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《神》の古具使い  作者: 桃姫
聖剣編 SIDE.D
170/385

170話:龍への導き

 そういうわけで、あたし等は不知火家へと十月の運転する車で向かって、不知火家に着いた頃には10時を回って、11時ちょっと前だったわ。料理は既に用意させているとのことで、それぞれの部屋に荷物を……と言っても、鞄くらいしかないんだけど、部屋に置いて、食堂にまっすぐ案内されたわ。


 そして、既に席には豪華な料理が並んでいた。本来ならコース料理のように順々に出していくらしいけど、流石にパーティでそんな面倒なことをしたくない、とのことで、既にテーブルに並んだ状態ってことよ。


 主に多いのは肉料理ね。まあ、男女比で言えば、男の方が多いので仕方がないってことよね。メイドは一緒に食事をしないってことで、十月と瑠吏花は給仕をやってるから、元々瑠音(るおん)の分、男が多かったのに、さらに男の比率の方が多いのよね。まあ、あたしも肉の方が好きなんだけど。

 てか、基本的に、前世が肉ばっかの世代だから。アルレリアスの中でも陸地側に住んでいると魔物の肉ばっかになるのよね。魚なんて全然だったし。その影響かどうかは知らないけどあたしは肉の方が好きよ?


七鳩(なはと)君以外はテーブルマナーもしっかりしているようだね」


 などと不知火が言うのも当然。あたしや輝は前世で蒼子さんにその辺は鍛えられたし、讃ちゃんの前世はお金持ち。テーブルマナーくらいは出来ないとね。


「怜斗はそういうのとは基本的に無縁だったからね。それはそうと、監視カメラってあれは、防犯用なの?」


 この食堂はおろか、ここに来るまでの道に大量に監視カメラが仕掛けてあったことが気になってたからあたしは不知火に聞いてみたわ。


「む、気づいていたのかい?」


 不知火は少し驚いたような表情をしていたけど、あたし等暗殺者の間で顔を見られるのは御法度だからね。流石にカメラはなかったけど遠方からの監視用の水晶を使う魔法だってあったから、そういうのを見つけられるようにしていたしね。


「カメラはここまでの道に16個。食堂内に4個」


 怜斗がそう言った。けど残念ね、その数は間違ってるわよ。あたしはもうちょい見つけてたもの。


「怜斗、廊下は21個、食堂は5個よ。それぞれの角に死角にならないようにしてあるし柱の影もよく見るとカメラあるのよ?あと、食堂はそこ」


 そう言ってシャンデリアを指差すあたし。角に1つずつ。そして中央のシャンデリアに1つ部屋全体を見渡せるようになっているのよ。


「さすが。せいかい」


 十月が目をパチクリとして驚いていたわ。まあ、でも普通に分かるわよね……。いや、讃ちゃんとか輝は気づいてなかったっぽいけど、生きてきた世界の違いってやつかしら……。でも紳司は気づけそうよねぇ。


「そら、ラングバルデの迷殿で酷い目にあったし」


 第三都市(ラングバルデ)にある地下迷宮、「ラングバルデの迷殿」には、幾多の罠があって、その奥に隠れている奴等の暗殺を頼まれたときなんて、顔が映れば、それを利用して暗殺者の顔を一気に広められるから、絶対に敵に顔を見せられないし。一歩間違えれば世間的にも物理的にも死亡する場所を乗り越えるのには一苦労とかそんなレベルじゃなかったからね。


「ラングバルデ……?何だい、それは」


 不知火が何言ってんだコイツ的な目で見て、聞いてくるけど、そんなことを言ったってねぇ。世界も時間も違う場所の話しだし。


「え、あの第三都市(ラングバルデ)の地下迷宮ですか?確か、あれって地図があっても道に迷う仕様で設計者以外はクリア不可能って言われてませんでしたっけ?」


 讃ちゃんは知ってるみたいね。輝も頷いてるから知ってるんでしょう。怜斗は嫌な顔をしていたけど、まあ、あたしと一緒にあそこに潜ったからね。


「苦労したわよ。ああ、そういえば、第二都市(レグヴィンス)にある、摩天楼(レグヴィアンセ)が最期の場所だったわよね。あそこ、最後、4階以外がつぶれてて平屋みたくなってたんだけどさ、どうやっても開かったのよね」


 ぺシャンってつぶれたのに、4階だけ残るって異様よね。どういう仕組みなのかしら。そこが気になってたのに、あたしの時代じゃ解明できずに終わったのよ。


「破滅の龍……グレート・オブ・ドラゴンが言ってたな。自分でも破壊できないって」


 輝がそういう。破滅の龍、ね。懐かしいわね、いるって噂にはなってたけど実在してたってことよね。


「破滅の龍……?何だそりゃ」


 怜斗がそんな風に言う。あんたねぇ……、流石にそれを覚えてないってのはおかしな話でしょ。


「一時期流行ってたじゃないのよ、摩天楼(レグヴィアンセ)の4階には破滅の龍がいるって。……ん、でも流行ったのは数日だけだった気がするわね」


 それにしてもグレート・オブ・ドラゴン。偉大なる龍、ね。何かが、引っかかる気がするんだけど……よく分からないわね。


「いや、全く記憶にないんだけど」


 怜斗はやっぱり覚えてないみたいね。どうして、記憶していることに差が生じているのかしら。ただ単にこいつが馬鹿ってことを差し引いてもおかしいと思うのよね。それに、たった数日しか流行らないってのも。


「グレート・オブ・ドラゴン……ッ!悲しき龍の皇女のことかっ!」


 瑠音(るおん)が目を見開いて驚いていたけど、部室であたしの話の時に出てたやつよね。


――そう、淋しき龍皇


 え、今の声は……、あたしの中で聞こえたわよね。どういうことよ。グラムとは違う、女の声。


――夢幻刃龍皇グレート・オブ・ドラゴンと呼ばれた龍の皇帝


 さらに聞こえる。誰、どういうことよ。グラム、あんたにも聞こえてるでしょ、どういうことよ?


