周りから見て
日常が続いて行く感じがします。
出場する種目のひとつである綱引きが終わり、他学年の競技を見る人が多い中、俺はさっさと昼食を済ませてしまわなければならない。なぜなら、午後は初っ端から1500 m走という鬼畜のスケジュールとなっているからだ。
雅紀はせっかくだから競技を見たいとかで残っているので、一人である。
「康太君」
「はい?」
教室に向かおうとグラウンドをぐるっと回るようにして教室に向かっていると、声をかけられた。振り返ってみると、声の主は……霧嶋さん。香奈のお母さんだ。
「こんにちは」
「こ、こんにちは……霧嶋さん」
「あっ、今忙しい?」
「いえ、大丈夫です」
「そう……なら、ちょっと時間貰ってもいい?」
「あー、はい。10分くらいなら」
「うん。そんなに長々と話したりはしないから」
昔は確か、おばちゃんとか呼んでいたけれど、久々に会うとどうしてもかしこまった態度になってしまう。少し沈黙が流れた間に、そんなことを考えていると、霧嶋さんが話し出す。
「香奈から聞いたわ。中学校での話。……うちの子が、ごめんなさい」
「い、いえ!そんな……」
急にそんなふうに謝られても、ちょっと困る。今となっては気にしていない、と言うか、昔の話として整理がついたことだ。
「……だいぶ前の話ですし、香奈にも謝られたので、僕はもう気にしてないです」
そう言うと霧嶋さんは微笑んで「そう……、ありがとう」と言った。
「あー、今日は香奈のことを見に来たんですよね」
「そうなの。あの子は来なくていいって言ってたんだけどね。康太君とも会えるかなと思ってきちゃった」
「あはは……。100 m走は1位だったみたいですね」
「あの子、足は凄く速いからねえ」
「ちっちゃいころはずっと走り回ってたイメージですね……」
そんな感じでいろいろと話をしていると、いつの間にか10分ほどが経ってしまっていた。
「あ、そろそろ時間なんで、行きますね」
「あ、ごめんなさい。ペラペラしゃべっちゃって」
「いえいえ。……じゃあ――」
「康太君」
「はい?」
「出来れば……。……やっぱりなんでもない。体育祭、午後も頑張って」
「あ、ありがとうございます」
軽く頭を下げて、その場を後にした。
教室に入ると、中には同じクラスの男子が4人いた。2人は同じ1500 mを走るやつで、もう2人はついてきたって感じだろう。普段はあまりしゃべらないけど、名前はちゃんとわかるし、体育の時とかには喋ったりするくらいの関係の人たちだ。
「お、柏木。……柏木も1500走るんだったか。頑張ろうな」
「うん。そうだね」
椅子がないので、みんな机に座って昼食をとっていた。俺もそれに倣って自分の机に座る。食堂に行ってもいいのだけど、時間もないしこれでいいだろう。弁当を開き、食べ始める。
「なーなー、柏木ってさ……霧嶋と仲いいのな」
「え?あー、ちょっと昔から知ってるというか、小中と一緒だったから」
「まじ?いいなあ……」
「羨ましいわ。霧嶋かわいいし」
「あはは……」
急に話を振られてびっくりした。最近、急に香奈と話すようになったから、ちょっと不自然だと思われているのかもしれないな。
「……付き合ってんの?」
「んぐっ!?」
予想外のことを言われて、飲み込もうとしたものがつっかえてしまう。何とか飲み込んで、否定をしなければ。
少し時間をかけて飲み込んでから、話す。
「……いやいや、付き合ってないよ。普通にちょっと喋るくらい」
「えー、ほんとか?」
「怪しいぞ、今の反応は」
にやにやと笑ってそんなことを言われる。
「違うって。……そんなふうに見える?」
「いやあ、柏木がというか、霧嶋がな」
「霧嶋ってあんまり男子と仲良くしてるイメージないし。なんか、壁を感じるって言うか」
「へー……」
そうなんだ。確かに、香奈が男子と仲良く喋っているのはあまり見ないかもしれない。……というか、女子でも五十嵐さんと特別仲良くて、それ以外の人と凄き仲良くしているのは見たことないな。
「でも違うのかあ……。つまんないような、安心したような……」
……結局恋バナ的な話が気になっただけか。でも、そう言われるということは、距離が近すぎるのだろうか。……どうしたもんかなあ。




