探偵に伏線は付き物よ。
後日談。
その後の灯と児島達也の進展具合だが、良い友人という所で落ち着いている。児島達也が月下での物思いを卒業したため直接会う機会は減ったが、その分メールでのやり取りをしているそうだ。今後、恋愛に発展するかどうかはまだ分からない。でも、児島達也にとって灯が癒し的な存在になっていることは、ほぼ間違いないだろう。
「思うんだけどよー、あの児島さんって人、何かよく分からない人だよなー。掴み所のないっていうかさ」
「飄々としているように見えるけれど、実際は真面目な性格だと思うわよ。あれこれ悩んでいたようだし」
「それと、あの人烏丸に口調が似てるんだよな。含みがあるっつうか、嫌味を言ってくるとことか」
「ああ、つまりは腹黒ってこと?」
「そうきっぱり言ってくれるなよ。烏丸が聞いたら泣くぞ。『僕は腹黒じゃないよー、白鳥さんたらヒドいよー』って」
「それが烏丸君のモノマネだとしたら、かなり低いクオリティね。自分で似てると思う?」
「いや、思わねーよ。何だよ、そんなに気に食わないのかよ、このエセ烏丸口調」
「どうでもいいわ。……まあ、人の本性なんてそう簡単に分かるものでもない、ってことかしらね」
「ギャップに萌えるか、ギャップにドン引くか……。お前が実は甘えん坊だったら萌えるけどな」
「あっ、そう。……他には、ゆるふわ系男子が実は熊狩りが趣味で近接格闘技もお手の物とか」
「だから、たまに出て来るそいつは一体何者なんだ」
「さあ、いつか会えるかもしれないわよ」
「何だよ、その伏線」
「探偵に伏線は付き物よ。これから一生伏線だらけの人生よ。覚悟しなさい」
「そりゃ大変だ」
探偵は人の真実を暴く仕事だ。
伏線を回収し真実の物語を導き出す。
線と線を、縁と縁を結んで、真実に辿り着く。
回想だけで物語を終わらせてはいけない。
いつかきっと、いや必ず本当の彼に辿り着く。
そんな覚悟を持って、私は前に進んでいく。
いつか鷲羽先輩にも熊狩りが趣味のアイツにも出会えるといいですね。




