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未来から吹いた風2 《軍人転生編》  作者: 青雲あゆむ
第4章 太平洋戦争編

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幕間: 海中の放火犯

昭和15年(1940年)6月 ロサンゼルス沖 200キロ地点


 私の名は木梨きなし 鷹一たかかず

 伊400潜の艦長を務める、海軍少佐だ。


 私は今、はるばるアメリカ近海まで来て、火付けをしていた。


「よ~し、潜望鏡深度へ浮上するぞ。到達しだい、アンテナと潜望鏡を展開」

「了解。潜望鏡深度へ浮上~!」


 私の指示に従い、伊400潜が浮上を開始する。

 潜望鏡深度に到達すると、すかさず電探・逆探のアンテナと、潜望鏡が海上に伸ばされる。


「逆探および、電探に感なし!」

「よし、周囲に艦影もないな。海面に浮上して、”桜花おうか”をぶちかますぞ」

「了解。海面に浮上~。砲術班は配置に付け~!」


 艦が海面に浮上すると、乗員たちが慌ただしく動きはじめる。

 私もすかさず航海艦橋へ上がり、周囲の警戒に入った。

 ちなみに時刻は真夜中で、周囲は満天の星空である。


 やがて水密格納筒が開かれると、”桜花”が引き出されてきた。

 この”桜花”とは、我が軍が実用化したばかりの新兵器である。


【零式飛行爆弾 ”桜花”】

長さx幅x高さ:7x5x1m

自重     :2.1トン

弾頭重量   :0.8トン

エンジン   :空技廠製 ジェットエンジン

最大速度   :毎時650キロ

航続距離   :250km


 それはなんと250kmも空を飛ぶ、無人の飛行爆弾だ。

 ただし撃ったら制御も何もない、行ってこいな兵器であり、精密な攻撃には向かない。

 当初は都市部に向けて撃ちこむ予定だったが、人道的にそれはまずいだろうという話が出てきた。


 戦争をしているのに人道も何もないものだが、それならアメリカの山林や農地を、標的にすればいいとなった。

 そこで爆薬を焼夷剤に変更した焼夷型が開発され、多数の伊400型潜水艦に積みこまれている。

 そして我々はわざわざ太平洋を越えて、放火をしにきているわけだ。


「3号機、設置完了」

「よし、翼を伸ばして固定せよ」

「はっ」


 桜花が射出カタパルトに載ると、折りたたまれていた翼を広げて固定する。

 それを確認した砲術長が、次の指示を出した。


「翼展開よ~し。エンジン始動~!」

「エンジン始動!」


 すぐさまエンジンに火が入り、甲高いジェット音が響きはじめる。

 やがてエンジンの状態が安定したところで、発射の指示が出た。


「発射!」

「発射!」


 油圧でカタパルトが作動すると、桜花がものすごい勢いで加速する。

 そのまま桜花が飛び上がると、それを支えていた台車が分離して、海中に落ちた。

 ちょっともったいないが、迅速に発射するには、使い捨てが一番だ。


 桜花はグングンと高度を上げ、500mほどの高度に至ると、また砲術長が指示を出した。


「よし、水平飛行に移行!」

「はっ、水平飛行に移行」


 作業員の無線操作で、桜花が上昇をやめ、水平飛行に入る。

 これ以降はジャイロセンサで高度を維持し、まっすぐ飛ぶだけだ。

 双眼鏡で桜花を見送ると、私は時計で発射に掛かった時間を確認した。


「よし、だいぶ早くなったな、砲術長」

「はっ、恐縮であります」

「うん、ご苦労。それでは敵さんが来る前に、とっとと退散することにしよう」

「はっ、潜行準備~!」


 すぐに乗員が艦内に引っこむと、潜行を開始する。

 深度30mまで潜ると、水平航行に移り、発射現場を脱出した。


「ふう、これでひと安心だな」

「ええ、砲術班もだいぶ手際が良くなってきたんで、安心して見てられますよ」

「最初は手間取って、危うく攻撃されかかったからな」

「あれはヤバかったですね。まあ、敵さんも必死なんでしょうが」

「そうだな。あちらからすれば、俺たちはにっくき放火犯だからな」

「しかし謀略をもって戦争を仕掛けてきたのは、あちらさんですからね。自業自得ですよ」

「そのとおりだ。さて、桜花も撃ち尽くしたことだし、母艦と合流しようか」

「了解です」


 その後、敵の哨戒圏を抜けると、我が艦は浮上して母艦へと向かう。

 新鮮な空気を吸えるのは、それだけで幸福と感じる。

 やがて連絡のついた潜水母艦”迅鯨じんげい”と、洋上で合流した。


 母艦がここまで出てきてくれるおかげで、我々はミッドウェー島まで戻らなくてすむ。

 駆逐艦に守られているとはいえ、敵地の近くまで来てくれる母艦には感謝だ。


「お疲れさまです、木梨艦長」

「やあ、そっちこそ補給任務、ご苦労さん」


 迅鯨と接舷した我が艦は、ただちに補給を開始する。

 ”桜花”や魚雷だけでなく、燃料や食料、日用品など、さまざまなものが艦内に飲みこまれていく。

 それを行う乗員たちの顔は明るい。

 なにせまた新鮮で美味しい料理が、食べられるのだから。


 すると迅鯨の艦長が出てきたので、あいさつをする。


「やあ、佐藤艦長。いつもお世話になります」

「なに、最前線でがんばってる皆さんのためなら、火の中水の中ですよ」

「それは頼もしい。ところでアメリカの状況は、どうなってるか分かりますか?」

「木梨艦長たちのおかげで、大慌てだそうですよ。あちこち山火事になって、右往左往しているようですな」

「それは何よりの知らせです。今後も頑張れますよ」

「ええ、がんばってください。こちらもお呼びとあれば、いつでも駆けつけますから」

「はい、またお願いします」


 どうやら我々の活動は、ちゃんと成果を挙げているようだ。

 これなら辛い勤務にも、耐えられるというものである。

 交替まであと1ヶ月、がんばろうではないか。

木梨鷹一少佐(最終、少将)といえば、空母ワスプを撃沈したことで有名な潜水艦長です。

残念ながら欧州からの帰路で戦死されてますが、本作では放火犯をやってもらいました。

ちなみに伊400型は魚雷も積んでるので、状況に応じて通商破壊もやっている設定です。

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三国志モノの新作を始めました。

逆襲の孫策 ~断金コンビが築く呉王朝~

孫権の兄 孫策が逆行転生して、新たな歴史を作るお話です。

― 新着の感想 ―
[気になる点] パルスジェットじゃなくて通常のジェットエンジンでは もったいないというか希少金属の浪費になりませんか。
[一言] 焼夷弾型ですか となると爆発力不足で、桜花が壊れきらずに技術が盗まれちゃいそう。
[気になる点] 過去に他作家様が 木梨艦長が伊400型を指揮し、桜花という名の飛行兵器で米西海岸へ攻撃を行う という描写と似ていますが意識されてますか?それとも偶然ですか?
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