64話:到着SIDE.D
新幹線に乗ること数時間……。あたしは、ようやく京都へと着いたわ。正直言って遊び疲れて眠いわよ。あ~、あれね。行きの車ではしゃぎ過ぎてあんま遊べなくなるみたいな家族旅行のときと一緒よ。
京都駅に着いたあたし達は、京都駅付近に止めてあったバスに乗り込み京都を回りながら楽盛館に向かう予定よ。
あたしがバスに乗ると、隣にははやてが座ったわ。はやては凄くテンションが高いんだけど……。あたしは眠いから寝たいんだけど……。
「はやて、あたしは寝るから着いたら起こして」
あたしはそう言って寝ようとして……、はやてじゃない別の誰かの声に起こされた。誰よ……。
「ちょっといいか、青葉」
あたしは気だるそうにそっちを見た。うちのクラス担任、廿日雨柄よ。何だってこんなときに話しかけてくるのよ……。
「青葉、マリア・ルーンヘクサって知ってるよな」
少し小声で尋ねてくる雨柄。あたしは、気だるそうに答えようとしたとき、グラムが頭の中で言う。
「廿日……、麒麟の……いや、この場合は、罪の一族か……」
罪の一族……?何か大きな罪で犯したのかしら?
「いや、それはむしろ親類の九龍家だろうな……。九つの龍を殺した呪いを受けているのだから。《罪深の魔法使い》がいたから罪の一族、というのは少しアレだが、廿日は少々おかしな一族でな。だからこその罪の一族なんだ」
よー分からんわね……。おかしな一族だから罪の一族っての?まあ、何でもいいんだけど……。
「あの露出幼女がどうかしたの?」
あたしの言葉に、雨柄がなにやら微妙な顔をしていたわ。たぶん、「実際そうだが、その言い方はどうなんだろうか……」みたいなことを思ったんでしょうけど。
「暗音ちゃん、ろしゅつようじょって何?」
あたしの声を聞いていたはやてが聞いてきた。ふむ、答え難いわね。いえ、まあ、ぶっちゃければそのままなんだけどね?
「露出の多い服を着た5、6歳の女の子よ」
いや、まあ、マリア・ルーンヘクサはもうちょい年上ぽかったっけ?まあ、どうでもいいかな?
「せ、先生……、は、犯罪ですよぉ?」
はやてが雨柄にそう言った。どんな勘違いをしたのよ?まあ、どうでもいいか……。あたしゃ眠いのよ。
「しかし、雨罪の直系がこのようなところにいるとはな……」
(雨罪?)
眠い頭で、グラムの言った言葉をどうにか理解してた。けど、雨罪ってのは誰?知らん名よね……。
いえ、知ってるわね。正確には聞いたことがある。今朝、マリア・ルーンヘクサが言っていた。「雨罪……じゃない、雨柄は」と言っていた。つまり、まあ、その辺が関係してきているのかしら?
「廿日雨罪。《罪深の魔法使い》。その能力の特殊性から蒼天の馬鹿も気にしていたな……。雨柄とか言ったな。奴は曾孫だな。廿日雨翼と甘守音嗚の間に生まれた子、兄の雨柄、妹の音雨の兄の方だ」
ああ、雨柄って妹がいたんだ……。てか、結局のところ、その能力の特殊性の詳細は何なのよ?
