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死に戻り白豚勇者、日本で準備万端ととのえて、いざ異世界へ(※ただし彼は洗脳されている)  作者: 優木凛々
第2章 ローズタニア王国の日々

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05.知識チート爆炎!


本日3話目です。ご注意ください。


異世界召喚されて、10日目。


少し寒い朝。


美味いとは言えない朝食を無理矢理お腹に詰め込んだシオンは、ノートに書いてある「やることリスト No.2」をチェックしていた。



―――――

<やることリスト> No.2


・ウィリアムに会って、手洗いうがいについて語る

・学園に入学する

・ジャックスに会う


―――――



学園に入学すれば、前回(召喚1回目)の親友ジャックスに会える。

ここは是が非でも学園に行きたいところなのだが……。



(これが、ちょっと難易度高いんだよな……)



ちなみに、前回(召喚1回目)、学園に入学することになった流れはこんな感じだ。



・王宮内をウロついていたところを、偶然通りかかった宰相の息子ウィリアムが話かけてくる


・日本の病気予防策について尋ねられ、手洗いうがいについて語り、感謝される


・それが宰相から王に伝わり、王から「学園でこちらの文化も学んでみないか」と言われる



つまり、ウィリアムが声をかけてきたことが切っ掛けで、学園に行く流れになった感じだ。

だから、今回もウィリアムに会って、手洗いうがいの話をすれば、自動的に学園に行けると思うのだが……。



(問題は、どうやってウィリアムに会うか、なんだよな)



以前のように王宮内をウロついても良いが、ほぼ運任せなため、いつ会えるか分からない。

直接呼ぶことも考えたが、現時点で知り合いでもないウィリアムを呼ぶのは変だ。



(うーん……、どうしよう……)



いくら考えても良い策を思いつかず、思い悩むシオン。


しかし、物事は意外な方向に進む。

その日の夜。なんと、ウィリアムの方から現れたのだ。




* * *




その日の夜19時過ぎ。


大して美味しくもない夕食と入浴を済ませた後。

まだ眠くなかったシオンは、テラスに出て、置いてある椅子を使った柔軟体操をすることにした。


少し冷たい夜風に吹かれながら、ストレッチを始めるシオン。


そして、しばらく体を動かしていると。

突然、近くの植え込みから、ガサガサ、という音が聞こえてきた。



(ん? なんだ?)



不審に思って音の方向を見るシオン。


そこには月明かりに照らされた眼鏡の青年が立っていた。


驚き固まるシオンに、青年は丁寧にお辞儀をした。



「こんばんは。初めまして。私はラディシュ公爵家の次男、ウィリアム・ラディッシュと申します」



シオンは、目が飛び出そうになった。

どうやって会おうか悩んでいた人物が、まさか自分から来ようとは!



「……タダ・シオンです」



混乱しながらも、とりあえず返事を返すシオン。


ウィリアムが申し訳なさそうな顔で言った。



「驚かせて申し訳ありません。本来ならば、手順を踏んで面会をお願いするべきなのですが……」



ガードが固すぎて、突破するまで時間がかかりそうだったので、失礼覚悟でこうした手に出てしまいました、と言うウィリアム。


シオンは首を傾げた。


ガードって何だ? 

異世界人に勝手に接触しちゃいけないような決まりでもあるんだろうか。


シオンが考え込んでいると、ウィリアムが再び頭を下げながら言った。



「もしも宜しければ、少しお話させて頂けませんか。ご都合が悪いのでしたら、もちろん出直しさせて頂きます」



シオンは思った。

状況はよく分からないが、これは願ってもないチャンスだ。

是非お話しよう。



「いいですよ」と、答えて、テラスの椅子を勧めるシオン。


お礼を言って、椅子に座るウィリアム。

部屋の光に照らされて、黒髪と紫の瞳があらわになる。


相変わらずイケメンだな、と、思いつつ、シオンは尋ねた。



「それで、お話とは何でしょう?」


「実は、異世界の流行病対策について教えて頂きたいのです」



申し訳なさそうな表情で言うウィリアム。


その言葉を聞いて、シオンはピンときた。



(なるほど。これ、シチュエーションは違うけど、前回(召喚1回目)と同じ話だ)



