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15.そうだ走ろう!

15話です。予約投稿してみました。

 先日は銀髪の女の子や妹にいろいろな目にあわされた俺だけど。


 俺はあの後考えた。

 確かに俺は、妹より弱い……。

 だがしかし、それは今は弱いだ。


「次勝つには要は強くなれば、良いだけ」


 今日は平日、妹は学校に行っている。

 昼間は基本的に暇な俺は、母さんの目を盗んで外に出て体力作りをしようと思う。

 力勝負で負けたのだから、部屋で腕立て伏せでもしてれば良いと思わえるけど……。

 体力も必要だと思うから、まずは外でランニングを始めようと思う。


「はっ、はっ、はっ……」


 今日の空も晴天で、ランニング日和だと思う。

 頬に感じる風が、気持ちいい。

 少し人の視線を感じるけど今は”強くなる”という目標がある俺には、気にならない。


 少しばかり街中を走っていると、突然腕をぐいっと掴まれる。

 なんだと思い立ち止まり後ろを振り返ると、マオさんが顔を青くして息切れを起こしていた。

 俺が止まったので、マオさんも走るのを止めて……俯いて息を整えている様子。


 初めて会った時より大分綺麗な髪になった、腰まで伸びた色素の薄い髪の毛が風でゆらゆらと宙に揺れている。


「ちょ、ちょっと待って……はぁ、はぁ……小守さん」

「あれ、マオさん何時の間に……こんにちわ」

「はぁ、はぁ、こ、こんにちわ小守さん。こんなところで会うなんて、奇遇だね……はぁ、はぁ」


 マオさんは膝に肌白い小さな手を置いて、肩で息をしている。

 はぁ、はぁとマオさんが荒い息をするたびに……服を内側から押し上げた大きな胸をたぷんたぷんと上下させているので、変な気持ちになりそうだから俺はそこに意識が行かないように別のところを見る。


 ふと、長い髪の隙間から見えるうなじに、汗が薄らと吹き出ているのが見えた。

 うなじフェチじゃない俺だけど……マオさんのしっとりとしたうなじが色っぽく見えて少しどきっとする。


「ふぅ……ところで、今日は走ってどうしたの?急ぎの用事?」


 マオさんのうなじを見ていたら、呼吸を整えたらしいマオさんに質問された。

 どうやら体力作りのために走っていたら、急ぎの用事があるために走っているとマオさんに思われているみたい。

 まあ、俺は普段着だし……普通はそう思うよね。


 俺を見上げるマオさんは、相変わらず無表情だけど……別に表情が無いわけじゃない。

 この前家で少しお話をした時に、分かり辛いがちゃんと表情が変化している。

 ただ……その変化に気がつくためには、じっくりとマオさんの表情を見ないといけないので。


「小守さん……その……あたしの顔をじっと見られると恥ずかしい……うぅ」


 じっとマオさんの表情の変化に注視していたら、両手で顔を覆って恥ずかしいと言われてしまった……うん、ちょっと集中し過ぎたね。

 でも、恥ずかしそうに頬を紅潮させたマオさんは……可愛く思えた。


「実は身体を鍛えるために、まずは走って体力作りしているんだ」

「小守さんは男の人なのに、珍しいね。何かあったの?」


 たぶん驚いているマオさんは、俺の顔をじっと見て最近何かあったのか聞いた。

 この世界の男は身体を鍛える事は稀なのかも知れない、力は女性の方が強いんだから男がそもそも鍛える必要が無いのかも。

 俺は頬を指で掻いて、マオさんの質問に答える。


「妹に力勝負に負けて、兄として悔しかったから鍛えようと思って」

「……小守さんにも、妹がいるんだ」

「マオさん?」

「ううん……小守さんは、妹さんに勝ちたいから鍛えてるの?」


 一瞬……マオさんの雰囲気が、怖くなったような気がした。

 もしかしたら俺はマオさんに、気に障る言葉を言ってしまったのだろうか?

 その証拠に腕を掴んでいるマオさんの手が、さっきより強く掴んでいる気がする。


「うん、そうだけど……鍛えているのは、それだけじゃないんだ」

「それだけじゃない?」


 この世界は女性が強い、引き篭りの俺では勝てないほど強い……先日それを身を持って思い知った。

 もし外で襲われでもしたら……このままでは俺は、抵抗できないだろう。

 抵抗できたとしても、ただでは済まない筈だ。


 だから自由に動ける時間がある内は、少しでも良いから鍛えて置こうと思った。

 襲われた時に、自衛できるように。

 まあ、ただ……疲れて、やめてしまう可能性もあるけどね?俺、引き篭もりだし。


「もし襲われた時のために、せめて反撃出来るように鍛えておこうと思って」

「だから男の小守さんは、身体を鍛えてるんだ?」

「そうだよ」

「でも……小守さんが思ってるほど、女性は男の人が少し鍛えれば勝てるほど甘くないよ?もし……小守さんが女性に襲われたら、戦おうと思わないで逃げて欲しい。あたしからのお願い」


 俺より身長が低いマオさんが、俺の顔を背伸びして覗き込んでそう言った。

 近くで俺の顔を見る、マオさんの顔は俺をとても心配している様子だ。

 とても戦うなんて……言える雰囲気じゃない。


「うん、マオさんの言うとおりにするよ。もし、襲われたら逃げるから」

「約束だからね?あたしは、小守さんが心配なんだから」

「わ、分かったから……」

「絶対だよ?」


 マオさんが近い!

