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漂流ロックバンドの異世界ライブ!  作者: 桜餅爆ぜる
第二章『ロックバンド、セルト大森林でライブをする』

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十八曲目『決意と、警鐘』

 ケンタウロス族とエルフ族の諍いに俺がキレてから、一日が経った。

 あれからあの時一緒にいたエルフ族やリフは、俺を怒らせた申し訳なさからなのか遠巻きにチラチラと目を向けるだけで、話しかけることはなかった。

 少しは反省してくれたらいいんだけど。


「タケル殿、昨日は申し訳なかったのう」


 木の根っこに腰掛けて空を見上げながらぼんやりとしていると、ユグドさんが声をかけてきた。


「ユグドさんが謝ることじゃないですよ」

「それでも、じゃ。同族の失態は、族長であるワシの責任じゃよ」


 ユグドさんは申し訳なさそうに頭を下げると、ため息を吐いて俺の隣に座る。


「ワシはのう、本当はケンタウロス族と仲良くして欲しいんじゃよ。じゃが若い者は皆、ケンタウロス族をよく思っていない」

「……どうしてそんなに仲が悪いんですか?」


 俺がそう尋ねると、ユグドさんは遠くを見つめながら語ってくれた。


「たしかあれは……ワシがまだ若く、族長になって間もない時のことじゃ。それまではエルフ族とケンタウロス族はこの森に住む仲間として、仲がよかったんじゃ」


 ユグドさんが若い時って、何百年も前のことか。かなり昔からの確執なんだな。

 

「ある時、この森に凶悪なモンスターが住み着いてのう。ワシらはケンタウロス族と協力し、どうにか倒すことが出来たのじゃ。その時は両種族で健闘を称え合っていたのじゃが……ふと、とどめを刺したのはどちらなのか、という議論が始まってのう」

「え? もしかして……それで?」

「そうじゃ。実にくだらない論争じゃった。ワシはどちらでもいいだろうと言ったのだが、その議論はどんどんと広まっていってのう」


 それが、今のエルフ族とケンタウロス族の仲違いの始まりなのか。

 ユグドさんには申し訳ないけど、本当にくだらないな。その確執が、今の今まで続いているなんて……。


「戦争の始まりなんて、意外としょうもないことだったりするんじゃ。じゃが、まだ若かったワシにはそれを止めることが出来なかった……今でも後悔しておるよ」


 そう言うとユグドさんは額に手を当てて首を横に振る。

 今のユグドさんだったらすぐにその論争は止められたかもしれないけど、族長になったばかりの当時のユグドさんには難しかったんだろうな。

 なるほど、とりあえずどうして仲が悪いのかは分かった。最初の火種は小さかったけど一気に燃え上がり、今でもそれがくすぶってるんだな。


「……どうにかしたいなぁ」


 ふと、頭で思っていたことが口から出てしまった。

 それを聞いたユグドさんは小さく笑う。


「ほっほ。その気持ちだけで嬉しいわい。しかし、これはワシらエルフ族とケンタウロス族の問題。どちらかが歩み寄らないことには、何も変わらんじゃろう」


 たしかに、俺が口出すことじゃないかもしれない。余計なお世話なのかもしれない。

 でも、俺は……エルフ族とケンタウロス族、どちらもいい種族だと思っている。だから、仲良くして欲しいんだけどなぁ。

 ユグドさんには申し訳ないけど、俺に出来ることがあるならこの問題をどうにかしてあげたいな。


「あ、タケル! こんなところにいた!」


 そんなことを考えていると、俺を探していたのかやよいが声をかけてきた。ウォレスや真紅郎、サクヤとキュウちゃんも一緒だ。


「どうしたんだ?」

「どうしたんだ、じゃないでしょ。ほら、ケンタウロス族の集落に行こうよ」

「……は? なんでだよ」


 どうしてケンタウロス族のところに行くのか分からずに首を傾げると、サクヤを抜かした全員が呆れたようにため息を吐いた。

 キュウちゃんまで、一体なんなんだよ?


