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《神》の古具使い  作者: 桃姫
魔法編 SIDE.GOD
244/385

244話:孫の娘を訪ねて

SIDE. Grandfather


 俺、青葉清二は、唖然とした表情で、暗音を見送ったあと、妻である美園と共に、とぼとぼと暗音に言われた染井家……染井製薬の家に向かっていた。染井製薬は、製薬会社であり、創設は俺の生まれる前にさかのぼるほどだが、歴史はそれでも浅い方だろう。しかし、扱っている技術は最新のものが揃っていて、価格も安く、手広く事業を行っているようだ。


 はて、なんで、そんなところに行かなくてはならないのか。そもそも娘ってなんだよ。未婚のはずの暗音がそんなことを言い出したのが意味不明すぎて怖いので、正直言って、今のところ向かってはいるものの、どうしたらいいか悩んでいるところだ。


「なあ、ふ……美園。どう思う?」


 俺は、妻に問いかけてみた。左腕に引っ付いている美園は、頬に指を当て「う~ん」と少し考えながら、何かを思いつくように言う。


「まあ、王司と紫苑ちゃんが転生している時点でその辺へのツッコミはないのですけどね」


 まあ、それもそうか。転生、な。その辺はどうなんだろうか。聖にでも聞いてみるか。なあ、聖、どうなんだよ。


「……」


 あれ、反応が無いな。どうかしたんだろうか。いつもなら、すぐに反応が返ってくるはずなのに、でも無視しているってわけじゃなさそうだがな……。


「おい、どうしたんだよ、聖」


 俺の問いかけに、聖がハッとしたような声を漏らした。そして、呟くように、一言。


「第三典……アデューネが、なんで、また」


 第三典、つまり、聖のような第六典神醒存在の同類、神の曲に目醒めし存在である。第三は、夢零神奏だったかな。ちなみに聖が、洗礼神奏だったはずだ。しかし、そんな存在が、どうして、ここに来たんだ。聖に用があったのだろうか。前にも一度、どこか別の場所で勢ぞろいしたことがあったそうだが、個々ではちょくちょく会っているようだし、何かあってもおかしくはない……はず。


「仕方ない、行くだけ行ってみるか」


 俺が呟くと、美園は、腕に引っ付いたまま、俺の横を歩く。


 そして、歩くこと40分。染井製薬は、三鷹丘市からやや外れたところにあるのだが、さほど時間がかかるわけでもないので、すぐについてしまった。それにしても、道が変わっているところとかもあって驚いたな。


「あー、青葉暗音の関係者なんだが、頼まれて代理で来た。通してもらえるか?」


 警備員にそういうとあっさりと通されてしまった。しかも案内人付で、本宅の中へと案内されてしまった。


 そして、とある部屋の前で案内人んが止まる。なるほどここに目的の人物がいるってことか。はぁ……面倒だな。


「失礼する。青葉清二だ。暗音の代理で来たんだが」


 俺は、部屋に入りながらそう伝える。すると、部屋の中にいる2人の少女のうち、片方が俺の顔を見て、ふぅんとでも言いたげな不満そうな顔をした。なんだよ、文句があるんなら暗音に言ってほしいんだが。


「零士……じゃなくて、暗音の関係者っていうのは、う~ん、本当っぽいわね。まあ、零士は、昔っからこうだから代理が来ることは想定していたけど、まさか弟さんが来るとは……」


 おお、どうやら紳司と勘違いされているようだ。まあ、仕方がないか。この見た目で、祖父母だと所見で判断できるのはまずないだろうからな。いつものことだし。


「いや、俺は弟じゃないぞ。弟は紳司だ」


 そういうと、もう1人の、少し目つきの悪い美少女が椅子で脚を組みながら、ふぅんと言い、俺をジロジロと見た。


「じゃあ、父親ってこと?」


 その少女の言葉に、俺は何と答えたらいいだろうか、と考えたが、普通に答えればいいんだった、と言う結論に至った。


「いや、祖父だ。こっちが祖母。それで、暗音からは娘がいるから回収して恋ってことだったが、どっちだ?」


 雰囲気と言うか、性格からして、暗音の娘が、ここまで女の子っぽいはずがないので、脚を組んでいる美少女の方が娘だろうがな。


「あたしよ」


 予想通り、脚を組んだ美少女が手を挙げた。なるほど、しかし、なぜ、暗音の娘なのか。雰囲気は近いが、むしろ、もう1人の少女に近い感じがする。


「ちなみに、そっちが母さんの染井桜子。んで、父さんが青葉暗音よ。そういうわけで、一応曾孫に当たるのかしら?」


 ……え、父さんが青葉暗音?なんのこっちゃ。俺の理解不明な言葉が出てきたので、流石にいったん、頭が真っ白になったんだが。


「お、おう、……美園」


 こっそりと耳打ちするが、美園もフリーズ状態だ。何なんだよ、一体。これは、結構ヤバいんじゃないだろうか。不思議空間過ぎてついていけない。時代の流れが違いすぎる!


「まあ、いいか、んじゃ、とりあえず家に行くか。……それにしても、住人が増えるな……。まあ、紫苑さんなら断らないだろうけど。あまり迷惑をかけていると……

 と、そういえば紫苑さんで思い出したが、向こうの家の深緑さんがそろそろ出産の時期だったな。祝いの言葉くらいかけないといけないんだったなー」


 そんなことを呟きながら、俺は、フリーズした美園を引きずりながら、暗音の娘と言う少女を引き取ったのだった。

 今回はいつもの半分ほどの文量です。まあ、いろいろありまして。はい、そして、次の話で、ようやくこの章も終了です。

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