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白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
白鳥さんの黒歴史
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なら、いいじゃないの

 日曜の夕方、おれたちは河川敷で夕日が沈むのを見ながら、黄昏れていた。


「今日も手掛かりなしかよ……」


 おれは、そう呟いた。


 白鳥は、さっきからずっと黒歴史に何か書いている。


 なかなか手掛かりを見せない霊を呪っているのかもしれない。


 今日、白鳥はかなりやる気があったのか顔を生き生きさせて、駅で待っていた。


 そして、電車で五駅行ったところにある寂れた神社におれを連れてきた。


 でも、霊は現れず、現在は反省会ということで近くの河川敷にいる。


 河川敷では、地元のサッカークラブが練習をしていた。こんな時間まで熱心だ。


「おれさあ、中学までサッカーやってたんだぜ」


 下でボールを追いかけている子どもたちを見て、おれは自分がサッカーをやっていた頃を思い出した。


「では、高校でもサッカー部に入るのかしら?」


 白鳥が、手を止めて訊いた。


「おれ、高校では部活はやらないと思う……」


「あら、私もよ。……入学説明会の時にもらった学校紹介の冊子から、この学校はあまり部活動に積極的ではないことが読み取れたわ。担任も部活動は希望者だけでいいと言っていたし」


 おれは、そんな冊子は全く読んでいなかった。


「そういえば、お前、中学の時は部活してたのか?」


 少し気になった。


「……一応、してたわね」


 意外だった。


「何部?」


「心霊研究会というものを立ち上げたわ」 


「自分が作っちゃったのかよ」


「いえ、作ったのは別の」


「部員は他にいたのか?」


「私の他に、二人いたわ」


「へえ」


「それで、あなたは、何故サッカーを止めてしまったの?」


 少しの沈黙―――――。


「……自分がちょっと嫌になったんだよ」


「なぜ?」


 これを人に話すのは、初めてだった。


「子どもの頃はさ、何も考えずにサッカーしてたんだ」


 あの子どもたちのように。


「……でも、中学の時にレギュラー争いがあってさ。一学年下の奴にポジション取られちゃってさ。その後は、ずっと補欠でさ。……ホント、情けないよな、おれ」


 あの時は、かなり辛かった。


「……そうね、情けないわね」


 こいつの辞書に慰めるという言葉はないらしい。


「でも、今でもサッカーは好きでしょう?」


 思いがけない言葉だった。


「……ああ」


「なら、いいじゃないの」


 そうか、これが……。


「そうだな」


 こいつなりの、慰め方かもな。


 白鳥美和子が少し分かった気がした。

心霊研究会の話はもう少し先に出て来ます。

長い目でお待ち下さい。

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