「どうせタケルのことだから、エルフ族とケンタウロス族をどうにかしたいって思ってるんじゃないの?」

「ハッハッハ! タケルの考えてることなんて、お見通しだぜ!」

「そうそう。タケルはそういう性格してるからね」

「きゅきゅ! きゅー!」


 そ、そんなに分かりやすいのか、俺って?

 唖然としていると、サクヤが俺のことをジッと見つめてくる。


「……タケル」

「どうした? また腹減ったのか?」

「……大丈夫。音楽の力なら、どうにか出来る」


 サクヤの言葉にきょとんとする。真っ直ぐに俺を見つめるその瞳は、言葉以上に意志を伝えてきた。

 エルフ族とケンタウロス族の問題。サクヤは音楽の力があればどうにか出来ると、本気で思っているようだ。

 サクヤは音楽の力を信じている。音楽を知ってまだ間もないのに、信じているんだ……俺以上に。


「……ははっ、そうだな。ありがとう、サクヤ」


 嬉しくなり、サクヤの頭をポンポンと撫でるとまるで猫みたいに目を細めていた。

 よし、サクヤのおかげで覚悟が決まった。


「ユグドさん。すいません……やっぱり俺、どうにかしたいです」


 ユグドさんに自分の考えを話す。


「たしかに俺は、両種族には関係のないただの人間です。でも、俺はどっちとも仲がいいし、どっちも優しい種族だって知ってます。だから__俺は、やっぱりこの問題をどうにかしたいです」


 余計なお世話? 上等だ。

 余計なお世話だろうが、関係ない。俺は、やりたいようにやらせて貰う。


「それに、どっちも音楽を好きになってくれました。だったら、大丈夫です! 絶対に、仲良くなりますよ!」


 音楽を通して、両種族の仲を取り持つ。エルフ族もケンタウロス族も、ライブを、音楽を好きになってくれたんだ。


「あたしもどっちも好きだから、出来るなら仲良くして欲しい!」

「そうそう! 音楽好きなら仲良くなれるさ! 問題ないぜ(ノープロブレム)!」

「争いは何も生まないからね。ボクも、仲良くして欲しいって思います」

「……うん」

「きゅー!」


 俺の言葉に全員が賛成してくれた。

 ユグドさんはポカンと呆気に取られていたが、すぐに「ホッホッホ!」と笑い出す。


「本当に、純粋な心の持ち主たちじゃのう。タケル殿……よき仲間をお持ちじゃな」

「__はい! 最高の仲間ですよ!」


 はっきりと言い放つと、ユグドさんはまた笑い出した。

 そして、ユグドさんはサクヤの方に顔を向ける。


「ダークエルフ族……サクヤ、と言ったかのう?」

「……うん。ぼく、サクヤ」

「ふむ。お主もワシらの問題を解決するために動いてくれるのか? ワシらエルフ族は、お主に対して酷いことをしたのじゃよ?」


 ユグドさんからの問いかけに、サクヤは少し間を空けてから答えた。


「……別に、気にしてない。ぼくがダークエルフなのは、変わらない。でも、ぼくはタケルたちがすることを見てみたい。だから、協力する」


 ポツリポツリと話していたサクヤは、ふと言葉を止めて考え込む。


「……お腹いっぱい食べさせてくれたら、それでいい」


 最後は結局、食欲かよ。

 だけどサクヤの答えにユグドさんは満足そうに頷いた。


「分かったわい。今度からは腹一杯食事を振る舞おう」

「……やった」

「ホッホ。ワシもやはり年じゃのう。頭が固くなってしまっていた……そうじゃよな、ダークエルフ族だからと言って、全員が同じじゃないよのう」


 髭を撫でながら自嘲するように笑うユグドさん。

 どうやらサクヤとの確執も、どうにかなりそうだ。嬉しくて思わず笑みがこぼれた。

 さて、動き出しますか。とりあえず今日はケンタウロス族の集落に行って__。


 突如、けたたましい鐘の音と共に……何かの咆哮が集落中に響き渡った。




 

 


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