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53話 社交界、酔っ払いに絡まれる

 恥ずかしさに庭に逃げたウツィアは火照る顔をどうにかするので精一杯だった。


「ふう……ウェズの素直さが怖いわ……恥ずかしすぎる」


 自分がタイプと言われると嬉しいし、ウツィアもウェズが好みのタイプと勢いで応えたけど紛れもない本音だった。

 ここにきて自覚するなんて。


「ウェズが好き」


 急な結婚で家族として仲良くなれればと関係を深めようとしていた。動揺したり苦しくなったりするようなものが生まれるとは思ってなかったので戸惑うばかり。


(仲良くなってるとは思うけど)


 理想の家庭を築けるのかと問われるとこのままいけば、そこには到達しそうだ。けれど今はもうウツィアが抱いている想いが違う。このままだと仲良く穏やかで幸せな日々はすごせるけれど、ウツィアの想いは満たされない。

 ただ一つ、ウェズへの気持ちが違うだけなのに。


「……こんなに違うものなの?」


 ウツィアにはいまいち齟齬がよく分からなかった。会場を見るとウェズが王子と王女と話しているのが見える。なのに器用にウツィアを見ていたことに気づいた。

 軽く手を振ると視線をはずされる。見ているのが知られて気まずそうだった。


(過保護ね)


 先日の件があるから仕方ないけれど、かなり慌てた様子のウェズを思い出して、彼の視界の範囲で安心できる場所にいようと努めた。

 庭には明かりもきちんとあり、いくらか人が出ている。けれどあるところを避けて歩いている人の姿が目に入った。


「?」


 いくらかあるベンチの一つに座り込む男性が一人、座ると言うよりほぼ寝ているに近いほど身体を崩している。呂律の回らない言葉と大声が響いた。


(酔っ払いね……ここにいるということは貴族のはずだけど)


「うえええ」


 吐きそうなのに吐けない様子だ。ウツィアは周囲が避ける中、その男性に近づいた。


(酔っ払ってるにしては具合が悪そう)


 呻く姿を見るに悪酔いしている。


「なんだあ」

「あの、」

「うるせえな。酒飲んでもいい日だろうが」


 飲んでもいいけれど、すく側に王族がいる中でこれはだめな気がする。王城の騎士たちが離れたところで話し合ってるから、そろそろ連れていかれてしまうかもしれない。


「吐き気止めいります?」

「……は?」


 連れていかれるのは仕方ないとしても、体調は少しでもよくなった方がいいだろう。

 社交界用の小さなバッグにいくらか薬は忍ばせていた。吐き気止めも当然ある。


「酔い止めは効き目薄そうなので、吐き気止めだけでも」

「え?」


 ウツィアの態度にぽかんとしてしまう。酔っ払いは思わず吐き気止めをもらってしまった。

 薬の入った小瓶とウツィアを何度も交互に見る。先程まで誰一人として見向きもしなかった。見張りの騎士は追い出そうとじりじり接近してきている。


「わざわざ酔っ払いに絡むのかよ?」

「自分が酔っ払いって言えるなら、まだ酔ってませんよ。それに気持ち悪そうでしたし」


 毒気を抜かれる。珍しい人間が貴族社会にいるものだ。

 ええいままよとウツィアの薬を飲み干した。


「即効性があるタイプなんですけど、どうです?」

「……すげえ。気持ち悪くない」

「よかったです」


 それでは私はこれでとあっさり去ろうとするウツィアを呼び止める。


「待ってくれ! こんなに優しくされたのは初めてだ!」


 ウツィアの両手をとりガシッと握りしめた。


「え、はなしてください」

「ずっと酒飲みで見捨てられてた俺に手を差し伸べてくれたのはあんただけだ! 結婚してくれ!」

「無理です! 私もう結婚してて夫がいます!」

「そうなのか! なら仕方ないな! 諦めるわ!」

「なら、はなしてください!」


 酔っ払いがさらに何かを言おうとした時、その手首を強い力で掴まれる。


「離れろ」

「旦那様」


 さらに力がこもり、男は痛さに手を放す。すかさずウツィアを背に隠してウェズが間に入った。


(すごく怒ってる)


 びりびり身体中から怒りを発していて、みなくても分かってしまう。

 ウェズはさらに力を込めた。


「いたたたた」

「旦那様、それ以上はいけません!」


 骨が折れると咄嗟に感じ、前に出て夫の腕に触れると力を込める手が止まる。見上げてもウェズはウツィアに視線を寄越さない。


「ウェズ」


 名前を呼ぶと今度こそ手を放した。

 そのままウェズの腕がウツィアの腰に回り、引き寄せられた。


「私の妻に何をしている」

「あ、違うんです。酔いが回って吐きそうだったので吐き気止めを差し上げただけなんです」


 ウェズはなにも言わない。そのかわり酔っ払いの方がウェズに気づいた。


「その仮面……まさか戦争英雄?」

「あ、そうです。夫のポインフォルモヴァチ公爵で」

「おおおおおおすげえええええ!」


 いきなり酔っ払いが妙なテンションで騒ぎ始めた。


(なぜかテンションあがったわ……)


 やっとというべきか、王城の騎士が数人駆けつけて酔っ払いを取り押さえる。


「公爵閣下、夫人につきましては大変失礼を」

「いえ、誤解です」

「連れていけ」

「旦那様!」

絡まれるっていうか、ウツィアが絡みにいってるというか(笑)。ウェズはウェズで「ウツィアに触らないで!」な感じでやってきました。てかもっと早くに警備が引っ込ませればよかったという話ですね。


今日のちょこっと占い→お洒落して外にでましょう(熱中症に気を付けましょう)。ぐいぐいガンガンにいきましょう。電車・車に乗るとさらによし。

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