僕に似ている。
その日の夜。
今日は白鳥さんの家に泊まることになった。逢坂君と白鳥さんは自分の部屋に戻り、僕と弟と高村君は同じ部屋で寝ることになった。いつもの客室ではなく、洋風建設なのに何故かある和室で、しかも川の字で寝ることになった。高村君と川の字とか、本当勘弁して欲しかったが、白鳥さんには白鳥さんなりのこだわりがあるらしく、譲ってはくれなかった。
「家族、か……」
隣で眠っている弟の寝顔を見て、呟く。
時々、寝返りを打ったり寝言を言ったりする高村君とは対照的に、弟は静かだ。まるで、死んだように眠っている。縁起でもないけど。
そういえば、僕も死んだように眠るらしい。昔、祖母が教えてくれた。
そして、逢坂君が言っていた言葉が重なる。僕に似ている。……そんなことを言われると、不安になる。弟はずっと無表情だ。頷くくらいの意思表示はするが、言葉を発さない。三歳にもなれば、普通は何らかの言葉を話すはずだ。言語障害かとも思ったが、何となく違う気がする。……もしかしたら、僕と同じかもしれない。
人の気持ちが分からなくて、何も感じない自分のことも分からなくて、もう何もかも訳が分からない。嘘の吐き方も、猫被りの仕方も分からないから、どうすることも出来なくて、だから無表情でいるしかない。
弟の寝顔をもう一度見て、僕は目を閉じた。
白鳥邸に和室があるのは白鳥さんのお父さんの発案です。
日本っぽい部屋が欲しかったみたいです。




