いつかの七夕
「......なのよねぇ......さんみたいになっちゃもうねぇ......かわいそうに......」
七月七日。七夕。
『壊れて』しまった日からもう半年以上経った。
「ほら、かずねえ。天の川見える」
今夜の空模様は快晴。星が空の先から先まで見える。膨大な星々で形成された天の川が病室の窓からでも目視できる。
「あ、そうだ、短冊にお願い事書こうよ」
この病院は、受付の右隅に、割と大きめの笹が飾られあり、そこに入院患者達が様々な願いを込めて短冊を飾っているのだ。
黒のボールペンも持てないかずねえの代わりに、僕がペンを持つ。
「......ねえ、かずねえ。なに書けばいいと思う?」
ペンを持ちながら考える。なにがいいだろうか。
かずねえと一緒に学校へ行きたい。かずねえとお昼ご飯を食べたい。かずねえとまた一緒にどこかへ行きたい。かずねえの笑った顔が見たい。
思いながら、ペンを握る手にじっとりと汗が噴き出てくるのがわかった。シャツの裏も汗で体に張り付く。
いろいろ考えたが、やっぱり。
今の一番のお願い事は、これだ。
『かずねえが、元に戻ってくれますように』
雲ひとつない夏の夜空。雨なんか降る予感すらしない。なのに僕の書いた短冊には、雨が降り始めていた。
僕のお願い事は、小さな嗚咽と共に、窓外の空の川へ吸い込まれていってしまった気がした。




