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《神》の古具使い  作者: 桃姫
覇紋編 SIDE.D
254/385

254話:陰に潜む者

「唐突ですまないが、ジル・ド・レと言う人物を知っているか?」


 不知火からそんな風に電話がかかってきた。何なのよ、急に、あたしは凄く雑な対応をする。だって、夏休みだっつーのに、昼過ぎに電話かけられても起きたばっかだっつーのよ。あくびを噛み殺しながら、仕方なく不知火からの質問に答ええるわ。


「何よ、知ってるわよ?

 ジル・ド・レ。あ~、レってのは持ってる土地の名前で、フランスを含めヨーロッパの爵位とかの貴族の考える地域では、土地の名前、領地の名前を自分の名前にくっつけることがあるのよ。だから、本名はジル・ド・モンモランシ=ラヴァル、だったかしら。

 百年戦争でジャンヌ=ダルクと共闘したことからジャンヌとかといっしょに救国の英雄とか言われてる。確か、オルレアン包囲戦でジャンヌに協力したんだったかしら。ジャンヌの主要な軍事の初勝利ともいえる戦い。包囲戦ってのは、イングランド軍がオルレアンを包囲してるってことで、マジヤバイ状況で大敗状態のオルレアンを一気に勝利に導いた、その作戦に協力してたのよ。

 ま、ジャンヌ自体は、その後異端の罪で処刑されてるけど、ジルは領地に戻って、錬金術かなんかに没頭していたとか聞いたわね。まあ、そそのかされて黒魔術に手を出していたとか、いろいろ説はあるけど、ジャンヌ=ダルクをよみがえらせるために錬金術に手をだしたとか、いろいろ話はあるわ。黒魔術のために1500とかの子供とかをさらって生贄にしていたとか、それはジャンヌが死んで頭が狂ったとか、子供を殺すことに快感を得ていた、とか、ね。そんな彼も、領土の問題で、聖職者を拉致したとかの罪で逮捕、処刑されてしまうんだけど。

 ああ、あとは、シャルル・ペロー、ほら、赤ずきんとかシンデレラとか長靴を履いた猫とかの、ね、彼の作品の青ひげのモチーフがジルだと言われているわ。

 まあ、こんなものかしらね、それで、これが何なの?」


 別にフランスの英雄の話が聞きたいわけじゃないでしょうに、いつものことながら、スッと本題に入らないわね。


「ああ、実は、そのジル・ド・レが存命している可能性がある、と言ったら信じるかい」


 ジル・ド・レが存命しているですって。何年前の人間だと思っているのよ。普通に考えて、もし、処刑後生きていたとしても、この時代まで存命しているわけがないじゃないの。ある可能性を除けば、だけど。


「もしかして、そのジル・ド・レ、異世界関連かしら。今回の邪神復活と関係しているって話?」


「よくわかるな。その通りだ。知人の……異世界から来たという知人の遺品を整理していたら分かったことなのだが、その世界の元老議会の中にジル・ド・レと言う人物がいたそうなのだ」


 それが、異世界のジル・ド・レ出ないのだとすれば、可能性は一つよね。まあ、そう言った人物も出てくるでしょうとは思ってたけどね。


「そう【最古の術師】関係ね。ったく、しゃーないわね……、イシュタルあたりに聞いて探りを入れるとしましょうか。でも、なぜにジル・ド・レが邪神なんぞを復活させようとしているのかしらね」


 ジャンヌ死亡で完全に頭が壊れていたのかしら。まあ、何にせよ、敵の1人が分かれば上出来よね。今んところ誘拐事件も殺人事件も目立ったニュースはないから、ジルが何かをしているとは思えないし。


「まあ、この件は君に任せるよ」


 不知火はそう言って電話を切った。あたしは、う~ん、どうしようかしらね。相手が、あのジル・ド・レだからって何かができるわけでもないのよね。おそらく、【最古の術師】の一員なんでしょうけど、前回のにもたぶん参加していなかったでしょうし、マーリン見たく例外みたいなもんかしら?


「それにしても百年戦争の英雄、そんなもんが邪神を復活させるのかしら?」


 百年戦争に限らず、この世界には、数多の戦争が起こった。それを終結させた英雄、まあ、尤も、集結させたのが正義からとは限らないけれど、百年戦争だって、普通に考えれば、「神様の声聞こえるから戦場に行ってくる!」って言った農民の女がみんなを率いて集結とかいう話で、神の声が聞こえるってどういう状況よ、ってなるじゃないの。


