19.夏休みの計画
本日4話目です。
来週あたりから忙しくなるので、今のうちにとせっせと投稿してます。
異世界召喚されてきてから、4カ月
青葉が夏の光にキラキラと輝く季節。
これまでの成果は下記。
・騎士団の訓練で、中級騎士と打ち合えるようになった
・光魔法が上級、土魔法が中級レベルまで扱えるようになった
剣については、相変わらず周囲が自信喪失するほどのレベルで上達している。
前回、数ヶ月間基礎をみっちりやったのも大きいが、やはり召喚者補正のようなものがある気がする。
魔法の方も極めて順調。
光魔法については、「もう教えることがない」と言われるほど上達した。
現在は、土魔法の練習をしている。
順調に強くなっていく自分に満足しつつも、シオンは次を考えるようになった。
魔王出現まで、あと8カ月。
そろそろ対策を考える必要があるよな、と。
―――そんなある夏の日。
シオン、ジャックス、アリスの3人が、いつものように食堂で昼食を食べていると、ジャックスが2人に向かって尋ねた。
「そういえば、2人とも夏休みはどうするんだ?」
そういえば、 1ヶ月後に、そんなものがあったな、と思い出しつつ、シオンが答えた。
「特に何も考えてない。アリスとジャックスはどうするんだ?」
「私は、ずっとシオンと一緒に過ごす予定」
アリスの言葉に、「へえ」と、ニヤニヤするジャックス。
シオンは慌てて言った。
「お前が考えてるようなアレな感じじゃないぞ! 護衛とかそういう意味だからな!」
「……私は別にそういうアレでもいいと思ってる」
「冗談最悪!」
漫才のような2人のやり取り。
ジャックスは堪えきれないように笑い出した。
「ははは。一体どうなることかと思ったけど、2人とも結構うまくやってるよな。
それで、夏休みなんだけど。俺の実家に遊びに来ないか?」
アリスが目を輝かせた。
「本当? キャロルに会える?」
アリスの妹キャロルは、現在ジャックスの実家である辺境伯領で療養中だ。
手紙によるとずいぶん良くなっているらしく、最近は屋敷でメイド見習いとして働かせてもらっているらしい。
ジャックスが頷いた。
「もちろん会えるさ。それに、夏の辺境伯領は涼しいから、避暑にぴったりだ」
「ん。暑くないのは良い。楽しみ」
笑顔で話す2人。
シオンは、軽く唇を噛んだ。
辺境伯領といえば、シオンと仲間たちが殺された砦がある。
思い出すと気分が悪くなるし、あまり行きたい場所とは言えないが、8カ月後のことを考えると、下見はするべきだろう。
シオンが黙り込んでいると、ジャックスとアリスが心配そうに顔を覗き込んできた。
「どうしたんだ、シオン。顔が険しいぞ」
「もしかして行きたくない?」
シオンは、はっと我に返ると、慌てて首を横に振った。
「少し考え事をしていただけだから大丈夫。是非行かせてくれ。楽しみだ」
遅かれ早かれ行かなければならないのなら、みんなで一緒に行った方が気が楽だ。
* * *
その日の午後。
3人は、研究所にあるウィリアムの個室を訪れていた。
週に約1回。
鍛錬のない日、3人は「情報交換」の名目のもと、ウィリアムを訪ねるようにしていた。
ウイリアムは、3人の夏休みの計画を聞くと、羨ましそうな顔で言った。
「いいですね。学生は休みがたっぷりあって」
「ウィリアムは休みがないの?」
「ありますけど、2週間程度ですね。学生の2ヶ月には遠く及びません」
ジャックスが言った。
「ウィリアムもどうだ? 夏の辺境伯領は涼しいぞ。途中で来て、途中で帰ってもいい」
ウィリアムは目を輝かせた。
「それは嬉しいお誘いですね。夏休みはいつからですか」
「1ヶ月後だ」
「でしたら、私も1ヶ月後に休みを取るように頑張っておきましょう。辺境伯領のお酒は飲むのですが、行くのは初めてです」
楽しみです、と、にこやかに笑うウィリアム。
そして、すっと視線をシオンの首元に向けると、首を傾げながら言った。
「ところで、前々から思っていたのですが、その格好、暑くないんですか?」
シオンは、片手で首元を抑えた。
首元から出ているのは、日本から持ってきた柚子胡椒ハイネック半袖Tシャツ。
彼は溜息混じりに言った。
「うん。暑い。すごく暑い」
ジャックスが不思議そうに言った。
「どんなに汗をかいてもその黒いの着てるよな。暑いなら脱げばいいじゃないか」
シオンは、ぽりぽりと頭を掻いた。
「脱ぎたいのは山々なんだけど、シャーロット王女と約束しちゃったんだよ。肌身離さず着るって」
実際に着ると約束したのは、”身体能力向上の魔道具” だ。
しかし、それを着ると運動負荷が下がって鍛錬にならないため、柚子胡椒下着を着ているのだが、さすがに夏になると暑くて仕方ない。
ウィリアムが訝しげな顔をした。
「その黒い下着はシャーロット王女のプレゼントなのですか?」
「うん。そんな感じ」
「何か特殊な効果がかかっているんですか?ーー話せないなら話さなくても良いですが」
シオンは考え込んだ。
シャーロットが「特別な魔道具」とか言っていたから、これについては言わない方がいいのかもしれない。
「よくわかんないけど、特に効果はないと思う」
そうシオンが答えると。
ジャックスが、よく分からない、という顔をした。
「だったら、脱いでもいいんじゃないか?
さすがの姫様も、この暑さで、そんな暑そうな下着着てろ、なんて、悪魔みたいなこと言わないだろ」
2人の言葉を受けて、シオンは考えた。
渡された時は、「学校で危ない目に合わないか心配です」と言われ、断れない感じで受け取った。
でも、もう学校に通って3ヶ月。
危ない事がないのは分かりきっている。
重要な魔道具をずっと借りているのも気がかりだ。
そろそろ返そう。
「そうだな。ちょうどお茶会の誘いがあったから、来週シャーロット王女に会って、返すことにするよ」
お茶会は気乗りしないが、魔道具を返却するにはいいタイミングだ。
こうして、シオンは、約2カ月半ぶりにシャーロット王女のお茶会に参加することになった。
とうとう……




