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48話 何もしない朝ちゅん

「私、ウェズのとこに戻ろうかしら」

「え? それは、」

「みおくるよ!」

「ぼくもみおくる!」


 アントニが何か言いかけるも周囲の子供たちの見送るよコールによって遮られた。

 どうしようかと思ったところで孤児院の扉が勢いよく開く。


「ウツィア!」

「あ、旦那さ、」


 走り寄りそのまま抱きしめられる。子供たちがきゃーきゃー喜んだ。


「ちょ、子供たちの前です!」

「どうしていなくなった!」


 それは誠心誠意謝らないといけないところだ。けれど、今は離れてもらわないと恥ずかしすぎてどうにかなりそう。

 ウェズの後ろからおずおずと孤児院の院長が現れた。


「申し訳ありません、公爵閣下。私を庇って」

「いえ、院長のせいではありません」


 見たところ院長にも怪我がなさそうで安心した。


「アントニ、お前の魔法のおかげで助かりましたけど、公爵夫人と二人だけで道を進むのは危険ですよ」


 悪意から離れることと、孤児院近くに悪意がなかったから移動したのだけど、その手の話をしても伝わらないだろうなとウツィアはのほほんと考えた。にしても一向に抱きしめる腕の力をゆるめてくれない。この夫、どうにかして。


「旦那様、離れてください」


 逆に力が強まった。


「先程の件は閣下のお力のおかげで解決しました。何かあれば治安隊もおります」


 ご迷惑をおかけしましたと深々と礼をとる院長。

 ウェズ越しにそういった真面目な会話をしたくなかった。


「院長とアントニに怪我がないようでよかったです」

「では失礼」

「え?」


 終わりを見せた途端、ウェズがウツィアを抱え上げて横抱きにした。


(お姫様抱っこ! また?!)


 よりにもよって子供たちの前で! とウツィアは叫びたかったけれど、ウェズが勢いよく歩き出したので声も出ない。首に腕を絡ませて落ちないようにするのが精いっぱいだった。


「ウツィア、お姫様みたーい!」


 最後に聞いた子供の言葉は言い得て妙だ。お姫様抱っこなだけに。


「……」

(すごく心配した)

「……」

(気まずい)


 夜なのが幸いだった。赤面しててもバレない。

 ただ夫の不機嫌さだけはよく分かった。乗馬の時よりも早く大股で歩くから振動も大きい。慣れれば落ちる程激しいわけではないから、なんだかんだウェズは感情を抑えきれている。

 すぐに宿屋に着いた。扉を開くと側近のカツペルが控えている。


「あ、奥様いました?」

「……」


 ウェズがものすごい眼光でカツペルを一睨みする。苦笑して「人払いしときます」と言うと、ウェズはウツィアを抱いたまま部屋へ直行した。

 器用に扉を開けて中に入りきちんと閉める。鍵もちゃんとかけたわね。


(怒ってるけど冷静だわ)


 そのままベッドにゆっくりおろされた。

 ウェズもベッドに乗り込んできてウツィアを抱きしめ、そのまま一緒にベッドに沈む。


「え、なにこのデジャブ感?」


 目を白黒していると、片手で上掛けまで持ってきた。寝る気だと悟る。


「あの、ウェズ」

「……騒動をおさめて人込みから出たら君がいなかった」

「その、」

「ぞっとした。巻き込まれて暴漢に連れ去られたのではとか、色んな悪い事が頭を巡った」

「申し訳ありません」

「君を失うと思うと、心底怖かった」


 抱きしめる腕に力がこもる。

 アントニの魔法で知らせを聞くまでの僅かな時間はウェズには絶望的な時間だった。

 そんな深刻な夫の気持ちを理解しつつも、ウツィアはその言葉を巡らせ赤面する。


(それって私のこと大切に思ってくれてるってこと? )


 ウツィアの考えに追い打ちがかかる。


「血の気が失せたし、胃のものを吐くかと思った。戦場でも味わった事のない恐怖だった」

「ごめんなさい」


 そこまでして自分の安否を気にしてくれると意識されているのだろうかと期待してしまう。

 不謹慎なことを考えていることは分かっていた。けれど期待してしまう。


「これから一人で行動しないでほしい」


 震えているように感じた。今までは彼の領地にいて外部の悪意というものと縁がなかったから尚更心配なのだろう。


「分かりました。ウェズの側にいます」


 一人ではどこにも行きませんとはっきり伝える。ウェズがほっと肩の緊張を緩めた。


「ああ」

(よかった )


 そして少し雰囲気が和らいだところでウツィアは遠慮がちに夫にお願いする。


「あの、このまま寝るにしても着替えたいんですけど」

「……」


 少し体を離され見つめ合うような形になる。さすがにドレスのままは厳しい。王都で着るわけではないのだけれど、寝衣でゆったり眠りにつきたかった。なのにウェズは不機嫌な目線をウツィアに送る。


(機嫌が完全に直ってから言わないといけなかったかしら)


 すると急にウェズがウツィアの服に手をかけた。


「え?」


 手早く脱がされる。


「え? ええ?」

(まさか今日ここで本懐をとげるわけ?!)


 急展開に追いつかないウツィアを目の前にウェズが自分の服も脱ぎだした。


(えええええ!? マゼーニャの言った通りになっちゃうわけ?!)


 互いに服は着ているものの、ウツィアは下着だけでウェズはシャツを羽織っている程度だ。


(な、なにが起きてるの? ハ、ハネムーンベイビーがくるの?!)


 戸惑うウツィアにウェズが再び抱き込んでくる。


「わぷ」

「放したくない」

「!」

(ひっえ)


 動揺するな、流れに身を任せるべし! と心の中で叫び続けるウツィア。


「今日はこのままで」

「……え?」


 このまま?

 ベッドに雪崩れるようにインして、服まで脱いだのに、このまま、とは?


「このままで?」

「このままで」

(近くじゃないと安心できない)


 声を大にして言わなかっただけえらい。


(どういうこっちゃねん!)


 ここまでして何もないの? どういうことなの? 頭上に疑問符を沢山浮かべながら、どっときた疲れに身を任せ早々にウツィアは寝てしまった。

 翌日、何もしない朝ちゅんを迎える。

(っ'-')╮=͟͟͞͞ (シリアス) ブォン

ウェズは「側にいないとウツィアどっかいっちゃう!」っていう焦りで視野がかなり狭い。ほぼほぼ本懐を遂げられそうだったのに(笑)。


そして割とどうでもいいことですが、屋台で買ったのはウインターティーとホットビール。モデル国冬場のメジャーな飲み物です。

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