2.直線の想像終着点
プロローグ的モノローグ第二弾。
尤もらしい言い訳を並べ立てるには、余りにもその瞳が真剣だったから。
同じ位の誠実さを持ってして返事をしないといけないと思ったのは、考えてみれば当然のことだった。
多分。もう、その時点で、自分が出す答えは決まっていたのだろう。
ただ、それをすぐに認めるには、些か年を重ね過ぎていて。
世間体とか、自分の立場とか、周囲の常識やその他諸々の諸事情が、次に取るべき決断を躊躇わせていた。
真っ直ぐで、眩しすぎるくらいの強い眼差し。いくら大人びて見せても、その奥には年相応の揺らぎが存在して。虚勢を張って己れを鼓舞しながらも、真正面からぶつかってくるその若さに、思わず、微笑まずにはいられなかった。
するりと口をついて出てきたのは、了承の合図だった。
いくらごちゃごちゃと御託を並べるように頭の中で考えていても、所詮、人間は反射の生き物なのかもしれない。
その時のあの子の顔は、今でも忘れられない。
まるで緊張で張りつめた糸が音を立てて切れるように、押しとどめていた感情の堤防が決壊して、溢れんばかりの嬉しさが零れる様をスローモーションの如く展開したのだ。
見ていたこちらまでもが釣られて微笑んでしまうような、そんな綺麗な笑みだった。
それから、手探り状態の中で、自分なりに導き出したのは幾つかのルール。それは、自分への戒めとも言う。
無理をしないこと。自然体でいること。あるがままを受け入れること。惑わされないこと。
あの年頃の時分には、一時の気まぐれみたいなものがある。
自分とは違う大人の世界に純粋な憧憬を抱くのもその一つ。その延長線上に偶々かちあったのが私であったということなのだ。
だから、引き際を見誤ってはいけない。
あの子がもう少し大人になって、開けた視野を手に入れるまで。
ここから見える世界にズレが生じるまでは、責任を持って対峙しようと決めた。
それは私なりの良心。せめてもの償いだった。




