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25話 乗馬後の朝食のお誘い

「なあ俺さ、思うんだけど」

「なんだよ」

「領主様ってかなり奥様のこと好きじゃね?」

「あー……まあなあ」

「乗馬して足がくがくの奥様を横抱きにして連れて行くのを毎回やるとか過保護じゃね?」

「奥様も自分で歩くって言うのに聞かないしな」

「領主様、どことなく満足そうだし」

「言える。けど全然色気ないよな」

「付き合いたての子供みたいな?」

「そうだなあ。抱き上げるだけだしなあ」


 初秋に始め秋が深まった今、ウツィアの乗馬訓練は順調に上達している。周囲が生温かく見守る中、乗馬の回数も増え、なにより朝食を夫婦でとるようになった。


「まだ乗るのか」

(心配)

「今日はまだいけます」

「しかし無理すると」

「いいえ、やります」


 剣同様、ウツィアのやる気はすさまじい。夫であるウェズからすれば過剰にも見えるけれど、本人が興味を持ったことだから楽しいのだろうと思っていた。飲み込みも良い。閃いたウェズはさっとウツィアの後ろに乗った。馬に負担がないよう少しだけ。


「え?」

「少し駆けてみるか」


 本当にゆっくり乗り進めるだけだったのが、軽くとはいえ急に走り出してウツィアは驚いた。


(すごい振動くる! きつっ)


 頑張っている様子に気を遣ってくれたのは分かっていたけれど、慣れない刺激に舌を噛みそう。


「どうだ?」

「目、目が回ります」

「ああ、すまない。加減が分からなくて」


 軽く半周するだけで本当に目が回る。意図せず身体が持たなくて後ろにいる夫にもたれかかってしまった。


「ふわああ」

「!」


 ぎゅんと心臓を鷲掴みにされ、激しい動揺がウェズの身体に走る。


(迂闊だった! 距離が近い!)


 目を回してそれどころではなかった為、幸いにもウェズの心臓の早鐘はウツィアに聞かれずに済んだ。


(あ、柑橘の匂い)


 目が回りながらも夫の香水の匂いを感じて、何か大事なことが抜けている気がするとぼんやり思う。


(昔嗅いだ気がする……懐かしい)


 速度を緩めて馬を止めたウェズがウツィアの様子を見下ろし確認するも、そこまで表情が見えない。


「大丈夫だと思ったんだが、すまなかった」

(心配)

「い、いいえ、大丈夫です。謝らないで下さい」


 目を回して自力で馬に乗っていることさえできない様子に、ウェズはウツィアを横抱きして馬から降りた。


(お姫様抱っこはやめてほしいって言ってるのに)


 それでも目を回している手前、今日は歩けるとは言えないウツィアだった。しかも早朝自主鍛錬に来ている騎士に馬を任せてしまうから尚更恥ずかしい。


(抱っこしてる時はとても丁寧に歩いてくれるしなあ)


 ちらりと見上げると真っ直ぐ前を見て歩く夫の姿。最近は渋面から少しだけ和らいだ気がする。

 と、油断した所に盛大にお腹が鳴った。人のいない廊下だったから音がよく響く。恥ずかしさに顔が一気に赤くなった。


「……すみません」

「いや、運動をすれば当然の事だろう。食堂へ急ごう」

「いえ、お構いなく」


 食堂でお姫様抱っこで連れてこられても周囲の侍女侍従からしたらもはや当たり前になってしまっていた。慣れないのはウツィアだけ。

 ゆっくりおろして椅子に座らせれたウツィアは思わず離れるウェズの服の裾を引いた。


「あ、の、今日も朝食を、一緒にどうですか?」

「……ああ」

(可愛い)


 別に誘われずとも今では当たり前のように朝食をとっているけれど、彼女は毎回律義に誘ってくる。それが可愛いのでウェズはわざと誘いを待っている節があった。


「きゃっ」


 夫婦以外の声が聞こえて夫と目を合わせつつも声の方へ意識を集中する。


「こら、声控えて」

「あ、違った。私てっきり旦那様と奥様が口付けしてるものかと」

「聞こえるわよ。黙って食事を用意して」

「はいっ」


 侍女の小さな会話を聞いて、ウツィアは自身の失態を悟った。

 ウェズの服の裾を引っ張ることで、当然彼は上半身屈む。ウツィアを気遣って顔を向けているから、見る場所からしたらキスしているように見えて当然だ。


(やっちゃった! はしたないわ!)


 すぐに引いていた裾を放すも夫が離れる気配はなかった。


「どうした?」

「あ、ええと、いえ、その」

(今からご飯食べるの気まずい!)


 ウツィアの様子は逆効果だった。


「奥様、顔赤いけどやっぱり口付けしてたの?」

「分からないわよ。ほら仕事」

「んーまあでも仲がいいから良し?」

「そうね」


 墓穴掘ったとその場で頭を抱えたくなる。


(うぐぐ。てかこの人聞こえてないの? まあ私、耳も鼻もいい方だけど、だからって恥ずかしすぎる)


 今侍女にキスしてないからと否定しても無駄な気もした。この場合、諦めるしかない。


「ウェズ」

「どうした」

「これからは毎日朝御飯は一緒にしましょう?」

「え?」

(毎日のお誘いがなくなる……でも一緒に食事はしたい)


 そうすれば毎回誘う為に裾を引く必要なくなるものと妙なところでウツィアは拳を握る。一方ウェズとしては毎回可愛い仕草で食事に誘ってくれるウツィアに癒されていたので残念ではあったけれど、断る理由もないので承諾した。

いっそチッスしてしまってもよかったわけですが!(笑) ウェズもウェズでにぶちんです。一人少女漫画のヒロインのような反応をしています。まあどちらにしろ星読み上の二人の相性はばっちり良いので安心して下さい(笑)。付き合いたての子供みたいな二人がおいしい(´ρ`)

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