単純で羨ましいわ
「もう少し、私の話を聞いてくれる?」
「ああ」
いつものやり取りが一通り終わった所で、シリアス口調に戻す。
「探偵は真実を探る仕事。真実を知るということは、それを背負っていく覚悟を持たないといけない。誰かの辛い真実を知ってしまっても、それをずっと背負っていかないといけない。ただ格好良いというだけでは務まらないのよ。……あなたにその覚悟が、私と一緒に一生誰かの真実を背負う覚悟がある?」
「あるよ。あるに決まってんだろ」
高村君は私を真っ直ぐ見詰めている。
「本当に?」
「ああ」
「これから先ずっと背負っていかないといけないのよ? 烏丸君の時以上に辛い真実が待ち受けているかもしれないのよ? 知りたくなかったことまで知ってしまうことだってあるのよ? それでもいいの?」
「いいよ。……ったく、何度も言わせんな」
私は高村君を巻き込むことを恐れていた。だから、今回わざと逃げ道を作ったりした。けれど、そんなことは無駄だったのだ。彼の答えは、もう決まっていたのだから。それに、今まで散々巻き込んできた私が今更何を言っているのだ。
「そう。……迷いがないのね。単純で羨ましいわ」
「単純で悪かったな」
「褒めているのよ、感謝なさい」
「あー、そーかい」
ふて腐れたような適当な返事。こんな捻くれた私にもちゃんと付いてきてくれる。それが嬉しい。
「それで、児島達也のことだけれどね……」
話の流れを元に戻す。
「彼と一度話してみようと思うのよ。……あなたは特に話に加わらなくていいけれど、ただ見守っていて頂戴。それだけでいいから」
「おう、分かったぜ」
それだけで心強いから。
高村君は、もう覚悟ガンギマリですね。




