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カツとお酒の、味しかしない。  作者: ぎんはなあんず
カツとお酒の、味しかしない。前編
1/14

いつかの七夕

「......なのよねぇ......さんみたいになっちゃもうねぇ......かわいそうに......」


 七月七日。七夕。

 『壊れて』しまった日からもう半年以上経った。


「ほら、かずねえ。天の川見える」


 今夜の空模様は快晴。星が空の先から先まで見える。膨大な星々で形成された天の川が病室の窓からでも目視できる。


「あ、そうだ、短冊にお願い事書こうよ」


 この病院は、受付の右隅に、割と大きめの笹が飾られあり、そこに入院患者達が様々な願いを込めて短冊を飾っているのだ。

 黒のボールペンも持てないかずねえの代わりに、僕がペンを持つ。


「......ねえ、かずねえ。なに書けばいいと思う?」


 ペンを持ちながら考える。なにがいいだろうか。

 かずねえと一緒に学校へ行きたい。かずねえとお昼ご飯を食べたい。かずねえとまた一緒にどこかへ行きたい。かずねえの笑った顔が見たい。

 思いながら、ペンを握る手にじっとりと汗が噴き出てくるのがわかった。シャツの裏も汗で体に張り付く。

 いろいろ考えたが、やっぱり。

 今の一番のお願い事は、これだ。




『かずねえが、元に戻ってくれますように』




 雲ひとつない夏の夜空。雨なんか降る予感すらしない。なのに僕の書いた短冊には、雨が降り始めていた。

 僕のお願い事は、小さな嗚咽と共に、窓外の空の川へ吸い込まれていってしまった気がした。

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