「《罪深の魔法使い》。地獄で定めるその罪の分だけ相手を苦しめることが出来る。また、自分の一族に関わる罪を地獄で裁かれない代償に一時的にその罪を自分の身体に顕現することの出来る魔法だ。
そして、その親類に九龍がいる以上、《罪深の魔法》は、九つの龍殺しの罪さえも己の身体に顕現できるようになった。それゆえに、シュピード・オルレアナや【血塗れ太陽】のどちらかでなければ相手に出来ないほどに強くなったと言われている。が、なんにせよ一時的にという制限がついていたしな」
そもそも地獄ってのはあんの?それに、シュピード・オルレアナって誰よ?【血塗れ太陽】もだけど……。
「地獄か……、さあな。ある場所にはあるだろうし、ない場所にはないのだろう。
シュピード・オルレアナか。奴はスーパーメイドだ。まあ、自称だがな。奴の主、ライアの奴が死んでからもうだいぶ経つが、新たな主を見つけたとかどうとか……。
【血塗れ太陽】に関しては、簡潔に言ってしまえば最強であり、規格外という言葉が一番しっくり来るだろう。《罪深の魔法使い》と同時期にいた化け物、【氷の女王】。その息子が【血塗れ太陽】だ。他にも【雷帝のウィンディア】や【人工第五鬼人種】など大成したものが多い【氷の女王】の子供の中で、【血塗れ太陽】だけは、規格外すぎた。
生まれながらにして氷の龍をその身に宿し、希咲の直系にも関わらず、三縞の【輪廻】を隔世遺伝し、天月流剣術を全て習得して、舞野の秘宝を体に埋め込まれたうえ、四之宮に養子に取られ舞術を習得した。つまり五王族全てを知るものである。さらに、二階堂の【赫】すらも持っているというのだから、規格外、そもそも存在しないはずの存在とも言える。おそらく、奴に勝てるものは、存在しないだろう……。例えお前でもな」
あたしでも勝てない……?そりゃ凄い奴なのね【血塗れ太陽】って。
とかそんなことをグラムと話しているうちに、雨柄の誤解が解けたらしく、はやてが謝っていた。
「それで、罪なる一族の廿日雨柄?えと、廿日音雨の兄で?
マリア・ルーンヘクサが何のかしら?」
あたしは、眠いので、適当に単語を羅列して意味深な感じを演出した。そんでもって超眠い。
「音雨のこと知ってんのか?」
ああ、そこに食いついちゃった?あたしとしては本題に入ってほしかったんだけど……。まあいいか。
「アンタの家のことならそれなりにね……。そんなことよりもマリア・ルーンヘクサが何なのよ?今朝も会ったわよ、あたし」
一応、本題に入りやすいように、あたしから導入のキーを与えてみたわ。だからとっとと本題に入ってほしいんだけど。
「今朝も会った?そいつは本当か?」
うん、いい食いつきね。そうそう、そうやって本題に入ってくれればいいのよ。
「ええ、会ったわよ。忠告するってさ」
あたしの言葉に、目を丸くする雨柄。一方、話についていけずに、あたふたするはやて。いや、まあ、理解しなくてもいいんだけど……。
「忠告?」
雨柄は忠告について聞いてくる。いや、聞いてきてはないけど、ニュアンス的にそうってことよ。
「ええ、ナナホシ=カナもいることを忘れるなってね」
大体のところ、そんな感じの話だったわよね?ナナホシ=カナ。筆頭騎士、天龍騎士、って感じだったわよね。
「誰だ、そりゃ?」
あん?雨柄は知らないっぽいわね……。面倒な。説明も面倒だし、あたしは眠いし。てか、とっとと寝たいわよ。
「知らないわよ。ほら、話は以上?」
あたしが聞く。ちなみに、まだ雨柄からの本題っぽいのは聞いていない。あたしの話が終わっただけなのよね。
「ああ、まあ、以上だ……って、まだ何も話してねぇよ?!」
雨柄はだまされなかったわね。チッ。とっとと終わらせて欲しいのだけれど……。はぁ……。
「この間、マリア・ルーンヘクサが言っていたんだが……、えと秋雨月霞とか言ったか?そんな感じのが前世とか言っていたんだが……」
へぇ、意味分からん。てかどうでもいい。どうでもよさすぎんのよ……。眠い。
「ほぉ、秋雨月霞。そういえば、前《終焉の少女》は奴だったか?九頭龍の巫女が《終焉の少女》とか、運命も皮肉なものだな」
グラムがそう言った。よー分からんけど、とりあえず、今のグラムの言葉を適当に言えばいっか?
「九頭龍の巫女、秋雨月霞。前《終焉の少女》。えと、あ~、まあ、マリア・ルーンヘクサの前世よ。
これで話は終わった?終わったならあたしは寝る」
そう言って、あたしは眠った。ホントガチで眠ったんだけど……。
「暗音ちゃん!もう着くよ!」
「ふぁ?!」
思わず叫んだ。てか、もう着くの?って、まあ、そりゃそうか。京都駅から京都府内の旅館に行くんだもの……。あ~、ホント……。
そうこうして、駐車場に着いたのよ。
え~、このたび、誠に勝手ながらしばらく更新できそうにありません。明日から土曜日くらいまでですかねぇ……。
えと、言い訳をさせてもらうなら、あたしは土曜日にちょっとした大事な用事がありまして……、それまで暇がないという感じなのですよ……。
時間があったら更新しますので、ホント、申し訳ありません!




