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蔵書一万冊を多分超えるであろう元書店員のお勧めマンガ  作者: 草野猫彦


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その三十 高校デビュー  集英社 河原和音

今回は前書きの部分で色々と言われそう。

 さて、2019年のサブカル業界において最も巨大な動きが、鬼滅の刃の大ヒットと言っても、反論する人はそう多くないと思います。

 で、本題とは違うのですが、よく鬼滅は女性に売れてるとかいう論調で色々と言われていますが、アホかと。

 元書店員の私が、元職場に行って聞いてみれば、大半は男性、特に中学生から高校生が良く買う、という生の声が聞こえましたよ。

 いや、都会ではどうとか、女性ファンが少ないとか言うつもりではないんですが、メインターゲットをことさらに違うと言う論調に食傷していましたので、確認してきたんですよ。

 少なくとも地方都市においては、鬼滅の刃は男性読者の心をキャッチしています。

 電車の中で鬼滅の話をしている男子高校生も見かけましたし。


 そんな鬼滅の刃の大ヒットを受けてか、今までの大ヒット作品の数字を出したり、どの作家がすごいとかいう記事もネットではよく見るのです。

 その中で、3本以上ヒットを出している漫画家が、手塚治、藤子・F・不二男、高橋留美子しかいないという記事がありましてね。

 まあ反論の意見もありまして、浦沢だとか井上だとか、そのあたりの名前はきっちりと出るんです。

 だが、少女マンガ家の名前が少なすぎる!

 漫画読みは、少女マンガももっと読め! 大人になってからはあんまり読まなくてもいいけど、中高生ぐらいまでの間に恋愛メインの少女マンガを読まないと、恋愛描写に弱点を抱えるぞ、と。


 浦沢だとか井上だとか、まあ3本以上ヒットとか言っても、ヒットの定義がちゃんとしてないので、そもそもそこから決めないと話にならないので、まずは条件を箇条書きにしましょう。

 ・巻数累計で1000万部を突破している。

 ・アニメ化、ドラマ化、映画化のどれかを果たしている。

 ・小学館漫画賞、講談社漫画賞、文化賞、このマンガがすごい! マンガ大賞などの賞を受賞している。

 このどれかを果たしていたら、まあヒットとしておきたい!

 実際はマンガ大賞などはヒットとはちょっとずれていたりするのですが、全3冊ぐらいの作品に小学館漫画賞とか送られているので、売り上げだけとかメディア展開だけとかを気にして、本質的な漫画の面白さをないがしろにしたくないのです。


 それでですね、今回私が言いたいのは、お前ら、もっと少女マンガも読め!

 のだめとか、ハチクロとか、NANAとか、君に届けとか、まあそういう大ヒット作だけでもいいけどさ。

 少女マンガの心理描写とかは、絶対に面白いし、表現の幅を広げてくれるから!

 ホットロードを読んでつまらんとか思うやつは感性がおかしいから、ちゃんと自覚しろと!(ただし既に成年している場合は除く)

 おいらみたいなおっさんですら、ちはやふる、マロニエ、成田美名子、川原泉あたりは集めてるし、最近でも町田くんの世界は面白かった! 深夜のダメ恋図鑑は怖かった!

 むしろ高校生ぐらいの時は、少女マンガの方が多く集めていた記憶さえある。




 前書きが長くなりすぎましたが、今回紹介するのは、少女マンガ界の隠れたレジェンド、河原和音さんです。

 この人の~何がすごいか~それ言うと~!

 完結した長編四作品、内一作は原作ですが、全て映画化しているということなのです!


 先生!

 高校デビュー

 青空エール

 俺物語!!


 現在連載中の「素敵な彼氏」だけは、たぶん映画化はしないかな。してもドラマ化までだと思いますが。

 描いた長編全て映画化なんて、男の漫画家にもいませんよ!

 まあワンピースみたいな一本だけの例外は除きますけどね、さすがに。


 その中でも特に男性にもオススメ出来るのが、高校デビューですね。

 主人公春菜は中学時代を部活に捧げたので、高校に入ったら恋愛をしてみたいと。

 気合を入れて恋愛しようとするのですが、おおいに空回るのです。

 そんな彼女の前に現れたのが、見るからにモテオーラを持つヨウでして。

 普通ならこのヨウに恋をしてしまうのでしょうが、春菜は「どうしたモテるんでしょう!」と教えを乞いに行ってしまうのです。


 ずれてるなあ、というのが大半の感想かもしれません。まあ確かに春菜はズレてるんですけどね。

 でも彼女のパワフルさは、お相手を見つけてラブラブになった後も、逆に彼氏を振り回してしまうこともあるのです。

 男子諸君が女の子に求める、分かりやすい可愛さとかは彼女には乏しいです。

 しかし彼女には彼女だけの魅力があり、そこに魅かれる人間がいるのも確かだと思います。

 のだめほどに奇抜ではありませんが、コミカルな描写も読むのに楽しいですね。


 なんだか前書きの方が長くなってしまいましたが、少女マンガには隠れたレジェンドが何人もいるんですよ。

 ごくせんの森本梢子とか、海月姫の東村アキコとか。

 ちょっと年齢層高めなら、24年組とか35年組という言葉を聞いたことがあるかもしれません。


 ちなみに一番極端なレジェンド(と言うにはまだ若いですが)は岩本ナオさんだと思います。

 小学館漫画賞を受賞して、このマンガがすごいの女性部門を二年連続で受賞してますから。




 というわけで、ワンピースの面白さが分からず、花より男子の面白さも分からないおっさんが、今回は好き放題言わせてもらいました!

最近読んだ中で一番異色の面白い作品は「ジェンダーレス男子に愛されています。」かな。

ちゃんと男女のラブコメなんですが、絵的に百合百合しいのです。

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