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英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜  作者: 駄作ハル
第一章

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80話 別れと

 私は大切な家族に別れを告げ、馬に飛び乗った。

 それを見て、歳三やタリオも騎乗し私に追従する。


 ファリア行きの隊列は、私を先頭にし、次にこの中で一番軍の高官である歳三、タリオとなっている。最後尾は孔明を乗せた荷馬車と続く。


 まずは兵舎に寄り、共にファリア行きを決意した有志を迎え入れる。先の戦いでその大多数の兵力を失ったファリアにおいて、彼らは治安維持にも欠かせない存在となるだろう。


 多すぎてもかえって養いきれない可能性もあったため、一抹の不安を抱えていたが、それは杞憂に過ぎなかった。


 兵舎の前に整然と並ぶ兵士。騎馬兵、弓兵、歩兵がそれぞれ百人ずつぐらいだろうか。


「彼らが全て私に着いてくると?」


「はい!共に死線をくぐり抜けた戦友とは心強いですよね!」


 忘れもしない。ファリア戦でのウィルフリード軍の死者は、総兵数五百のうち三百弱が戦死した。

 しかし目の前の総数が三百となると、ファリア戦での生き残り全てと別からもそれなりに集まった計算になる。

 ファリア戦サバイバーたちの武勇伝に感化された兵士がいたのか、父が心配していくらか部隊を分けてくれたのかもしれない。


 いずれにせよファリアの警備程度なら成り立ちそうな人員が揃ってよかった。頭数さえ揃えば、あとは孔明が上手いことやってくれるだろう。


「諸君!こんな私に従い、遠く離れた地に至ってまで忠誠を尽くそうとするその姿、尊敬の意を表したい!総員、私に続け!」


「は!」

「レオ様に栄光あれ!」

「ありがたきお言葉!」


 兵士たちは口々に私の言葉に応じ、敬礼をした。

 そうして事前に決められていたかのようにてきぱきと部隊を編成し、私の隊列に加わった。


「ドキドキしねェか?レオ」


 歳三は馬を私の方へ寄せ、いたずらっぽく笑いながらそう私に声をかけてきた。


「ああ……。先頭に立って指揮をするのも中々に度胸がいるな……」


「それが背負うもんの重さってヤツさ」


 仲間の死を受け入れ、それでも前へ進み続ける。

 歳三の横顔からはそんな憂いを帯びた男の印象を受けた。彼の生き様そのものが私の道標となるのだろうか。




「───おいおい!誰が私の出立を漏らしたんだ?」


「さぁ?どこからか聞きつけたのではないでしょうか」


 街の中央広場は群衆で埋め尽くされていた。


 タリオはわざとらしくそっぽを向いてそういう。その口元は笑っているように見えた。


「レオ様ご武運を!」

「ウィルフリード万歳!レオ様万歳!」

「どうかお元気で!我らの英雄よ!」


 さながら祭りでも開かれているかのような盛り上がりだ。その歓声が全て私に向けられていると思うと小っ恥ずかしい。


「……ありがとう民たちよ!これからもウィルフリード、そして帝国に忠誠を尽くせ!また会おう!」


 私が拳を振り上げ応じると、「うぉぉぉ!!!」と雄叫びが飛び交った。


 なんだよ、泣かせてくれるじゃないか。


「よおレオ様!」


「お前たちは……!」


 そこにはかつて戦場を共にした戦友たちの姿があった。

 冒険ギルド長ゲオルグ。傭兵ギルド長ナリス。ウィルフリード中央商会会長セリル。そして自治会長ベン。

 会議室で何度も顔を合わせたあのメンバーが総出で私を見送りに来てくれた。


「ああ、レオ様に一言挨拶申し上げねばならんと皆で話したんだ」


「そうか……。冒険者ギルドの建て直しは終わったか?」


「ルイース様はやり手だ。レオ様が出発されてすぐに報奨金と怪我人への手当が届けられた」


「傭兵ギルドも同じく、十分な補償を頂きました」


「それは良かった」


 単独行動の失敗を気に病みやつれていたナリスも、顔色に生気を取り戻していて安心した。


「レオ様、ファリアへ着任なされてもどうかウィルフリード中央商会をご贔屓に……」


「ふふ、そう言われると断れぬではないか。……大きな人口を抱えるウィルフリードとの取引はファリアにとっても重要になるだろう。その際はセリルにも声を掛けるよ」


 癒着にならない程度にな。


「どうだベン、街の復興は?」


「へぇ、それはもう多大な支援を受けまして……。焼けた地区に住んでいた者が新居に住むことを羨む人もいる程でございます……」


「はは!そうか!……迷惑をかけた分、彼らには生活の保証が必要だからな。これからも民たちの代表として頑張ってくれ」


「迷惑だなんて、レオ様は何も悪くなど……。勿体なきお言葉にございます……」


 仮にも、民の中では一番上の立場でありながらここまでの謙虚な姿勢。少し卑屈過ぎるとも思うが、ベンのような人間がいると上手く上下の橋渡しになって助かるだろう。


「───さてと、名残惜しいが私は行かなければならない」


「応援してるぜレオ様」


「ああ!じゃあな!」


 止まない歓声を背に、私は馬の歩みを進めた。




 私の行く先には、北門を警備する兵士がいる。

 恐らく彼がウィルフリードで最後に話す人間となるだろう。


「おはようございますレオ様!」


「ああ、ご苦労。……門と跳ね橋を動かしても問題ないか?」


「は!修理は完全に終了しております!」


「そうか。それでは最後に荷馬車が通るまで門は開けておいてくれ」


「は!了解しました!」


 門番は外壁の横にあるレバーを引く。どうやらこちらでは開閉システムも回復出来たようだ。

 門が開かれると、新品のツヤがかった木でできた跳ね橋が姿を表す。そして今、ゆっくりと街と外を繋いだ。


「ありがとう。……よし!騎馬隊は私に続け!昼までにはファリアへ到着するぞ!歩兵は荷馬車を護衛しつつ、無理のないスピードで後から進軍して構わない。……それでは、総員進めぇ!」


「おおお!」


 私が馬を駆り、跳ね橋を渡ると気が軋む音がした。

 その後ろから歳三、タリオと続く。

 騎馬隊の本隊が橋を渡ると、ドドドと大きな振動が大地を震わせた。


「はァッ!」


 流れるウィルフリード郊外の景色を横目に、私は一心不乱にファリアを目指す。


 荒れた畑もある程度整備し直されていて安心した。

 来年にはここで採れた食物がウィルフリードの人々の腹を満たすだろう。


「───おい!レオ!ちょっと飛ばしすぎじゃねェか!?お前、落ちるんじゃねェぞ!?」


「はは!大丈夫さ歳三!人の落馬を心配するより、自分が舌を噛まない事だな!」


 晩秋の冷たい風を頬で感じながら走るのは、非常に心地良かった。

 ファリア行きは不安でもあるが、それ以上に楽しみでもあるのだ。私は待ちきれぬ想いを馬の振動でかき消すように走らせる。


「んな急がんでも街は逃げねェぜ!?」


「分かった分かった!」



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆




 それから四時間ほどだろうか。速度を落とし馬を適度に休ませつつも、かなり早いペースで着くことができた。


「なぁ!?この景色は全て私のものでいいか!?」


「おいおい、奢り過ぎだ!……だが、それも事実だな!」


「レオ様!早く街に入って休みましょう!疲れました!」


「そうだな!……待たせたな、ファリア!!!」

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