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漂流ロックバンドの異世界ライブ!  作者: 桜餅爆ぜる
第二章『ロックバンド、セルト大森林でライブをする』

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十二曲目『共闘』

 次の日。今日も俺とやよいは狩りに出ていた。いや、正確には俺とやよいと……もう一匹でだ。


「えへへぇ。キュウちゃん」

「きゅ!」

「うへぇぇ……可愛いよぉ……」


 白いキツネ、キュウちゃんを抱きしめながらだらけた顔で頬ずりをするやよい。女の子は可愛いものが好きなんだろうけど……可愛がり方が尋常じゃなかった。

 まぁ、キュウちゃんも特に嫌なそぶりを見せてないし、別にいいか。


「いや、よくない。やよい、真面目に獲物を探せよ」

「えぇぇ……」

「えぇぇ、じゃない」


 可愛がるのもいいけど、やることやってからにしろ。

 そう言うとやよいは頭にキュウちゃんを乗せ、渋々獲物を探し始めた。


「タケルのけち」

「けちじゃない」


 ブーブー言ってるやよいを無視して獲物を探して森を練り歩く。

 今のところまだモンスターに遭遇していない。まぁ、そう簡単に見つかるとは思ってないけど。

 するとやよいの頭にいるキュウちゃんが突然耳を立て、鼻をスンスンと鳴らし始めた。


「きゅ! きゅきゅ!」

「え? あっちに何かいるの?」

「きゅ!」

「……お前、キュウちゃんの言葉が分かるのか?」

「ううん、分かんない。でも、なんとなくそう言ってる気がするだけ」


 マジかよ。まぁ、たしかにそんな風に言ってる気がしないでもないけどさ。

 今のところ手がかりもないし、騙されたと思ってキュウちゃんが反応した方に向かって

みるか。

 キュウちゃんの案内通りに歩いていくと、どことなく見覚えのある場所と川のせせらぎが聞こえてきた。

 ここは……ケンタウロス族とエルフ族の領域の境界線である川が流れているところか。


「キュウちゃん、この辺?」

「きゅ!」

「たしかにここなら何かいそうだけど……ケンタウロス族の領域が近いよな」

「そうだね。あまりこの辺をうろつくのは……」


 昨日のことを思い出し、二人で渋い顔をする。

 もう勝手に領域に入ることはしないけど、あまり近くで狩りをするのはどうなんだろう。

 これで攻撃されたら嫌だなぁ、と難色を示しているとかすかに犬の遠吠えが聞こえてきた。これって……。


「__ワーグだ」


 聞き覚えのある遠吠えはワーグのものだ。どうやら近くにワーグがいるらしい。

 一気に警戒レベルを上げ、俺とやよいは魔装を構えて周囲を見渡す。ワーグの遠吠えが聞こえたのは……ケンタウロス族の領域の方だ。

 すると、川の向こう側でガサガサという音と、蹄の音が近づいてきている。


「__クッ! 森を荒らす野獣どもめ……ッ!」


 茂みから飛び出してきたのは昨日出会ったケンタウロス族が一人と、違うケンタウロス族が二人。手には弓や剣、盾を持ち、所々に傷を負っていた。

 三人が飛び出してくると、追いかけるように十匹のワーグも現れる。三体十……狡猾なワーグ相手にこれは、危険だ。


「背後を見せるな! 油断するな、死ぬぞ!」


 三人は背中合わせにしてワーグに立ち向かおうとしていた。ワーグたちは距離を取って取り囲み、隙があればすぐにでも襲いかかろうとしている。

 多勢に無勢だ。すぐに川を渡って助けに行こうとすると、昨日のケンタウロス族が俺たちに気付いて声を張り上げた。


「__我らの領域に足を踏み入れるな!」


 言い放たれた怒声に、川に入る直前で立ち止まる。


「どうしてだ!? このままじゃ死ぬぞ!?」

「これは我々ケンタウロス族の問題! 手出しは不要だ!」

「だけど……」

「部外者は黙っていろ!」


 にべもなく言われ、何も出来ずに立ち止まる。その間にもワーグたちは取り囲んでいた輪を徐々に狭めていく。


「……どうするの、タケル?」


 やよいが心配そうな眼差しで俺を見つめていた。

 どうする、か。


「__決まってるだろ」


 迷うことなく、川に足を踏み入れた。


「な!? 何をしている人間!?」


 言うことを聞かずに領域に入ってきた俺にケンタウロス族は驚いてるけど、無視してワーグに向かって剣を振り下ろす。

 だけど、いきなりの乱入者に驚きながらも、俊敏な動きで避けられてしまった。

 そのままケンタウロス族に背中を向け、剣を構える。


「何故我の警告を無視して領域に入った!?」

「貴様らには関係のないことだ!」

「部外者が我らの問題に首を突っ込むな!」


 ケンタウロス族たちは口々に俺に怒鳴ってくる。色々と言われ続けた結果、俺の頭の中で何かがブチッと切れた音が聞こえた。


「__うるせぇぇぇ!」


