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《神》の古具使い  作者: 桃姫
前世編 SIDE.D
229/385

229話:紫雨零桜華

SIDE.0 SAKURA NO HANA


 あたし、紫雨(むらさめ)零桜華(れおか)は、紫雨零士支部長と紫雨桜子副支部長の間に生まれた娘だったわ。2人が26歳の時に生まれて、でも、そのあと、2人の仕事が忙しくなって、ニルカ・イグニット・トゥウィンカーに預けられて育ったのよ。ニルカに鍛えられながら育って、C支部に候補生として通って過ごしたの。しっかし、まあ、魔力適正でS、体力はニルカの修行のせいでS、知力もマイル……ニルカの妹のせいでS、と馬鹿げた数値をたたき出したせいで、妙な注目を浴びることになっちゃって、大変だったわよ。それも、なるべく両親のことがバレるのは避けたいからって言ってレオカ・イグニット・トゥウィンカーとして通ってたせいで余計に注目の度合いが高くてね。


 最強の少女、として一時期時の人になったけど、すぐにSランクに移って秘匿事項になって火消しされたからね、そこまで長期間にわたっては騒がれなかったけど。


 その頃の二つ名は【黒天の槍剣(マルチ・ブレイカー)】って言って、魔装大剣と魔装槍の併用だったわね。魔装大剣トツカと魔装槍ボルセリク。ほぼ最強の装備と言っていいラインナップを贅沢に使っていたわ。


 それから数年経って、あたしは、とある異常種と対面することになったのよ。「千年蟲」。そういわれる異常種と打ちあい、相打つ形でトツカとボルセルクは砕けてしまった。そして、その異常種の血を浴びたあたしは老い知らず(ノット・オールド)と言う特性を手に入れてしまったらしいのよ。尤も、そのことに気付いたのはそれから10年以上過ぎたころだったけどね。

 その年の誕生日に、あたしは20歳になり、その記念で両親に会ったわ。名目上は、先の異常種討伐の表彰ってことでね。会ってどのくらい話したかしら。たぶん、2、3時間ってところよ。久々の親子の会話っつっても、あたしと両親は、特に話すこともなかったのよ。それは仲が冷え切っていたからではないわ。分かり合っていたからよ。


 それから30年後、両親は2人そろって死んじゃったわ。あたしに会うことなく、ね。そうして、あたしは、父の昔の服を借り、黒衣の剣士として戦いに明け暮れることにしたのよ。剣の名は、【宵剣・ファリオルーサー】。ある怪物の爪で作られた剣、らしいわ。そんな化け物がいるとは思えないけどね。

 まあ、そんなことが会って100年ちょっとの時間を生きてきたってわけよ。


 そして、今日、この日、ありえないことが起こったのよね。

 あたしの拠点はC支部なんだけど、任務でD支部まで出ていた時に、今回の害蟲騒動が起こったのよ。D支部内で緊急連絡が流れたわ。


――緊急連絡、C支部にて害蟲の大量発生を確認、その数200オーバー、至急応援を。異常種も確認されているようなので、Aランク候補生以上の出動を要請します


 その連絡を聞いたときに、あたしは、いつものパーカーを羽織って【宵剣・ファリオルーサー】を腰に下げて、即座に、外に出られるように準備して、魔装空挺に乗り込んだ。


「魔っちゃん、あんたも出るの?」


 なれなれしく話してくるAランク候補生の言葉を聞き流しながら、あたしは、育った故郷とも言うべきC支部の安全のために逸る気持ちを抑えながら、下に広がる大地を見下ろしていた。

 ふと、胸に不思議な感覚が沸き起こったのよ。何かしら、この不思議な……何かがあるとしか言いようのない感じは。


「……父さん?」


 そう、あそこには父さんの感じがするのよ。確か、裕蔵先輩は【力場】って呼んでたけど、それを感知できるあたしは、そこにあるのが父さんの……それと混じり合うように存在している気配を感じたのよ。


「何、魔っちゃん、もしかしてC支部にパピーがいる感じのやつ?」


 そんな言葉を聞き流して、気が付く。父さんのが圧倒的過ぎて気づかなかったけど、母さんの気配もあるわね。でも、何かに蝕まれているように弱まっているわね。確か、母さんは黒減式魂波状操作装置で手術したことがあるって聞いてたけど、それと関係あるのかしら。


「ねぇ、魔っちゃんってばっ!」


 ああ、もう、うっさいわね。そう思った瞬間、下から何かが迫ってくるような気配を強く感じたわ。今までなんとなくにしか感じられなかった気配が、今、この瞬間から、なぜかはっきりと手に取るように分かるようになったわ。そう、魔装空挺が下りようとしている地点に、わらわらと集まってきたのよ。


「チッ、面倒ね……」


 ハッチを開けるのも面倒だし、ハッチを壊して、壊れたハッチに乗り、そのまま落下する。そう、ハッチを盾代わりかつ攻撃としても利用できるし、降りる途中に構えることができるという一石三鳥の手段よ。


九天(くてん)伐鬼(ばっき)ッ!」


 八つの斬撃が縦から降り注ぎ、最後の一太刀を横に薙ぐ技よ。それにより、8匹の害蟲を駆除して、それでもなお寄ってくる害蟲を相手しながら、父さんの戦っている方にある異常種の気配を感知する。向こうでは激しいぶつかりあいが起こってるみたいね。おそらく父さんが攻撃しているんでしょう……ッ?!


