39話 女装も男装もせず、領地回りをする
「あっれ、女装も男装もしてない?」
「いやでもあれが本来の姿じゃなくて?」
「なんかしっくりこないけど」
「いやしっくりこないはおかしいだろ。同意するけど」
再び領地回りに出た夫婦を見てマヤの親族は驚いた。事前連絡で見た目について注意はなかったけれど、目の当たりにすると違和感がある。
「いつも美味しいワインをありがとうございます」
「は、はい」
以前来たからか挨拶程度で済んだ。ウツィアは先日自分の店で仕事をしていることがウェズに知られなかったから気が楽だった。かなりリラックスしている。
夫であるウェズは占いの結果に悩んでいた。自分自身の問題、妻と話すこと。どれも中々踏み出せない。
「ウェズ、どうかしました?」
「あ、いや……なんでもない」
「普段はどのくらいの頻度で領地回りされてるんですか?」
男装して店をやっているとマヤの親族からウェズが領主として仕事をしていることはよく聞く。知ってはいたけれど、ウェズが占いの時に緊張していると言っていたし、そう見えたので当たり障りない話を振るときちんと応えてくれた。
「週に一度の頻度で、回る場所を分けて一ヶ月で回りきれるようにしている」
「大変そうですね。お休みとってます?」
「自治会を組んでもらい管理しているから、私がするのは簡単な確認ぐらいだ。苦ではないな」
改めて夫の口から聞いた領地内の仕組みは画期的だ。区画分けをして自治会をもうける。領民に管理させ、商会とも密接に関わってもらうことでほぼ独立していると言っても過言ではない。
「画期的ですよね」
「何が?」
「大体領主の貴族が大きく管轄するのが多い中で、領民に任せて領地経営を担ってもらうってすごいと思うんです」
ウツィアの実家も前者だ。元々小さな領地だから全てを領主が管理するのは簡単な方だし、父親自ら商売をしているので前者のやり方の方が易いのだろう。ただウェズの領地は広い。農業も小売業も専門業もあるし、森や川の管理もある。となるとウェズの今のやり方は利に叶っていた。
「人に任せられるってすごいことですよ」
「その人しかできない仕事もあるだろう」
人の過去や感情を見たり、占いができるのはウェズの記憶の中ではウツィアだけだった。
「広い領地の多くの領民の生活水準をある程度保つなら、今ウェズがしていることは正解だと思います。もちろん専門業もあるのでそこは例外ですが」
「そうか」
「ええ。僅か数年でここまで領地の発展と安定を保てるのは中々できないですよ」
しかも自身は戦争に出ていた。その間に領地が自立できるまでにしているのは、やはりウェズの領主としての実力がないとできない。
「ここの領民がしっかりやってくれているから」
「それでも、夫が騎士を育て外から守り、中の発展を促してくれたから今があります」
さすがのウェズもウツィアが褒めてくれているのだと分かった。先程まで考えすぎていたのを察してくれたのかもしれない。
「……ありがとう。君に褒められると嬉しいものだな」
「いいえ」
(す、素直! 感動!)
自然と微笑むようになったことはウツィアしか知らない。
実際本当にウェズはよりよく領地経営をしていた。武器と防具を領地内で生産するだけでなく修繕も行えるよう設備を人材を整えて隣国セモツとの戦いに対応できるようしていたらしい。敷地が広いため、酪農畜産も盛んで、自然地帯でとれる琥珀の加工も力を入れている。
(なんだか私がいなくても問題ないわね)
一緒に領地回りをしていても順調な姿しか見ない。ちょっとした相談も夫であるウェズが即時対応してしまう。
そうこうしている内に、最後、南側セモツとの境界も近い自然地帯に入った。
「馬に乗るが、辛いようならすぐに引き返す 」
「大丈夫です! うまくなったでしょう?」
せめてアピールできるところはアピールしておこう。乗馬の技術が点数稼ぎになるのか分からないけれど。
雪が僅かにちらつく中、進むことになった。自然が多く残る森は人が行き来しやすいよう道が作られ、冬の今は雪かきも済んでいる。
「確かによく乗れている」
(可愛い)
「ふふふ、ありがとうございます。ウェズが教えてくれたからです」
ウツィアの笑顔にウェズの顔も緩んだ。相変わらず心臓を掴まれながら、ウェズは隠せてもいないのに隠そうと顔に力を入れて引き締めようと努めた。
「ゆっくり回ろう」
ドヤ顔で馬を乗りこなすウツィアに可愛いと和むウェズ。なかなか平和な脳内してるよなあと思います。ウェズは胸キュンしすぎてキュン死するんじゃ?と心配なレベルになってきましたね!(笑)
今日のちょこっと占い→暑いので散歩は夜にでもどうでしょう(熱中症に気を付けましょう)。エビとか食べるのもよし。




