47話 ウツィア、孤児院へ付き添う
すると、その考えが霧散するような大きな声が街中にあがった。夜は割と酒に酔った人間同士で喧嘩は起きやすい。見ると少し先で中年の男性が子供に手を上げようとしていた。それを庇う女性の姿も。ウツィアにはそのほんの少ししか見えず、前に出たウェズによって遮られた。
「様子を見てくる。ウツィアはここに。決して動かないで」
「……分かりました」
喧嘩の仲裁に入る気らしい。ウェズが向かう頃には人で多くを囲まれ、喧噪だけしか聞こえなかった。それでも嫌な雰囲気だけは分かる。
(嫌悪感……攻撃……あとは羨望)
悪意に敏感なウツィアはみようとしなくても中心で渦巻く感情だけは感じ取った。周囲に同調する感情が増えていく。これ以上増えたら気持ち悪くなりそうだと思った時、大人の間を縫ってウツィアの目の前に子供が出てきて躓いた。
「大丈夫? あら」
「あ、ウツィア、さん?」
以前孤児院に訪問した時に出会った孤児の一人、アントニだった。年長者の一人で養子先が決まっている。小さな子供たちに囲まれてほとんど会話はできなかったけど、ウェズが贈った物をきちんと受け取り管理してた子で見覚えがあった。
「怪我はない?」
「大丈夫です。その院長が」
ウェズが離れる前に一瞬見えたのは子供と女性だった。それはきっとアントニとそれを庇う院長。知っている人だったからウェズが向かったと今更気づく。
「大丈夫、夫が向かったわ」
「本当ですか?」
途端、大きく安心する。ウェズが孤児院の孤児と信頼関係を結べているからだと思うと、優しい人なんだと改めて胸があたたかくなった。
「あ」
街の治安部隊が出てきた。喧噪が強まる。
「……アントニ、一度ここを離れた方がいいわ」
「え?」
感じる悪意がくすぶった。こうして無理に押さえ込まれた悪意はちょっとしたことで大きな暴力になる可能性がある。治安隊に諫められ行動はやめたとしても、アントニを見て怒りをぶり返す可能性があった。
ウツィアとしてもウェズとの約束がある手前、離れるのはよくないと分かってはいたけれど、アントニの安全が第一優先。後でウェズに怒られても、言い分は聞いてくれるはずだ。
「孤児院に送るわ」
「……そしたら」
アントニは誰にも見えないよう手元で何かを光らせた。
囁いた言葉からウツィアはすぐに分かる。
「魔法?」
「簡単なやつです。院長に知らせを出しました。落ち着いたら真っ直ぐ孤児院に来ると思います」
喧噪の中、するりと抜けて孤児院へ向かう。追いかけてくる者も絡んでくる者もいなかった。
「産まれつき魔法が使えるんです。なので隣の国の魔法が使える貴族様に引き取ってもらえることになって」
「それは素晴らしいことだわ。隣国がよく許してくれたわね」
「はい。公爵様が王女殿下に進言して下さって叶ったんです。向こうで魔法について学ぶことができるって」
「嬉しいのね」
「はい!」
そして今回のいざこざについても話してくれた。
夜ということもあり、小さい子供を外に出せない。祭で売られる物や食べ物でほしいものがある子供の為に、アントニが代表して院長と共に出てきた。そこを酒に酔った大人が難癖つけて物を盗んだと濡れ衣を着せてきたのが始まりらしい。
「たまにあるんです。うちは援助も多いからああ言ってくる人も多くて」
「そう……」
事が大きくなるとその度にウェズが出て話をまとめてくれるらしい。
「あんとに!」
「あら」
無事孤児院に着いた。敷地内に入った途端、扉が開いて子供たちが出てくる。
「おまえたち、出てくんな!」
喧噪はないし悪意もない。誰かが追ってきてもいないから安全なのだけれど、アントニは安心できず小さな子供たちを孤児院の中に戻した。アントニのお土産に子供たちは皆嬉しそうにしている。
「ウツィア!」
「ウツィア、どうしてきたの?」
「ウェズは?」
一度だけしか会っていないの覚えてくれていことが嬉しい。
でも子供たちがウェズのことをきいてきて、大丈夫だろうかと心配になった。度々仲介してくれているなら慣れているだろうし、剣の腕だって当然誰よりもたつのだから心配することなんてないのだろうけど、感情は納得しない。
離れちゃうの…と思いながら書きました。でもとどまっていたら、またしても酔っ払いにいちゃもんつけられていたかもしれないですよね。あとは感じる悪意に酔ってしまう可能性もありますし。とは言いつつもウェズからしたら約束した場所にいないのはって話です。
今日のちょこっと占い→とにかく今日は動くと吉(熱中症に気を付けましょう)。外に出なくても行動を起こせればよき。今取り組んでいる事でも初めてな事でもOK。