 俺が怒鳴り返すとケンタウロス族だけじゃなく、ワーグたちもビクッと体を震わせた。


「今はそんな細かいこと言ってる場合じゃないだろ!」

「し、しかし……」

「しかしもカカシもねぇ! いいから構える! 文句があるならワーグを片づけてからにしろ!」


 何をそんなに意地を張る必要があるのか知らないけど、今はそんなのどうでもいいだろ。

 言いたいこと言えてスッキリした。さて、さっさと終わらせようか。


「やよいは外側から攻撃!」

「分かった!」

「そこの弓持ってるのは全体を見ながら中距離で援護! 剣持ってる二人は俺と一緒に攻撃!」

「な、何故貴様が支持を……」 

「返事!」


 文句を言わせずに怒鳴ると、ケンタウロス族は戸惑いながらも従った。


「キュウちゃんはやよいから離れるなよ!」

「きゅ!」


 最後にキュウちゃんに指示を出すと、やよいの頭の上で前足を上げて返事してくれた。自分で言っといてだけど、言葉が分かるのかよ。

 とにかく、これで準備は整った。


「__戦闘開始! <フォルテ!>」


 合図と共に一撃強化(フォルテ)を使ってワーグに斬りかかる。後ろにジャンプして躱されたけど、そのまま思い切り地面に向かって剣を振り下ろした。

 地面を砕く音と砕かれた砂埃にワーグたちが気を取られている間に、その後ろからやよいが斧を振り被る。


「てあぁぁぁぁ!」


 振り下ろされた斧がワーグを真っ二つに斬り裂いた。残り九匹。

 すぐに他のワーグに走り寄り、剣で薙ぎ払って首をはねる。これで残り八匹。

 瞬く間に二匹のワーグを倒した俺たちに続いて、ケンタウロス族も動き出した。


「はぁぁぁ!」


 蹄を鳴らして走りながら、剣を下から上にすくい上げるように振り上げる。剣はワーグの胴体を捉え、そのまま空中に浮き上げた。

 そして、宙を舞うワーグに向かって剣を突き刺す。これで、残り七匹。


「__グッ!?」


 だけど、やられっぱなしのワーグじゃない。ワーグは盾を持っているケンタウロス族に向かって襲いかかっていた。

 ケンタウロス族は盾で防ぐが、ワーグはそのまま盾に爪を立ててそのまま倒そうとしている。


「やらせない!」


 そんなことさせない。

 すぐに盾に張り付いているワーグの胴体を斬りつけて助ける……すると、その隙をつかれて後ろからワーグが飛びかかってきた。

 この態勢じゃ避けられない。どうにか剣で防ごうとした瞬間、飛びかかってきたワーグの頭は矢で射抜かれていた。


「__ありがとう!」

「ふんっ、たまたまだ」


 中距離から全体を見ていた昨日のケンタウロス族が助けてくれたようだ。すぐにお礼を言うと、鼻を鳴らしてそっけなくされた。素直じゃないな。

 とにかく、これで残りは六匹だ。


「きゃあ!?」


 そこでワーグがやよいに向かって体当たりをしてきた。斧で防いだものの、体制が崩れて悲鳴を上げる。

 その隙にもう一匹のワーグがやよいに飛びかかろうとしていた。


「きゅ!」


 やよいのピンチを救ったのは、なんとキュウちゃんだった。

 キュウちゃんはやよいの頭から飛び降りると、飛びかかってきたワーグに頭突きを食らわせた。

 ゴンッ、と鈍い音が鳴り響くとワーグは地面に落下して痛そうにしている。

 空中でクルリと一回転したキュウちゃんは、そのままやよいの頭に華麗に着地した。お見事。


「ありがとうキュウちゃん! よくも……」


 花が咲いたような笑みを浮かべてキュウちゃんにお礼を言ったやよいは、表情を一転させてギロリとワーグを睨みつける。


「<フォルテ>」


 やよいは魔法を唱えると、斧を思い切り振り被った。


「__てやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 気合いと共に、渾身の力を込めて地面に斧を振り下ろす。

 爆音が森中に響き、隕石が落ちたような衝撃が地面を揺らし、五匹のワーグが宙を舞う。どれだけ力を込めたらそうなるんだよ……。


「と、とにかくチャンス!」


 気を取り直して宙を舞うワーグたちに向かって走り出す。剣を左腰において、魔力を纏わせていき……居合いのように横に振り払った。


「<レイ・スラッシュ!>」


 放ったレイ・スラッシュで一気に五体のワーグを斬り捨てる。これで残りは一匹だ。


「はぁぁぁぁ!」


 いや、違ったか。

 最後の一匹はケンタウロス族が倒したようだった。

 これで、どうにか全部のワーグを倒すことが出来たな。


「さて、と……」


 これで問題解決、とはならないだろうな。

 ケンタウロス族の警告を無視して領域に入り、勝手に助けに入ったんだ。

 怒られるだけで済めばいいなぁ、と淡い希望を抱きながらケンタウロス族に近づくのだった。

  


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