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Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第二章 クラマを探して
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地下水道2

「あたし、たち、ですか?」


 名指しされた千寿流は恐る恐る前に出る。初対面の人に用があると言われたのは、生まれて初めてかもしれない。


「ん、写真撮っていい?一枚だけでいいから」


「へ?」


 予想外の問いかけに思わず変な声が出てしまった。写真とはどういうことだろうか。こんな顔もよく見えない下水道の中では、フラッシュを使ったとしてもきれいに撮れるとは思えないのだが。


 意味が分からず怪訝な表情になっていただろうか、少女が顔色を窺うように言葉をつづけた。


「あ、気にするタイプだったら後で消すから。もちろん手元も見せながらね。それに顔と名前知られちゃったら、どっかの誰かに粛清されちゃうかもしれないからねー」


 どこかで見た漫画の受け売りで冗談のつもりで言ったが、異能(アクト)の中には本当に顔と名前で人を害する事ができる力を持ったものがあるかもしれない以上、笑い話にはできなかった。


「えと、別にあたしは気にしないので、その、大丈夫です。シャルちゃんもいいよね?」


 シャルはこくりと頷く。


 間髪入れずにカシャリ、と小さな音が鳴り、スマホのフラッシュが焚かれる。せっかく写真を撮ってくれるというなら、身だしなみをしっかりと整えてから撮ってもらおうと勝手に思っていた千寿流は再度面食らう。


「あ、ちょ、あたし髪とかぼさぼさだからちょっと整えるの待って!撮るなら撮るって言ってからにほしいよお」


「いいの、すっごくよく撮れてるから。じゃ、あなたたちここで少し待ってて。あ、言わなくても分かると思うけど変な真似したら――」


「分かってるよ。そう警戒しなくても何もしないよ。それにここにも罠は掛けられてるんでしょ。随分と念入りだよね」


 夜深の言う通り、この室内には汚れと薄暗い照明に紛れて、魔装陣と思わしきものがいくつか描かれているのが確認できた。


 魔装はその名の通り、魔導の装飾である。


 魔装が変われば得られる魔導の結果も変わる。それらは属性、種類は千差万別、扱う人間、詠唱や紋章の種類によって得られる効果も全てが変化する。例えば火の魔装からは炎が飛び出す、といった感じだ。詠唱や紋章が複雑化すれば、それに合わせて出力も上がるのが基本である。

 ただし、魔装には異能(アクト)のような法則や理を捩じ曲げるほど強大な力はない。それ相応の力を得ようとするのであれば、地区一帯を取り囲むレベルの魔装陣を描く必要があり、現実的ではない。

 早い話が能無し(ノーレア)でも扱える、特定の条件を介して発現する超能力(アクト)のようなものだと思って差し支えないだろう。

 その魔装の効果を陣に付与したものが魔装陣というわけだ。遠隔での操作はもちろん、術者の合図、特定の条件を付与することも可能だ。


「……」


 少女は夜深の発言に対して一瞥した後、何も答えることなく奥へと歩いていってしまった。

 背中を見せたことで初めて見ることができたが、少女の羽織ったジャケットの背中には帽子と同じく銀學のエンブレムが大きく描かれていた。


 夜深はそれを見て、なるほどね、と合点がいくのだった。


「銀、なにあれ?」


銀学(ぎんがく)、有名な魔導の学校さ。たしか私立白銀(しろがね)修扇寺(しゅうせんじ)魔導女学院(まどうじょがくいん)だったかな?中高大一貫の魔導を修める事だけを重きに置いた古臭い学校だよ」


 私立白銀修扇寺魔導女学院、長ったらしい学院名を略して銀学。都市の一角がまるまる学院の領地という異例の規模を誇る学院だ。


 学院内には中学の他にも高校、大学とあり、中高大一貫教育が取り入れられている。いってしまえば入学と同時に将来が約束されているようなもの。

 学院外にも学院管理下の魔導学について研究を行う研究所がいくつも並び、学生時代に優秀な成績を収めたものはそのまま各研究施設に就職も可能。といった将来までがエスカレーター式に組まれているのは、古い伝統の良い点とも悪い点ともいえるだろう。


 夜深は学院について、知っている知識だけで簡単に説明を終えると最後に「まあ、君にはたぶん縁がないところだよ」と付け足した。


 軽く馬鹿にしたつもりで言ったのだが、千寿流は馬鹿にされていると思っていないのか「えひひ、ありがと、夜深ちゃん!」とお礼を言った。


 それで、その名門に通う一学生であろう彼女がこんなところで何をやっているのかと、疑問は尽きないがひとまず彼女の言うとおりにするしかないだろう。


 下水道の中は臭くはないものの暗い。蛍光灯の代わりに灯された蝋燭の火がいくつも揺れている。光に照らされて明らかになるのは、この空間が昏くじめじめした陰鬱とした場所だということだけ。

 千寿流は何か面白いものはないかとふと目を横に向けると、化学薬品だろうか、いろいろな色の液体が薬品棚に掛けられているのが視えた。魔導とは言っていたが、他にも理科の実験のような要領で何かを作り出したりしているのだろうか。

 混ぜる液体によっては有毒ガスが発生するかもしれないから、色の変化や液性の特性などはしっかり把握しておけと学校で習ったのを思い出した。

 そういえば都市ガスは漏れ出した時爆発の危険性があるから、わざと人間が不快になる様な臭いをつけていると聞いたことがある。

 じゃあ、ここに並んでいる数々の液体もわざと色を付けてわかり易くしているのだろうか。


 ズラリと並んだ液体を目で追う。


(赤は危険そう、黄色は楽しい感じ、青は、うーんサイダーの色だからすっきりと気持ちがいいのかな?)


 そんな、どうでもいいようなことを考えて待つこと十分程度。




 ____目を疑った。


 そこにいたのはかつての面影。

 待ち焦がれて探し続けた少女。

 シャルの親友、クラマの姿があったから。

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