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《神》の古具使い  作者: 桃姫
前世編 SIDE.D
216/385

216話:プロローグ

SCENE.A Long Time Ago


 黎明(れいめい)(おう)。かつて、そう呼ばれた男が、存在した世界。それは、どこのことだろうか。テルミアの奇蹟……そう、魔力伝達物質と言うものが存在する世界。その世界は、あることが原因で、異形の存在が、その世界を跋扈するようになったという。


 幽賊害蟲(ゆうぞくがいちゅう)と呼ばれる怪物たちが人類を蹂躙する中、その世界で唯一の反逆者となり、世界に光をもたらした黄色の王、それこそが黄羅(きら)


 極東の島国、その島国で一番大きな山の下には、高質の魔力伝達物質が眠っていた。その国の人間には、魔力伝達物質と同じ、色に区分された人間たちが生まれる。その1人が黄羅だった。


 そして、その世界、それから赤羽、黒減、桃咲など、鬼神の如き存在が点在した。そんなのちに、黎明の王から100年以上が経った時代に生まれ落ちた男がいた。


 その男、若くして才に目覚め、漆黒の剣天と呼ばれた。しかし、その神童も、ある事件を境に表から姿を消した。


 それから様々な事件が巻き起こり、落ちこぼれとして名の知れた男は、……かつての全盛のころの自分、漆黒の剣天の力を徐々に見せ始める。しかし、あくまで彼は漆黒の剣天であることを、妹を守れなかった自分のことを否定し続けた。

 ゆえに、一人の女は、その男を「紫天の剣光」と、そう呼んだのだった。そう伝説の男、「紫天の剣光」、その名は……


――紫雨(むらさめ)零士(れいじ)


 紫色の血統、その本流にして、その家の力を色濃く継いだ、化け物と揶揄される存在である。そんな彼が、愛した女、その名前こそ、


――染井(そめい)桜子(さくらこ)


 2人は、稀代の支部長副支部長として、世界を変革へと導いたとされている。その裏には、彼らを支えた仲間と部下、先輩そして、後輩たちがいた。


 新型魔装太刀の性能を世に示した藤堂(とうどう)百合(ゆり)。その新型魔装太刀の開発責任者であったトーマス・エジソン。鋭い観察眼と魔力を見通す眼を持つ(たちばな)璃桜(りお)。咲山神道の末裔の神道家の人間である神道(しんどう)(おうぎ)。赤羽家の人間でありながら家の暗部にあまり触れずにいたが実力は折り紙つきの赤羽(あかは)獅音(しおん)。魔力増幅装置である「ナハト」を内蔵した魔装人形「風林火陰山雷」を操る人形師・椎名(しいな)厄魔(やくま)。ヨーロッパ旧貴族の末裔であり天性の才能を持つサーリャ・キル・キリエ。狼男の末裔とも噂される貴族の末裔ルッサッド・クロー。後の夢幻騎士の1人・熾神(さかがみ)裕騎(ゆうき)。魔砲台大砲と呼ばれ後方支援に特化したシルフィー・ラ・マーズ。戦闘以外の事務のサポートとして非常に優秀だったクレシア・オルビア。支部長に就任した零士を支えた双子の女性・フレビア・ランカー、スーザン・ランカー。


 そして、次代を担った【桃色の覇王】姫野(ひめの)結音(ゆいね)。G支部にて、魔装籠手を用いた白兵戦を得意とし、魔力抜きの身体能力のみで害蟲を倒した【真紅の武神】植野(うえの)瑠治(りゅうじ)。夢幻の騎士王と謳われたシャーロン・クロイツァー。白蘭の天光と謳われたクルクリー=ベンジャミン。


 そのほか、アマリリス……朱頂蘭と呼ばれた少女や、赤き剣神と謳われた赤羽(あかは)音音(ねおん)


 数多の者たちが彼らを支えた、その結果により、その世界はよりよい方向へと傾いたのだ。そして、その「漆黒の剣天」「黎明の王の再来」「紫天の剣光」と呼ばれた彼は、過去に転生する。


