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《神》の古具使い  作者: 桃姫
前世編 SIDE.D
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228話:絶望……そして

 昔々、あるところに強大な力を持った女がいたわ。その力は、あまりにも強すぎるがゆえに、世界を股にかけて旅をし続け、あちこちで、嫌われ続けた。でも、あるとき、その力に目を付けた逆月と言う男に手紙で呼び出され、最強たちが集う秩序を守るための組織の一員となり、そして、仲間が次第に集まってきた。


 そんな女が編み出した最強の流派、――流。彼女のあだ名を取ってつけられたその流派は、彼女以外に使うことはできないと言われていて、でも、全く前例がないわけでもないらしいわよ。


 そして、その流派の技が、なぜか、今、使える気がしている。全く知らないはずなのにどうしてかしらね。胸の奥に、感じてしまうのよ。だから、解き放つ。


「――流、奥義、―――」


 膨大な魔力が2振りから解き放たれて、「爆天落」を半分に吹き飛ばす。真っ二つに割れたその様子に、皆が息を呑んだ……けれど、あたしだけは違った。まずい、と思ったのよ。それも、今斬ったせいで爆発する、とかじゃなくて、別の要因があるわ。感覚、斬撃では直接触れて切っているわけじゃないから堅さ、つまり切れやすさ、というのが分かりづらいけど、それでも、おかしいと感じたの。めり込むように斬撃が入り、砂煙の瞬間に、【力場】が消失して、それと同時に真っ二つになった。一見、倒したように感じるからこそ、そこにある違和感があたしの胸に警告としてとどまっていたのよ。


 そして、砂煙の晴れかけた、その一瞬で、あたしは、違和感の正体に気付いた。そう、それは、抜け殻だったのよ。真っ二つに斬られたのはただの空っぽの皮……と言う表現もどうかと思うけど、外殻のような、そう脱皮した後のような感じだったのよ。


 斬撃の届く一瞬と、脱皮の一瞬が重なったのか、それとも意図的に脱皮できるのかは知らないけど、それであたしの攻撃を避けたのよ。

 下でも、左右でもない、そして、【力場】で感知したわ。遥か上空に跳ねた「爆天落」をねっ!


「■■■■■■■!!」


 咆哮と共に、奇妙な塊が数十個落下してくる。あれは……、まさか、爆弾……?!急いで剣を構えなおして、技を放ち爆弾を一掃しないとね。


「――流、天儀、――」


 二筋の光が全てを飲み込む勢いで天高く飛んでいく。さっきの奥義の数倍はデカいわね。そして、一つの爆弾に当たった瞬間、誘爆によってまとめてほとんどの爆弾が爆発したわ。ただ、その瞬間、あたしに油断が生まれた。


 3つ、たったの3つだけ誘爆を免れて爆発しなかったのがあったのよ。でも、それに気づいたのは剣を振るうには遅すぎる……いいえ、剣を振ってあたしに当たらないように爆発させることはできるけど、それでも爆発の衝撃で周りに被害が出てしまわないようにするには遅すぎる、そんなタイミング。あと5、4……刻々とリミットが迫る。


 2……1……


――ドォオオオオン!


 耳をつんざくような爆発がギリギリのところで起こった。衝撃もほとんど伝わってこないギリギリのところだったわ。でも……誰のアシストかしら。


「あれは……『黒衣の魔剣(ブラック・セイバー)』さん」


 静屡の言葉に、あたしは、その方向を見る。そして、その顔……いえ、顔は見えないけど、その雰囲気にその正体が瞬時に分かってしまった。

 黒いフードで顔を隠し、大きな透黒の大剣(あくまで大剣であって魔装大剣ではない)を持つ、そんな20代の女性(・・)。体も見えないはずなのに、それが分かってしまう。間違いようがなかったわ。


「れ……」


 あたしがそいつを呼ぼうとした瞬間に、上から「爆天落」が落ちてくるのを感じた。チッ、感動の再会を邪魔すんじゃないわよ。


「叩き斬るッ!」


「故人が粋がってんじゃないってーのっ!」


 あたしとそいつが声を掛け合う。その瞬間、フードを取ったそいつの素顔があらわになった。美しい黒髪、大きな瞳、そう、そりゃもう美人よ。なんたって……ってそんなことを言っている場合じゃないわね。てか、普通に生きてたら、えーと、100歳近いわよね、こいつ。どうして20代の姿を保っているのかしらね。平均寿命が20そこらってのは何だったのよ。あたしも桜子も長生きしたけど、周りはどんどん死んでいったし、耄碌もしたわ。でも、なんでこいつは100歳越えてこんなピンピンしてんのよ。超嫌なんだけど。てか、軽く平均寿命を延ばしまくりよね。絶対数も少ないこの時代で100歳越え……って。


「四方……四散ッ!」


 透黒の剣を自在に操り、四方向から同時に斬り刻むような斬撃が「爆天落」に向かって飛んでいくわ。なかなかやるじゃないのよ。


「とっとととどめを刺すわよ!」


 あたしの掛け声で双方が必殺の態勢をとる。それと同時に「爆天落」も爆弾を使う準備をしようとしていたみたいね。


「「紫雨流・勝儀、【波紋鳴りやむその時まで】!!!」」


 無数の紫の淡い剣光が、刀身を包み、そのまま敵を殺すように紫色の斬撃を放つ。その瞬間に、まるで2人の斬撃が合わさったようにきれいな光を放ち、「爆天落」を喰らい尽すかにように散らしていく。その中に貯めていた爆発エネルギーごと、ね。


「ったく、これで終わりかしら。雑魚狩りはまだ続いてるみたいだけどね」


 そう言って剣を2本ともあたしは腰に収めた(しまった)わ。合わせて、剣を腰に収める。


「そんで、説明してもらいましょうか?何で、任務に来たら、父親が母親でここにいんのよ。母親は母親で雑魚狩りしてるし」


 そう、この母だの父だの言いだしたのは頭がおかしいわけじゃなくて……いえ、少し頭の弱い部分もあるけれどそういうことではなくて、あたし、紫雨零士と染井桜子との間に生まれた娘、「紫雨零桜華(れおか)」なのよ。

 え~、遅い上に短いという最悪な今回ですが、まあ、こっちが課題で忙しすぎるっていう言い訳があるのはおいておいて、それでもやっぱ慣れない環境に慣れたとたんに、課題がドバァー状態なのは、慣れないうちは「慣れてないからこのくらいにしてやるか」的な思考が向こうにも働いているからなわけで、そのリミッターがなくなった今こそヤバイのですよ。というわけで、更新速度低下中の桃姫でした。

 もしかしたら土日更新基本になって、平日はできたら……みたいになるかもしれませんが、なるべく今まで通り毎日を続けていこうと思っています。

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