「気配がッ」


 一瞬、気配がぶれた。その瞬間、何かが激しくぶつかり合って気配が……【力場】が乱れる。一瞬、何も感知できなくなるけれど、すぐさまに、その乱れが収まる。やったのかしら……ってこれフラグね。


 そう、上に気配を感知する。しかも、何かを放ったみたいね。あたしは、周りの雑魚をなぎ倒しながら、父さんの方へと向かった。その放たれた何かは父さんが斬撃で消し飛ばしたみたいね。……、いえ、2個……いや3個、逃しているわね。しかも、父さんの初動が遅れているわ。これは……まずい。このままだと直接当たる前に破壊しても巨大な爆発が周囲を飲み込むわよ。


六葉(ろくよう)八絶(はちぜつ)ッ!」


 斬撃が飛び3つの爆弾を破壊した。それと同時にけたたましいまでの轟音が周囲に響き渡る。


――ドォオオオオン!


「あれは……『黒衣の魔剣(ブラック・セイバー)』さん」


 そんな【黄昏の姫騎士トワイライト・プリンセス】の言葉を聞き流しながら、父さんの方を見て、絶句する。紛れもなく女だったからよ。しかも黒いウェディングドレスとかいう完全に女の子丸出しな格好で、あたしの頭の中は完全に真っ白になったわね。


「れ……」


 父さんがその美しく艶やかな唇(ベールが隠しているのは鼻までなので唇は見えるわ)から微かに声が紡がれようとした瞬間に、さっきまで上にいた異常種が落ちてくるのを感じた。


「叩き斬るッ!」


 父さんがそんな風に言う。しゃーないわね。てかでしゃばるんじゃないわよ。


「故人が粋がってんじゃないってーのっ!」


 父さんと声を掛け合いながら敵と対面する。その巨大な体にまずは一撃、加えないとねっ!


「四方……四散ッ!」


 【宵剣・ファリオルーサー】で四方向から同時に斬り刻むような斬撃を異常種にぶつけるわ。こいつ、また爆発しようとしていたっぽいわね。

 その時父さんが横に並ぶ。ああ、なるほど、技を使うのね。なんとなく流れで分かるわよ。


「とっとととどめを刺すわよ!」


 分かってるっつーの。なんとなく、感覚で分かる血の流派を、流れるままにそのままm口に出しながら使うわ。


「「紫雨流・勝儀、【波紋鳴りやむその時まで】!!!」」


 無数の紫の淡い剣光が、刀身を包み、そのまま敵を殺すように紫色の斬撃を放つ。その瞬間に、まるで2人の斬撃が合わさったようにきれいな光を放ち、異常種を喰らい尽すかにように散らしていく。その中に貯めていた爆発エネルギーごと、ね。


「ったく、これで終わりかしら。雑魚狩りはまだ続いてるみたいだけどね」


 そう言って父さんは、剣を消したわ。どういう原理よ、それ。まあ、もともと規格外だったこの人にそんなん聞くだけ無駄かしら。あたしも腰に【宵剣・ファリオルーサー】を収めるわ。


「そんで、説明してもらいましょうか?何で、任務に来たら、父親が母親でここにいんのよ。母親は母親で雑魚狩りしてるし」


 あたしの疑問に適当な答えが返ってくるとは思ってないわよ。


「転生ってやつよ」


「相変わらず人間離れしてんわね」


 ほら、誤魔化されたじゃない。転生って何よ。絶対嘘……とは言い切れないのが怖いところよね。父さんって人間やめちゃった人間だし。


「あら、終わったみたいね」


 あら将歌じゃないの。なんだってここに……ってA支部からも援護が来ていたのよね、偶然来ていたってことかしら。


「お久しぶりですね、零桜華さん。……零桜華さんはともかく零士様……んんっ、零士さんは、今はネメシスの人間ではありませんからね、こちらで褒章を用意したいのですけれど、何か希望はありますか?」


 まだ雑魚退治は続いてるってのに呑気なもんね。まあ、将歌は昔からこうなんだけどね。それにしても父さんの望む褒章ね……。あるのかしらそんなもん。


「あー、じゃあ、黒減式魂波状操作装置で桜子に治療を頼む。体が変わったから、魂との隔たりもリセットされちまってるからな」


 と、父さんが大陸共通語で言う。あれ、じゃあ、さっきまでのって何語だったのかしら。なんか知らないけど聞き取れたんだけど。


 それから約1時間、害蟲は完全に退治されたて、母さんは治療に入ったわ。

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