 近すぎて俺の腕にマオさんの柔らかい胸が当たってるから……!

 マオさんの妹より大きい胸は、俺の腕に当たり押しつぶされて大きく歪ませる。


 俺は今腕を掴まれてる状態では、マオさんから離れる事は出来ないので……じっとしている事しか出来ない。


「あ、ごめんね?」


 俺が身体を硬直させて黙ってしまったのに気がついたマオさんは、今の自分の状態に気がついたみたいで……ばっと直ぐに俺から身体を離した。


☆ マオ


 今日はまだネトゲにナナシキさんがログインをしていないので、暇だからあたしはお菓子を食べながらネットの掲示板を見ていた。


「ぽてちは今の内に、食べておかないと……じゃがいもが不足してるって言うし、もぐもぐ」


 主にあたしが見るのは、あたしが住んでいる街の掲示板だ。

 最近あたしは、ネトゲで知り合ったナナシキさんとは別の男の人とリアルのこの街で知り合った。

 男の人の名前は、小守コモルと言う人だ。


「小守さんの目撃情報は……まだ無いか」


 小守さんは男の人には珍しく、家の外に外出している事が多い。

 初めて出会った時も、コンビニでお菓子を買っていたし……次に出会った場所は、公園のベンチ前だった。


 だからなのか……いや、当然なのかもしれない。


 ただでさえ、この街に住んでいる男の人は少ないのに……外出している男の人なんて、未だに独り身の女性が狙わない訳がない。


 この前も中二病のマンガ家に、住宅街で絡まれていたのだ。

 小守さんには少しは自分が狙われている自覚を持って欲しいと、小守さんを外で見かけるたびにあたしは常に思っている。


 なんだかあたしは、危うい小守さんがほっとけないみたい。

 ナナシキさんの事も、気になっているけど……小守さんの事も気になるのだあたしは……。


「んんっ?もしかしてこれは、小守さんなのかな?」


 掲示板のページを更新すると、普段着の若い男の人が街の中を走っていると言う目撃情報が書いてあった。

 その目撃情報を見て、あたしは初めて小守さんに出会ったコンビニでの事を思い出した。


 何だか急いでいたらしい小守さんは、コンビニを出た後……すごい勢いで走って帰ってしまったのだ。

 走って帰る小守さんの印象が今でもあたしに残っているので、その目撃情報を見た時にもしかしたら小守さんなんじゃないかと思ったのだ。


「もし、小守さんだとしたら会いに行かないと……目撃情報は街中だから、もしかしたら何か困っているかもしれない。あたしがしっかり付いてて上げないと、この前の中二病みたいな危ない女に絡まれて困る事になるかも……」


 あたしはパソコンの電源を落として、前かがみに席を立つ。

 最近は身なりにも気をつけてるので、用事が出来てもすぐに出掛けられる格好なのだ。


「やれやれ、小守さんは不用心なんだから……男の人が一人で街中に居るなんて、独り身の焦った女に襲ってくださいと言っているみたいだよ?だから襲われないように、せめてあたしが一緒に居てあげるからね小守さん」


 部屋の電気を消して、扉のノブを回す。

 外の光が目に入り、少し目を細める。

 ああ、今日も外は晴天なのか……引き篭もりのあたしの肌には、きついな。


「さて、どこに居るかな小守さんは?あたしの勘が、小守さんを見つけられれば良いけど。そんな都合の良い展開は、期待できないし……ここは科学の力に頼る事にするよ」


 あたしはスマホを取り出して、ネットに繋いで掲示板の目撃情報を確かめる。

 目を離した隙に、小守さんの目撃情報が沢山寄せられていた。

 掲示板は、大変にぎやかになっているようだ。


「やばいな、小守さんを狙っていそうな女が何人かいる……その中に中二がいたけど、今は外に出れないみたいだ。まあ、やばいのが外に出れないのは行幸だけど……まだ安心できる状態じゃない」


 中二を初めて見た時、あれはなんかやばいと思った。

 女の勘と言えば良いのかな?

 とにかく中二が動いていないのなら、少しは楽かもしれない。


「少し急がないと、他の女に小守さんが接触する前にあたしが小守さんにたどり着いて見せる」


 あたしは地面を強く蹴り、未だに目撃情報が更新される掲示板を見ながら小守さんの元に向かうために。


銀髪の女の子は、忙しいらしい。

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