 蒼刃(あおば)蒼衣(あおい)八斗神(やとがみ)火々璃(かがり)の間に生まれた双子の片割れである八斗神(やとがみ)闇音(あんね)と言う女に。


 蒼刃には……もとい、三神の家系には転生と言う概念が多くある。しかし、それも基本的に、蒼刃に血が流れる者同士の転生だ。しかし、転生とは、波長が近ければ起こりうる現象なのである。


 八斗神闇音は、幼くして両親を亡くした。

 紫雨零士は、幼くして両親を亡くした。


 八斗神闇音は、叔母に育てられる。

 紫雨零士は、師匠に育てられる。


 八斗神闇音は、幼くして天才と呼ばれた。

 紫雨零士は、幼くして神童と呼ばれた。


 そう、よく似た運命を辿る2人はあるべくして似た運命を辿ったのだ。運命と言うのは、不思議なものであり、それでいて、必然性を持ったもの。アカシックレコードに刻まれ因果の流れに逆らうことなく、その因果の流れが似た者の魂は惹かれあう。蒼刃は、剣の一族と言う概念を持つことで、剣に絡む人生が深くその運命に刻まれることで、魂が惹かれあいやすくなっているのだ。


 たとえば、生まれながらに天使に縁のあった蒼刃蒼衣と七峰蒼子は、転生後に、青葉王司は相棒として、七峰紫苑は同じ名前の縁のあるものとして、天使と出会っている。そして、ゆかりのある自分の剣とも出会う、それこそが、運命の必然性。

 流れに逆らうことはできない……と言うわけでもない。例えば、だが、


 八斗神闇音は、弟を失うことはなかった。

 紫雨零士は、妹を失った。


 運命の流れを変えればこうなっていく。つまり、前世とは違った未来を歩んでいけるのだ。

 魂量数値、などと時空間統括管理局では呼ばれている目安の数値があるが、確かに、それも転生に関与している。しかし、今言った運命の流れの類似性が無ければ、そもそも魂量数値以前に転生することすらできないのである。


 そして、三鷹丘、約束の地、蒼き神の眠った塔が封じられた場所。古くからその地には、多くの神の恩恵が漂っていたが、二度の塔の封印解除によって、眠っていたその力が溢れだし、その地に深くしみこみ、周囲に広がっていっている。その結果、恩恵の範囲が広がり、古より神が与えてきた力を持って生まれてくる人間が増えたのだ。

 そして、それだけでは済まなかった。蒼き神は蒼き血族を呼び寄せる。蒼き神の血族は、その地に集う。転生と言う形を持って、その場所へと。

 それだけならば、きっと、蒼き神の……青葉(あおば)暗音(あのん)と言う少女に何かが転生して宿ることはなかっただろう。

 果てしない偶然、あるいは、運命の必然性によって、その世界にいた《終焉の少女(マリア・ルーンヘクサ)》。その影響により、彼女に……かつての彼女に縁のあった魂までもが呼び寄せられるということが無ければ。


 そう、蒼き血族とマリア・ルーンヘクサの前世の予備と言う2つを併せ持つ、八斗神闇音を、そういう理由があったからこそ、宿してしまったのである。


 そして、その魂につられるように、――染井桜子の魂すらも呼ばれたのである。


 それゆえに、今、この時代、この三鷹丘と言う地に2人の魂が集まったのだ。


 黒と蒼と紫に彩られた少女は、2つの前世を持ち、そして、刃の神と刃の龍皇を宿す。そんな少女の前世に関する話。それを今から記すとしよう、彼女たちの言葉を持って。

 え~、書き溜めと言う概念を持たないアホこと桃姫です。マジな話、時間が無いです、はい。このまま、何話か書き溜まるのを待っていると数か月単位で待たせる羽目になりかねないので、あたしはできたら投稿するスタイルで行きます(←前からそう)

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