないに決まっている。


 そういえば、今日は浅羽さん、遅いな。


 宿題をしつつ浅羽さんを待って数十分が経った。


「遅くなっちゃってごめんね、宇宙君」


「浅羽さん、今日は何かあっ……」


 僕は、驚いて言葉が出なくなっていた。


 何でここに大久保君が⁉


「よっ、橘。ごめんな、ちょっと会議があって……」


 大久保君が気さくに僕に話しかける。


「お、大久保君が何でここに?」


 今まで一度も、ここで大久保君を見たことはなかった。


 それに彼が本読んでるところなんて、ほとんど見たことないぞ。実は家では本を読んでいたり? まさかね、家でトレーニングしたり、休日はアウトドアな趣味に費やしていそうだ。


「何でって、一緒に劇の脚本を考えるためだろ。この中だったら好きなだけ時間を使えるしな」


 確かに、しずかとしょかんは脚本作りには最適の場所ではあるけれども!


「真斗君は部活で多忙の日々だもんね。この中なら時間も気にせずに、じっくり脚本考えられるしね。……それにしても、真斗君がここに来るのも久しぶりだね」


 ま、真斗君⁉


「ああ、受験の時以来だもんな。約一年半ぶりくらいかな」


「真斗君たら、高校に入ってから一度もここに来ないんだもん。忙しい中にこそ、静かに本を読む時間が大切なんだよ。もうちょっと本を読みなさい!」


「満月が本読み過ぎなんだよ。どうせ、毎日入り浸ってるんだろ? お前こそ、もうちょっと外に出ろ!」


 み、満月だと⁉ しかも名前を呼び捨てって……。


「あの、二人はどのような関係で?」


 僕は、今にも言い争いを始めようとしている二人の間に割って入った。


「幼馴染だけど」


「幼馴染だよ」


 二人が口をそろえて言った。息ぴったりだ。


 ……幼馴染。


「って、ええええええぇぇぇぇぇぇ」


 僕は叫んでいた。幼馴染なんて小説かアニメの存在だと思っていた。それと、さっきの会話だけで二人の関係性が嫌でも分かってしまう。


「そ、宇宙君、驚き過ぎ」


「そんなに驚くことか? ていうか、お前も叫んだりするんだな。もっと無愛想で表情に乏しい奴だと思ってた」


 悪かったな、無愛想で。


「宇宙君は、本当はとても話しやすくて、いい人なんだよ」


 浅羽さんにそう言われると少し照れてしまう。


「へえ、そうなのか。お前も人見知りなの?」


「いえ、そういうのではないです」


 実際は、どうでもいい奴と話すのが嫌なだけであった。


「だったら、もっといろんな奴に話しかけてみればいいのに。お前、いつも一人で本読んでるからさ、なんとなく話しかけづらいんだよな。せっかくの話しやすくて、いい人が勿体ないぞ」


 何で、大久保君にどうこう言われなきゃならないんだよ!


「……そうですね。努力します」


 絶対にしないけど。


「おう、がんばれ」


 頑張らないけど。

浅羽さんと大久保君は幼馴染⁉

宇宙君の恋はどうなってしまうのか⁉

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