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未来から吹いた風2 《軍人転生編》  作者: 青雲あゆむ
第1章 明治編

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15/68

12.2周目も順調です

明治40年(1907年)1月 東京


「俺たちの昇進に」

「「「かんぱ~い!」」」


 軍制改革から半年ちょっと。

 俺たちはまた集まって飲んでいた。

 改革後の混乱をなんとかやり過ごし、無事に中尉に昇進したお祝いである。


「いや~、相変わらず忙しいけど、思ってたよりいろいろやれたな~」

「だな、俺は自動車にテコ入れできたし、慎二も日本製鋼所の合弁を誘導してるんだろ」

「北樺太石油もなんとかなりそうやしな」

「周波数の統一もできそうだよ~」

「商会の方もけっこう、順調なんだぜ」


 幸か不幸か、兵部省の復活後の混乱は、なかなか収まらなかった。

 そんな状態では教育改革など、とてもやれないということで、俺たちの手が少し空くことになる。

 その隙をついて、俺は自動車事業のテコ入れに走った。


 具体的に言うと、東京砲兵工廠で自動車の研究部署を立ち上げさせ、ささやかながら技術開発を始めたのだ。

 もちろん、実際にやるのは陸軍の人間で、俺はアドバイザーみたいな立場だ。

 そしてその成果は陸軍が独占するのでなく、なんと民間への供与も謳っていた。


 普通ならとても民間に指導できる技術などないのだが、軍には俺たちがいる。

 なにしろ俺たちには、前世で明治期から技術開発に取り組んだ経験があるのだ。

 その時のノウハウがあるから、この時代の技術をちょっと先取りしたアドバイスも、さほど難しくないわけだ。


 これについては今後、自動車だけでなく、金属、電気、化学分野においても、同様のことをやっていくつもりだ。

 とにかく史実の戦前日本は、民間企業の力が弱かった。

 おかげで軍は、なんでも自分で作ろうとするもんだから、コストが馬鹿高くなるし、生産能力も貧弱だ。


 それに対してアメリカは、大量の民間需要と大量生産工学を背景に、膨大な生産力を発揮できた。

 そんな日米の格差を、少しでも縮めるため、民間企業の育成を進めるのだ。

 ただし史実のように、軍需が民間を引っ張るだけでは、健全な成長は望めない。

 まずは国を豊かにして、民間企業が自律的に成長していけるような、環境を作りたいと思っている。


 その一環として後島は、日本製鋼所の合弁事業を誘導していた。

 これは1907年、北海道炭鉱汽船が英アームストロング社、ヴィッカース社との合弁で立ち上げた企業である。


 史実では当初、製鋼と兵器製造のみだったが、1909年に製鉄所も立ち上げ、銑鋼一貫生産が可能となっている。

 そして後島はこの製鋼所を、国内の製鉄産業の育成に使おうと画策した。

 なにしろこの時代は、八幡製鉄所と釜石鉱山田中製鉄所ぐらいしか、銑鋼一貫生産ができていなかったのだ。


 そこで後の住友製鋼所や神戸製鋼所、川崎造船所、日本製鋼所、日本鋼管に相当する企業に声を掛け、日本製鋼所への出資を募った。

 それは最初から高炉を運用する計画で、これに出資すればさほど大金でなくても、関係者として銑鋼一貫生産のノウハウを学べるようになる。

 当然、いろいろと利害関係で揉めたのだが、そこは国からの補助金と指導でまとめる方向だ。

 これが実現すれば、日本の製鉄能力は大いに高まるはずなので、バリバリやって欲しいものだ。



 同様に佐島が裏で動いたのが、北樺太石油だ。

 これは日露戦争で獲得した樺太の北部で、油田開発を行う企業である。

 これに前世でもやったように、イギリスを巻きこんだ。


 おかげで日本政府、イギリス政府、ロイヤル・ダッチ・シェル、そして国内の企業が出資する形で、北樺太石油が誕生。

 今後、開発用の機器などをイギリスから輸入し、油田開発を進める予定である。

 いずれは貴重な国産油田として、日本の需要の一部を賄ってくれるだろう。



 そして中島が早々に動いたのは、国内の商用電源周波数の統一だった。

