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自作小説倶楽部 第19冊/2019年下半期(第109-114集)  作者: 自作小説倶楽部
第114集(2019年12月)/「冬の樹木」&「鍋」
29/30

06 ちえぐりこ 著  冬の樹木 『歌う金糸雀の樹』

挿絵(By みてみん)

挿図/Ⓒ 奄美剣星 著 「冬景色」





あるところに 大きな木が立っていました。


広がった枝には葉がたくさんついていて 


太陽の光を浴びて 生き生きとしています。


風が吹くと ゴォッと音がして細い枝が揺れるのです。


そうして時々 葉のついた枝がポキッと折れますが


折れた場所の下の葉っぱは 

今までたまにしか当たらなかった太陽の光を浴びる事ができました。



雨の日には 旅人が雨宿りにやってきました。


「少しの間  君のそばにいさせておくれ。


 そうだ、お礼に 僕が見てきた他所の国の話を聞かせてあげる」


大きな木は嬉しくて 葉っぱを何重にも重ねて


旅人に雨の粒がかからないようにしました。


お話を聞いているうちに まるで自分も旅をしているような気持ちになるのでした。


「ありがとう 旅人さん。 気をつけていってらっしゃい。


 そしていつかまた ここで会いましょう」



冬の寒い日には 動物たちが寒さをしのぎにやってきました。


家の中のような暖炉はないけれど 


みんなで木のそばにいると とても暖かで安心できました。


自分のそばに来てくれる動物たちの安心する顔を見ていると


大きな木は 雪の重さに耐えられる気がしました。



嵐の日。


恐ろしいほどの強い風と雨の力で 


大きな木は途中から バキバキーッ と折れてしまいました。


嵐が止んだ後 自分の周りに散らばった枝や葉っぱを見て木は泣いてしまいました。


「あぁ。私はもうだめ。 旅人さんも動物たちも守ってあげられない・・・」


大きな木は もう大きな木ではありませんでした。



「泣かないで。 何もできない私だけど 大好きな歌を歌ってあげる」


半分くらいになった木の折れたところにカナリアがとまって


それはそれは綺麗な歌を聴かせてくれました。


歌声はたくさんの仲間たちを呼びました。


動物たちも 旅人もやってきて 泣いていた木を励ましたのでした。


木は「カナリアの木」と名づけられました。


カナリアの木は だんだんと勇気がわいてきました。


「また枝を伸ばせるかしら? たくさん葉っぱをつけられるかしら」


「大丈夫だよ。君はひとりじゃないんだからね。早く元気を取り戻してね」


木は嬉しくて 嬉しくて 


新しい芽が出るように 元気を出そう と思ったのでした。



あるところに カナリアの木という名の小さな木が立っていました。


小さいけれど 広がった枝には葉がたくさんついていて


どの葉っぱも太陽の光をいっぱいに浴びて 生き生きとしているのでした。


    

             ~ おしまい ~

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