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52話 好みの女性は、ウツィアだ

「ウツィア」

「は! はい!」

「どうした? 気分が悪いなら帰るが」

(心配)


 ウェズは自然な動作でウツィアの頬に触れた。

 こんな公共の場で! とウツィアは慌てる。

 一方、世間の噂を鵜呑みにしている周囲は、仮面をつけた恐ろしい公爵が自身の妻にとても甘い行動をとっていたことで驚きのざわめきが起きていた。


「ぐ、具合は悪くないです!」

「先程から周囲を見ていたが、会いたくない者がいるのか?」

(いるなら、ぼこぼこにすればいい)

「い、いいえ、違うんです」

「話して」

「え?」


 ウェズの眉間に皺が寄る。


「そこまで不快にする奴がいるなら今始末するから」

「落ち着け、そうじゃない」


 なんて物騒なことを言い出すのだろう。真面目な印象を受ける分、本気で言っているように感じる。もっともウツィアが思っている通りウェズは本気で言っていた。


「では何故?」

「あー……あー……怒らないでくれます?」


 上目遣いで見つめられて可愛いと思う反面、怒るとはどういうことだろうと首を傾げる。ひとまず先を促すことにした。


「ああ。話して」

「ウェズの好きなタイプって誰かなって」

「え?」

「この会場の中にウェズの好みの女性っているかなあって見てました」

「……え?」


 驚きすぎてウェズは暫し固まる。それを不快にさせたとウツィアは焦って言い訳をした。


「深窓の令嬢タイプとか実は年上とかって考えてて……」


 ウェズの思っていたこととは違い、真剣に悩んでいるウツィアに盛大な溜息が出てしまった。彼女の両肩に手を置く。これは君に対しての溜息ではないと誤解ないよう添えた。


「王女と王子のせいか」

「す、すみません……その」


 壁際にいた為、周囲からはそこまで見えない。近い所に人もいないから何を話しているかも聞こえないだろう。

 ウェズはこくりと喉を鳴らした。言ってもいいのだろうか。ウツィアは嫌がるだろうか。でも誤解されたままも嫌だった。


「…………君だ」

「え?」

「私には……君だけだ」

「え、その?」

(あ、耳赤い)


 短い一言だけではいまいちウツィアにはピンとこなかった。


「ど、どういうことですか」

「……」

(はっきり言うのは恥ずかしいが……言わないと駄目だろうか)

「……」


 しばし無言の後、しっかりウツィアを見つめる。


「その、好みの女性は、ウツィアだ」


 ついには顔を真っ赤にさせた。


(ああああデレすごー! だめ恥ずかしい!)


 まさか公の場でそんなことを言われるとは思ってなかったウツィアも顔を赤くする。


「あ、ありがとうございます」

「……君は?」

「え?」

「君はどうなんだ」


 なぜかタイプの男性について問われた。両殿下との会話でそんなこと話題にも出なかったのに、どうしてきくの?

 けれどこの流れで自分が言わないというのは夫に失礼だと思えた。まだ顔を赤くしたまま、ウツィアも意を決してウェズの問いに応える。


「わ、私も、ウェズがタイプですっ! す、すみませんすごく暑くて少し庭に出ます!」


 言い切るとすぐそば、庭へ続く大窓から走り出て行った。

 ウェズは追えずに、その場に立ち尽くす。


「……」

(嬉しい……好き)


 沈黙の後、右手を胸元まであげてぐっと握った。

 周囲は噂の英雄の奇行に震えながらも黙って見守るものの、小さなざわめきはそのままだ。

 そんなウェズの様子を見て近づいてくるのは当然王子と王女だけ。


「ウェズ、面白いことしてんじゃないわよ。笑いが止まらなくなるでしょ」

「王女」


 視界の端にウツィアが見えるのを前提に両殿下に向き直る。


「少しは進展した?」


 やぶへびすぎると思いつつ、ウツィアからの言葉が嬉しくてなんでも許してしまう。


「余計なお世話です。そもそも私と彼女は、」

「言わないでくれる? あんたのその判断マジでむかついてんのよ」


 満面の笑みで言う王女の目は笑っていなかった。


「ウツィアの幸せを考えてのことです」

「はあ? 違うでしょ! あんた逃げてるだけだし」

「殿下」


 これには同意と王子も苦笑する。


「ウェズ、お前ウツィアのことあんなに好きなのになんでそんなかな?」

「しかし」

「いいの? こんなに好き合ってて、その時がきたらお前は言えるわけ?」


 この結婚は契約だったので解消しよう。君は自由だ。好きに生きるといい。

 とても言える気がしなかった。

 側にいてほしい、本当の家族になってほしい。できれば自分を好きになってほしいし、ウツィアを好きなことを許してほしい。

 これが本音だ。


「……」

(諦められない)

「はっ、仲深めて今更悩むくらいなら、さっさと正式にくっつきなさいよ」

「……」

「ウェズ、今自分がどんな顔してるか分かる?」

「え……」


 王女が周囲に聞こえない程度で舌打ちをした。けれど次の声はある程度周囲に聞こえてしまう。


「いい加減にしなさいよ! そんな顔するぐらいならさっさと愛してるって言ってきなさい!」


 英雄が怒られてる。

 夫婦喧嘩?

 いやさっきのはどう考えても喧嘩じゃなさそうだった。

 と、周囲から様々な憶測を呼ぶ。

 そんな両殿下との会話で油断していた矢先、視界の端のウツィアは酔っ払いと対峙していた。

あんまりにもウツィアが誤解していたので、ウェズ頑張りましたよ! まあぶっちゃけキンガの言う通り、愛してるって一言がド直球で分かりやすくて最適なんですけどね~。というわけで次話は酔っ払いモブが登場します(笑)。

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