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白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
烏丸君の家族
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どうしようもないけど



 その後は、高村君から子守のいろはを叩き込まれた。




 何というか、手馴れている。やっぱり経験者は違うな、と思った。家庭科の教科書だけでは、分からないことが沢山あるんだな。




 でもまあ、教えてもらってすぐに出来るものでもないので、何かあったらメールでSOSを送るから助けに来い、という協約を結んでおいた。お向かいさん同士、協力しないと。







 高村君から夕飯のお裾分けを貰い、その帰り際。




「あのさ、おれ思うんだけどさ……」




「何を?」




「弟君のことだよ。……この子はさ、ずっと施設にいた訳だろ。実の親の顔も、兄の顔も知らずに。家族ってものを知らずに生きてきたんだろ。……施設の人だって、ちゃんと育ててはくれてただろうけど、やっぱり家族といるのが一番だと思うんだよ」




「………………」




「これから、けっこうヒドいこと言うけど、我慢してくれ。……お前の親は、育児放棄して海外に飛んでるような、本当にどうしようもない親だし、お前はお前で心は病んでるし色々と問題抱えてるし。……本当、どうしようもないけど、それでもさ、そんなんだけどもさ、お前らは家族なんだよ」




 熱く語る高村君。




「ご親切に、どうも。……じゃあ、僕達はこれで」




 そんなことは、最初から分かっていた。







 就寝時間。




 幼児が寝るのは早い。九時には、もうぐっすりだ。




 僕の部屋にはベッドがあるが、今日は布団を敷いて寝ることにした。リビングに布団を二つ並べて、寝る。




 そうはいっても、僕の普段の就寝時間は十二時くらいなので、すぐには眠れそうもない。




 僕の弟の寝顔を見ながら、思う。




 これが、家族……。




 僕の、弟……。




 触れようとして、思いとどまる。




 僕は今まで、人に触れることを避けてきた。人の温かみに触れるのが怖かったから。そして、生きていると実感することが怖かったのかもしれない。心の無い自分でも、人間のような温かみを持っていることに違和感があったのかもしれない。




 今回のことだって、僕は何処か他人事のように思っていた。自分自身のことなのに。他人ではない、家族のことなのに。向き合えていなかった。




 僕には心が無い。人間の気持ちが分からない。




 だけれども、そうだけれども。




 嘘でも、無理やりにでもいいから。




 向き合ってみよう、そして触れてみよう。






 僕は、弟の手にそっと触れた。




 握り返してきた小さな手は、とても温かかった。

高村君の言葉は烏丸君の心を動かしました。

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