前回も、確か「異世界の流行病対策を教えてください」と聞かれ、「手洗いうがい」と、答えた。

てことは、今回も手洗いうがいの話をすればいいんだな。


話す内容が分かり、気が楽になるシオン。


しかし、事態は予想の斜め上をいくことになる。


ウィリアムが、深刻な顔で、こう切り出したのだ。



「実は、ここだけの話、ローズタニア王国各地で流行病の兆候があるのです」


「え!? 流行病?」


「はい。このままいくと、大流行は必至。何万という民が命を落とすでしょう。何とか食い止めたいのですが、お恥ずかしい話、我が国にはこれを押さえられる知識がないのです」



恥を忍んで、といった風に話すウイリアム。


シオンは驚きのあまり目を見開いた。


まさか、背景にこんな話があったとは。

何万もの民が命を落とすって、大事件じゃないか。

何で知らなかったんだ、前回(召喚1回目)の俺!



ちなみに、シオンが流行病について知らなかったのには理由がある。

前回(召喚1回目)の彼は、全く信用されていなかったのだ。


前回のシオンは、王宮内の人々に、「悪い青年ではないが、少し頭が足りない怠け者」と、評価されていた。

1日の大半を寝て過ごし、メイドに文句ばかり言い、本の1冊も読まない、太った怠け者勇者。


それゆえ、ウィリアムも詳細な話をせず、ただ「日本の病気予防策について教えてくれ」という尋ね方をした。



しかし、今回。

シオンは、「礼儀正しくて頭の良い真面目な若者」と評価されていた。

来て数日は荒れたものの、以降はメイドに対しても「ありがとう」を忘れない紳士ぶり。

連日図書館に通って、この国の知識を学んでいるらしい。


この話を聞いて、ウィリアムは思った。


どうやら、異世界から来た青年は優秀らしい。

我が国の恥をさらすことになるが、正直に現状を話して、助力を乞おう、と、


前回と比べると信じられないほどの信用アップである。



しかし、そんなことを知らないシオンは大いに動揺した。



(そんな大事だなんて知らなかった! どうしよう!)



この状況で、手洗いうがいをしましょう、とは、とても言えない。

明らかに何か違う。


そして、しばし悩んだ末。

彼は、幾つか質問してみることにした。



「え、ええっと、特効薬のようなものはないんですか?」


「教会が出している聖水が効くのではないかと言われていますが、値段が高く希少なため、庶民には手が出ない状態です」



シオンは思った。

「聖水」とか、なんかファンタジーなものが出て来たぞ、と。

でも、高くて買えないのであれば、きっと意味がない。



「ええっと、じゃあ、感染対策みたいなのはしてるんですか?」


「はい。病人の隔離と、教会による空気の浄化を行っております」


「浄化って、魔法ですか?」


「いえ、祈りで周囲を清める儀式です」


「……それ、効果あるんですか?」


「あるとは言われておりますが、実際は微妙かと」



シオンは腕を組んで考え込んだ。


以前も思ったが、ローズタニア王国の医学は相当遅れているらしい。

日本でいうところの、江戸時代とかそのくらいのイメージだ。


以前召喚された清水さんは大正生まれの農民だったらしいので、農業以外の知識については詳しくなかったのかもしれない。



ウィリアムは頭を下げた。



「勝手にこの世界にお呼びして、虫の良い話だとは承知しておりますが、どうかお知恵を拝借できないでしょうか」



シオンは、誇らしい気分になった。


以前のシオンは、公衆衛生と聞かれ、手洗いうがい程度しか思い浮かばなかった。

でも、今回のシオンは、前回とは比較にならないほど流行病や公衆衛生の知識を持っている。

ヨーロッパの歴史と共に黒死病やコレラについての知識も得たし、公衆衛生の本も読んだ。



(勉強した甲斐があった。これぞ、世界を救う男だよな!)



シオンは、ウィリアムを真っすぐ見ると、力強く頷いた。



「分かりました。出来る限り力になりましょう!」



――この日。

シオンは夜が白むまで、ウィリアムに地球の公衆衛生について語った。







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