今更どうした
次の日の午後。
私は高村君を引き連れて児島達也の家に向かった。
家の場所は知っている。同じ中学校区内といっても、私の家と彼の家はけっこう距離があるので、この辺りを通ることはなかった。児島達也の家の隣が先輩の家であった。かつて鷲羽真琴が住んでいた家は現在更地となっており、その現実を受け入れたくないために私は無意識にこの付近を通ることを避けていた。ここを訪れるのは約三年ぶりだ。懐かしさなんてものはなく、三年前と同じように同行者と話しながら道を歩く。
「確かこの辺りだったはずよ……、ああ、あった」
洋風の一軒家が並ぶ住宅街を道なりに進んだ先に、家一軒分の更地を見つける。そこだけ場違いであるように、ぽっかりと空間が空いている。まあ、かつても場違いな和風建築だったけれど。
更地の隣家、表札に児島と彫ってあるのを確認し、玄関のチャイムを鳴らす。ピーンポーンと音が鳴り、インターホン越しから女性の声がした。
『はい、児島です。どちら様でしょうか』
「私、児島達也さんの知り合いの者ですが、達也さんはいらっしゃいますでしょうか」
『えっ、達也の? はい、少々お待ち下さい』
そう言って、女性はインターホンから離れ児島達也を呼びに行った。この女性はおそらく彼の母親だろう。知り合いが家を訪ねてきて驚くということは、彼には家に招待するほど親しい友人はあまりいないのかもしれない、と思った。いや、でもかつては、彼の家を先輩が訪ねてきて一緒に遊んでいたのかもしれない。あの鷲羽真琴と小さい頃からの友人だったという児島達也。中学時代の老け顔から幼児期の先輩を想像することは容易ではないし、ましてあの先輩がどんな遊びをしていたかなんて想像するだけ無駄というものだ。
数分後、児島達也が姿を現した。上はTシャツ、下はくたびれたジャージのズボンというラフな格好、髪は寝起きかと疑うほどボサボサだった。
「ええっと、君は……」
「久しぶりね。青山東中学校心霊研究会、鷲羽真琴の後輩、白鳥美和子よ」
何かの癖かは分からないが、名乗る時の私は随分と尊大になってしまう。相手が年上だろうと関係ない。それに三年前も怒りに任せてとはいえ、敬語を使った覚えは微塵もない。
「……ああっ! 鷲羽君の後輩の、あの白鳥さんか!」
どうやら思い出したようだ。
「でも、どうして君がここに?」
今更どうした、と言いたそうな顔だ。それはそうだ、三年ぶりに突然現れたのだから。
「まあ、詳しい話は隣でしましょう。今は更地になって何もないけれど」
ついに児島達也との対面です。
白鳥さんは何を話すのででしょうか?