「神の声が聞こえる、ね」


 そう呟いたのは、あたしではなく、イシュタル。いつの間にか、神眼を使って侵入していたみたいね。


「まあ、そうね、普通はおかしいと考えるのよね。でも、彼女は……」


 何よ、その意味深な発言は。まあ、イシュタルの発言を一々気にしてもしゃーないわね。それよりも、とっとと、やることをやっちゃいましょうか。


「それよりも、あんた、ジル・ド・レが【最古の術師】にいたかどうか、知ってる?」


 イシュタルに聞くと、イシュタルは、少し嫌なものを見るような顔をして、ため息をつきながら返してきたわ。


「ジル・ド・レ、【最古の術師】の魔術派ね。ジル・ド・レ、マーリン、エリファス・レヴィ、ヨハン・ゲオルク・ファウストなんかの魔術師がいるらしいわ」


 百年戦争の英雄ジル・ド・レ、アーサー王伝説の万能の魔法使いマーリン、高等魔術の教理と祭儀を記したエリファス・レヴィ、悪魔を召喚したとされるヨハン・ゲオルグ・ファウスト、おそらく、だけど他の有名な魔法使いや魔女もそこに名を連ねているんでしょうね。まあ、錬金術師とも魔法使いとも言われているやつがどっちにいるのかは知らないけど。


「それにしても、今回の件はいろいろと、世界の情勢にも関与しそうね。あれはもちろん、【最古の術師】、それから邪神をこの世界に持ってきたことまではいいにしても、この地に……いえ、この国にそれを持ってきてしまったことは失敗だったわね。【神代・大日本護国組織】が動き出すでしょ。まあ、誰が動こうと、邪神ってのが復活しようと、終結はするでしょう。でも、事前に動きを察知しているのは、おそらく、ここにいるメンツだけでしょうけど。どの組織もまだ邪神については気づいてなさそうだもの」


 【神代・大日本護国組織】、大昔から日本をいずれの世界においても日本と言う国、日本に類推する国が存在する限り、そこを守護する組織であり、また、試練を課すものでもあるって言ってたわね。

 第一師団「八咫鴉(やたがらす)」、第二師団「氷点姫龍(ひょうてんきりゅう)」、第三師団「紫鳳桜(しほうざくら)」、第四師団「天候色彩」、他にも数多の師団が存在し、それを束ねる大日(おおひ)孁貴(れいき)朱野宮(あけのみや)朱天(しゅてん)という2人。それと謎の多い(なつめ)(れん)赤城(あかぎ)(ひろ)。この4人には気を付けたほうがいい、って父さんも言ってたし。

 何でも、後者2名は極秘師団、第零師団「遥かなる天鈴(てんりん)」と呼ばれる場所に所属しているとかなんとかで、他の世界にもいくつか「遥かなる天鈴」と言う組織を作り、それを使って日本を裏から守っているとかどうとか。


 なんでもじいちゃんの行ったことのある世界に超能力者を集めて軍隊にするということがあったらしいけど、その中の1つに「遥かなる天鈴」と言う軍隊があったらしいわ。他にも、微妙にこの世界とは歴史の違う日本の話しで、日本ではなく扶桑と呼ばれているらしいけど、二足歩行型決戦兵器・(きらめ)と呼ばれるものがあり、それを使用する部隊こそが扶桑軍特殊軍隊・遥かなる天鈴だったらしいわ。


 まあ、とにかく、そんなヤバいやつらも邪神復活となれば動き出すってことよね。なんて面倒なことになってるのよ。


「それにしても、その護国組織とやら、どのくらいのピンチなら来るのよ。めちゃくちゃ小規模の問題にも首ツッコんでたら何人いても足りんでしょうに」


 何億人体制なのかしら。どの世界にも顔を出していたら何人いてもあっちこち移動しなきゃならんし、めっちゃ大変じゃない?


「一応、規定はあるらしいわよ。まあ、組織外の人間にはその規定は漏れてないんだけど、それでも邪神ほどのものが復活するとなれば、そりゃ来るでしょうけど。あとは、国家の存続にかかわる規模の戦争とかね。あとは、宇宙からの侵略者とかにも対応するって聞いたことがあるわね」


 ふぅん、でもやっぱり規定ってのはあるのね。まあ、どこの組織でも普通はあるものかしら。


「ったく、まあいいわ。それで、あたしはどうすればいいのかしらね。不知火からジル・ド・レについて任されたけど、ぶっちゃけ、今回の一件に噛む気はあんまないんだけど……。仕方ないわね。英雄が相手ってのも申し分なさそうだし、いっちょやったりますか」


 と言っても、きっと新月の日まで出番はないはずよ。だって、やつらが動くのは確実に新月の夜で、それまでは、あたしがどう動こうとも、怪しいってだけでそいつかどうか分からないし。勘でつぶせないこともないけど、それでミスっても面倒だしね。


「神に導かれし者の仲間か、神へと戻る者か、神がどちらを選ぶのかってのはみものね。尤も、復活する邪神とやらも『神』には違いないんでしょうけど」


 イシュタルの呟きを無視しながら、あたしは朝ごはんもとい昼ごはん……ブランチを求めて部屋を出て階段を下っていく。

 え~、遅れました。申し訳ありません。この1週間は、明後日を除き学校に行かなきゃならんかったので、大変忙しかったんです。

 まあ、と言うことは察しのいい人は気づくと思いますが、明日も学校です。そして、おそらく更新できません。申し訳ありません。

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