――刃の龍にして、忘れ去られた悲しき龍の皇女


 誰なのよ、アンタは……。あたしの中に、何でいるの。

 その瞬間、あたしの目の前に、巨大な龍の幻影を見た気がした。巨大な、そして、黒い鱗を持つ龍。その鱗は鋭く尖っていて、触れば全てを切り刻みそうな、それでいて美しいもの。


――あたしは、グレート・オブ・ドラゴン


 なるほど、この声は、この龍なのね。そして、破滅の龍、アンタだったの。で、どうして、その化け物があたしの中にあるわけ……?


――数列種、第六龍人種と呼ばれる存在として生まれたものの宿命だ


 第六龍人種。裡に龍を内包して生まれてきたものだったかしら。あたしがそれだって言うの?


――刃の化身。刃の《古具》使いであるからだ。それゆえにあたしを内包して生まれたのだよ


 でも、あたしの刃……《黒刃の死神(ブラック・エッジ)》は、グラムの力を体現しているはずよね。それじゃあ、歴代の《黒刃の死神(ブラック・エッジ)》の宿主……あたしの予想では未来の人間だけど、そいつ等にもアンタが宿ってなきゃおかしくないかしら?


――刃の《古具》使いであり、そして、滅びの龍を内包した親族を持っているからこそだ


 滅びの……龍。アンタのことじゃなくて、れっきとした化け物を宿した奴があたしの親族にいるってことなの?


――蒼刃(あおば)(ひじり)。奴もまた、神に選ばれた者さ


 聖大叔母さん?!それに、神に選ばれたって、さっき、ブリュンヒルデのことをクリームヒルトがそう言ってたわよね。


――いずれ、知ることになるだろう。その身に刻まれた運命と言うやつを……


 それっきり、無反応のグレート・オブ・ドラゴン。どうやら、もう出てこないみたいね。グラム、あんた、キチンと反応なさいな。


「ん、どうかしたのか?」


 グラムは、何事もなかったかのように、あたしに応じた。ってことは、さっきのは聞こえてなかったのかしら。夢幻の力、とやらの影響なのかしら、それとも別の何かが作用していたのかしら。それはあたしには分からないわね。


「まあ、いいわ。少し、お手洗いを貸してもらえるかしら?」


 あたしは、そう言うと、席を立って、十月に聞いたトイレへと向かうわ。ちょっと、1人で考えてみたかったし、トイレに行きたかったのも事実だしね。


「へぇ、広いじゃない」


 廊下をいくつか曲がって、客用のトイレに入る。中々広めのトイレで、洗面所やナプキンなどのゴミ入れ、メイク落とし用の溶液なんかもあるわね。へぇ、一々風呂場に行かなくてもここで全部済むってことね。

 便座も温かいし、温水洗浄もできる。あ、ビデってのは、男には分かりづらいでしょうし、何のためにあるのって思うのも多いでしょうけど、所謂「おしり」の前バージョンって考えてもらえればいいと思うわ。海外とかでは、便器の横に設置されてることも有るんだけど、日本では、温水洗浄便座が流通してからそれで出来るようになってるのよ。

 表現を真面目っぽく書くけど、排尿とかあとセッ……性行為の前とか後とかに洗うのに使うんだけど。あ、あとは、中……って表現で分かるかしら、生理の後とかに臭いとかキツイこととかあるからそれを洗浄するために使い切りのやつとかも売ってるわよ。


 ……なんで、あたしはビデの説明なんてしてるのかしら。まあ、いいわ。


 便座に座って、……あー、()(もの)も嫌よね……。ナプキンをゴミ入れに入れて……ふぅ。







 スッキリした。さて、と、パンツをあげて、っと、ふむ、ビデのことを考えていたら、あの変な龍のことを考えてる暇はなかったわね。


 そう思って、ドアを開けた瞬間、あたしの目の前は――暗転した。

 え~、と言うわけで、聖剣編SIDE.Dは特に戦闘もなく、終わりました。何か久々にイチャイチャしたのとかを書いてた気がしたので、イチャラブと言う感じでしょうか。次は、龍神編SIDE.GODです。


次章予告

――輪廻の力を手にした3家。その中に滅んだ1つの家があった。

時空を切り裂き、時空を産み、時空を壊す、そんな剣を軸に、その滅んだ1つの家の魂は1つの存在へと変わる。

――龍神

その存在はそう呼ばれた。かつて8人の龍を宿した子供を集め、無事に育て上げたその存在は今、ある組織と密接に関わっている。

――チーム三鷹丘・異世界探索拠点《龍神の巣》

生徒会役員となったものはそこを訪れ、龍なる者と会うのだった。

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