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35話 チンピラに女装がバレる

 一晩寝泊まりした翌日。

 領地の騎士舎に部屋を与えられた男二人は癒されていた。


「この冬に家があって服があって飯があるの最高だな」

「ああ。ここ選んで正解だった。あの奥様、俺たちの言いたいこと分かってくれてたし」

「まあ側仕えでなくてもよかったけど」

「そう言うなよ。うまくやろうぜ」

「おう」


 見習いの騎士服に着替えた二人が鍛錬場に出ると、ちらほらと騎士たちが訓練している。割と規模も大きく設備が整っているのは噂に聞いた通りだ。


「ん?」


 妙な圧がかかる。振り向くと、側近カツペルを連れたウェズが渋面を極め、殺気そのまま近づいてきた。

 昨日の今日で、ウェズは全く納得出来ていない。けれど妻であるウツィアがあそこまで真剣に訴えてきた以上無碍にはできなかった。


「ひっ」

「やば……死ぬ」


 鍛錬場にいた騎士たちが気づき、動きを止めウェズに一礼する。彼は軽く手を挙げてそれぞれ鍛錬を再開するよう無言で指示を出した。


「ええと、名前がヤクブさんとシモンさん」

「は、はいいい!」

「こっちがヤクブで俺がシモンですうううう!」

「自分はカツペルと言います……領主様、殺気しまいましょうか?」


 多くの戦場を潜り抜けた英雄の殺気はたまったものではない。いくら好きすぎて女装して会いに行ったり、契約の末に自由を与えようとするずれた重い愛を向けている大事な妻を狙った男たちとはいえ、そこまで敵視しては可哀想だろうとカツペルは自身の主を諫めた。


「ほら、彼らの経歴は調べたでしょう。問題ありませんよ」

「……」

(解せぬ)

「奥様に言われたでしょう? あんまりいじめると奥様が悲しむと思いますが」

「……今の実力を確認する 」


 仕方なく感が半端ない。


「え? 旦那様が相手で?」

「私が最初から最後まで指導する 」

「そんな勿体無い」

「妻の側仕えなら当然だ。私が納得するまでやる」


 嫌な予感。

 ヤクブとシモンには冷や汗しか出ない。

 冷たそうに見える自分たちの新たな主は気難しそうだなと感じた。


「あれ?」

「どうしたヤクブ」


 じっとウェズを見つめるヤクブにシモンが首を傾げる。

 側では生温かい笑顔で見守るカツペルと未だ機嫌が悪い主であるウェズが黙って二人の会話を聞いてた。主の前でいい態度とは言えないが、どちらにしろマナーといったものも叩き込むつもりだったので、このぐらいは想定範囲内だ。

 と、ヤクブが何かに気づいた


「 ……あ、おま、ちょ 」

「なんだよ?」

「あれ、旦那様、あの女騎士」

「え?!」


 今度はシモンがじっと見てくる。カツペルはこの時点でこれからされる会話に予想がついた。


「……マジだ。初めて奥様に会った時の女騎士じゃん」

「!」


 突然正体がバレたウェズは目を開いた。

 声を変える薬と、認識をずらす薬を使っていれば、あらかじめ正体を知っていない限りバレることはない。特に認識をずらす薬はどんなに違和感が出ようとも存在自体に疑問を抱かせないぐらいの強い効能があるのに。


「いや待って。なんで女装?」

「妻には言うな」

「え?」

「妻には、絶対、言うな」


 ヤクブとシモンは肩透かしを食らったような気になった。なんで女装していることにそんな鬼気迫った口止めがかかる?


「内緒にしてるんすか」

「てか奥様も男装してて、意味わかんねえですけど」


 それは自分もそう思うとカツペルは内心男二人に同意していた。これが原因で色々面倒にこじれてきてるんだよなあとも。


「お前達」

「ひっ!」

「すみませ!」

「……そんなにすぐ分かるものなのか?」

「……え?」

「そこ?」


 どうやら最愛の妻にバレるのではと考えてしまったらしい。殺気はとうに消え失せた自身の主にヤクブとシモンは目を合わせて無言で頷きあった。


「バレるとかないっすよ」

「そうそう。俺たちの元職業病みたいな?」

「どういうことだ?」


 経歴にありましたね、とカツペルがフォローする。


「セモツからの侵入者・潜入者の調査、ここですか?」

「そうっす。見つけ次第、国の騎士様に捕まえてもらうよう伝えるだけっすけど」

「すぐ見つけなきゃだったし、変装する輩も結構多かったんで目肥えましたわ」


 そもそもかつての敵国セモツ絡みの仕事をしていたから戦争英雄のウェズなら雇ってくれるとこの地に来たようなものだった。


「女装した男どもがいる娼館で働いてたこともあったし」

「あれは早めに辞めたけどなあ。一歩間違えると男娼やらされそうだったじゃんか」

「だなあ」

「……成程」

「大丈夫す。奥様には言わないし、かなりいい女になってるんでバレてないと思いますぜ」


 女装の出来を褒められても困る。そう思いつつも、今までの潜入捜査では女装をしていたので精度が高いのは悪くないかとウェズは勝手に納得した。


「ではそろそろ始めましょうか」


 丁度いい頃合いでカツペルが場を取り持ってくれる。

 途端、殺気が戻って来てヤクブとシモンは震えあがった。


「お、お手柔らかに」

「それとこれとは別問題だ」

「ひええええ」

「妻を守るのなら私が納得する実力を持ってもらう。相応の辛さはあるが承知の上なのだろう。私の妻の護衛を望んだのだから」

「げええええ」

「奥様好きすぎだろ、この夫」


 いつになくしごかれる姿に同じ鍛錬場にいた騎士たちも珍しがった。

タイトルが相変わらずひどい(笑)。経歴が経歴なので理解のありそうなウェズのとこに就職活動に来ましたヤクブとシモン。けど、経歴なんぞ関係なくウツィアに対して行った良し悪しの行動次第で評価が決まるという(笑)。ある種、人を見ているとも言えますな!

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