 史実で西は60Hz、東は50Hzに分かれてしまった、アレである

 その発端は1896年頃に、東の東京電灯、西の大阪電燈が、それぞれアメリカとドイツから、発電機を輸入して使いはじめたことにある。


 実際にはその他の電気事業者も入り乱れ、さらに多くの周波数に分かれていたのが、徐々に統合されていった。

 しかし東西の統一だけはならず、日本は世界にも2ヶ国しかない、複数周波数の国になってしまったのだ。

 もちろん、統一しようという話は何回もあったものの、費用の問題で実現しなかった。


 しかしこの時期ならまだまだ影響は少ないので、強い行政指導があれば可能となる。

 元老の圧力を使って、すでに官僚は周波数統一に動いているので、いずれ60Hzに統一されるであろう。

 地味に不便だからな、アレ。



 そして川島の方は、載舟商会さいしゅうしょうかいの投資を一気に進めたそうだ。

 今はまだ利益は出ていないが、いずれ大きなリターンとなって還ってくるだろう。

 そして慈善事業による国内の安定と、情報収集の拠点として役立てるつもりだ。


「ぷは~、それにしても、こんなことを2回もやるとはなぁ」

「ハハッ、まったくだ。しかしまあ、以前とは立場も違うから、これはこれで面白いけどな」

「だね。一応、国外の情勢も、安定しているし」

「まあ、2周目やからな。他国の反応も、予想しやすいわ」

「だな~」


 一方、国外の情勢も、日本にとっていい方向で安定しつつあった。

 まず仇敵のロシアは、国内の混乱を収めるのに忙しかった。

 日本が早々に満州軍を撤退させたのもあって、南満州と韓国には手を出さないという密約を結んでいる。


 そして清帝国とも、満州から軍を撤退させたことで、緊張が緩和していた。

 なにしろ史実では、2個師団もの兵力を駐屯させていたのだ。

 旅順に1個大隊は残しているものの、満鉄の経営に参加させたのもあって、明らかに関係は改善している。


 それから大韓帝国との関係も、まあまあだ。

 史実では保護国化され、外交権も取り上げられたのが、むしろ対等の同盟国として扱われているのだ。

 あちらも悪い気はしないだろう。


 もっとも、そこに落ち着くまでには、けっこうやり合ったらしい。

 ただ甘い顔をしてもつけ上がるだけなので、最初は保護国化もちらつかせて、強い態度を打ち出した。

 そのうえでいろいろ交渉して、譲歩したように見せかけ、彼らの自尊心を満たしてやったわけだ。

 おかげで表面上は同盟国として、仲良くふるまっている。


 そして満鉄に絡ませたアメリカだが、満州にガンガン投資をしてくれている。

 線路を標準軌にしたり、周辺の鉱山開発にも設備投資をしたりと、大活躍である。

 今はまだ利益が出ていないが、いずれ日本にも利益をもたらしてくれるだろう。


 ちなみに史実だと長春や奉天に日本人街が形成されるのだが、これは控えさせている。

 元々、満鉄の経営権は1940年に返還するものだというのが、その建て前だ。

 本音は日本人が住み着いたら、手放せなくなって、中国との関係が悪化するからだ。


 史実では第1次大戦中のドサクサで返還期限を延長しているが、それは悪手というものだろう。

 結局、中国との関係が悪化し続けて、泥沼の日中戦争になるのだから。

 いずれ大陸からは、撤退するのがお利口というものだ。


 それから陰ながら日露戦争に協力してくれたイギリスには、北樺太石油に絡ませたので、こちらも関係は良好である。

 俺たちはイギリスの技術や資材を使って、油田開発が進むし、イギリスは利益を得られる。

 まさにウィンウィンな関係だ。


 そんな感じで、2周目の歴史改変は、順調に推移していた。

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三国志モノの新作を始めました。

逆襲の孫策 ~断金コンビが築く呉王朝~

孫権の兄 孫策が逆行転生して、新たな歴史を作るお話です。

― 新着の感想 ―
[気になる点] 周波数はどちらに統一したんやろう・・・?笑
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