05 ちえ・ぐりこ 著 鍋 『林檎とハチミツ』
挿図/Ⓒ 奄美剣星 「林檎と蜂蜜」
だめだ……
全然 美味くない。
昔からそうだ。
カレーだけは 美味く作れたためしが無い。
でも コースケが好きなカレーライス。
思わず言ってしまった、「今日は俺のカレー食うか?」
地獄鍋。
そうだ、これは地獄鍋だ。
そういう名前にしよう。
♪
「ただいま まーくん」
「お、おかえり」
ぴょんぴょん。
抱きつくなり 兎みたいに跳ねだすコースケ。 かわいい……
「おまえはゴム鞠か」
「まーくんの側にいると スーパーボールにもなれるねんで」
「アホか……スーパーボールになんかなったら、
どっか飛んでいっちまうだろうが」
「せやから 抱きついてんねやんか。 離さんといて」
か、かわいい……
大体、大阪弁がこんなに可愛いとは
コースケに出逢うまで思わなかった。
「な、カレー作ってくれたんやろ?」
「いや。 地獄鍋だ」
「うそやん、カレーのにおいしとるがな」
「いや……地獄な」
どろり……
「味見したん?」
「した。 でも全然美味くない」
パク。
「なんやー美味しいやんか」
「嘘だ」
「嘘と違う、ホンマや。 食べてみて? はい アーン」
アーンって お前。(//・_・//)
「ほら アーン」
「アーン」 パク。
?
「……美味い」
「せやろ? 一人で食べるから美味しないんやで。 これからは僕と一緒に食べてな?」
不覚。
なんで涙が出てくるんだ。
「コースケ」
「ん? なに?」
「俺のこと好きか?」
「……はい。まーくんが好きです」
♪
これからはカレーはコースケとだけ食べよう。
林檎とハチミツ入りの地獄カレー。
~おしまい~




