表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
10年後の君達へ
234/237

高村 秀

「僕の前に道はない   僕の後ろに道は出来る」






 先日、十年前に埋めたタイムカプセルを掘り返した。




 そこで「十年後の自分へ」というテーマで書かれた手紙を読み返したら、こう書いてあったのだ。




 詩人・高村光太郎の「道程」の冒頭。




 何故これなのかと言われると、せっかく十年後の自分に送るんだから、カッコいい感じの文章を書きたいなあ、格言や名言みたいなやつがいいなあ、と思い、試行錯誤の上に、やっと辿り着いたのである。




 いや、単純に、苗字が同じで親近感を覚えたので、使ってみただけだけど。特に深い意味もない。全くもって、適当過ぎるぜ、十年前のおれ。まあ今もそんなに変っちゃいないだろうけどさ。……これ多分、中々書けなくて、苦し紛れに思い付いたやつだよな。内容も何か哲学的に諭そうとして、失敗してる感じがするし。それに、おれの一人称は「僕」じゃないし、おれだし。おれはおれだし。つくづく残念だ。こんなのに引用されるなんて、高村光太郎も涙目だよ。




 まあ、それはそれとして。




 近況報告するか、十年経ったし。




 まず、おれと白鳥は「白鳥探偵事務所」なるものを立ち上げた。いや、ギャグじゃなくて真面目に、大真面目に。高校の時にやってた恋愛相談の延長線的なことで、浮気・不倫調査もやったし、白魔導師(自称)の白鳥のスピリチュアル相談みたいなのもやった。土曜ワイドさながらのガチの犯罪調査にも首ツッコんでみたりと、それなりに楽しい日々を送っている。




 職業・探偵助手、そして兼フリーターでもある。我が「白鳥探偵事務所」はたまに、閑古鳥が鳴くことがあるので、おれは近くのコンビニでバイトもしている。白鳥家には莫大な遺産が今でも残っているから、バイトなんかしなくても、白鳥は養ってくれるだろう。でも、おれは根っからのヒモではないので、自分の食い扶持くらいは自分で稼ぐ。ちなみに、仕事がない時、白鳥は家でくつろいでいる。本当、ニートみたいに。「ニート探偵」とからかってやると、白鳥は怒るけど。




 それと、相も変わらずだが、下僕生活、絶賛エンジョイ中。




 自分で言ってて、何か哀しくなるフレーズだが、もう慣れた。それに、今は下僕兼フリーター兼探偵助手だからな。おれのランクも上がったもんだ。




 まあ、おれと白鳥についてはこんなもんで、他二人の近況報告もしてやるか。




 薫は、めでたく結婚。お見合い結婚だったらしい。




 一男一女を儲け、奥さんとも仲良く暮らしている。ちなみに、子どもの名前は大和と和歌。




 職業は小学校の先生。こいつの算数の授業に、若干の不安を覚えるが、教採(教師採用試験)受かったんだから、大丈夫だろう。まあ算数だしな、数学じゃないしな。




 とりあえず、薫は幸せに暮らしている。




 そして、烏丸はなんと、弁護士になった(スゴイ)。




 あの東大を出た後、弁護士になった(めちゃスゴイ)。




 今は東京で「烏丸法律事務所」を開いて、バリバリ働いている。どっかの探偵事務所とは違って(自虐)、大盛況で休む間もないそうだ。収入は四人の中でダントツ。




 何で烏丸が弁護士になろうと思ったのかはイマイチよく分からないが、充実してるみたいだし大丈夫だろう。




 それに、今は和君がいる。あの子、もう中学生になるもんなあ。ますます顔立ちが烏丸に似てきている。東京に移ってからは、烏丸の仕事を手伝ったりしてるみたいだし。和君は相変わらず無口だけど、烏丸とは仲良く暮らしているそうだ。




 だから、もう烏丸は大丈夫だ。もう自殺なんてしないだろう。しないよな、仕事に疲れてとか。いや、信じてるぜ、烏丸。




 薫も烏丸も、それぞれ資格を取って、安定した仕事に就いている。おれも、白鳥の下僕に永久就職はしているが、やっぱり教師とか弁護士に比べると、弱いよな。おれも白鳥も家は変わらず、高校の長期休暇の時と同じような生活を続けている。たまに白鳥邸に泊まることもあるけど、基本的には自宅住まいだ。高村家も次男は独立し、三男は地方の大学に通いながら一人暮らし、妹はまだ高校生で家にいる。が、しかし最近、どうも彼氏が出来たらしい(泣)。ワトソン君な俺が(勝手に)調査した結果、その彼氏は、まあまあ良い男だということが分かった。でも、まだ認めねえからな。




 長男が探偵助手とか訳の分からない職に就いているなんて、親としてはかなり心配だろう。おまけにパラサイトシングルだし。実家に寄生中って感じ。そのため実家に戻る度に「白鳥さんとは、いつ結婚するの?」と聞かれる。長男には家を継いで欲しいのだろうが、万が一にでも結婚したとして、おれが白鳥家に婿に入るんだからな。あっちは兄弟いないし。……あれ?




 おれが婿に入るってことは、白鳥秀になるのか。そうなると、もう十年以上続けてきた「白鳥」「高村君」呼びが出来なくなるな。ってことは、「美和子」「秀君」呼びになるのか。うわあ、何か、きゅんと来るぞ。あくまで、妄想の中なんだけどな。哀しいけど、おれ達に恋愛フラグなんか立たないしな。




 そういえば、職の安定性について白鳥と話した時、こんなことを言われた。「私達はアウトローな探偵を目指すのよ。何ものにも縛られず、自由に生きていくのよ」と。アウトローって……。弁護士の烏丸にケンカ売ってるようにしか聞こえない。




 うん、頑張ろう、おれ。



高村君と白鳥さんに恋愛フラグが立つ時は来るのでしょうか。

教師になった薫と弁護士になった烏丸君、どちらもすごいですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