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Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
プロローグ
6/417

シャルちゃん

 あたしはその後、シャルルージュちゃんが管理する三日月館にしばらく住むことになった。

 家族はいたけれど、記憶を失っていたあたしはどこにも行く当てもなかったから。


「パパとママが見つかるまでよ」って言ってくれた。それでも嬉しかった。


 三日月館にいた時間はそこまで長いものではなかったけど、それでも大切な思い出だった。


「千寿流、お前また虐められてんのか? 俺がいっちょやり返してきてやるからそいつのデッキ教えろよ」


「でっき? なにそれ? あたし、虐められてなんかないけど」


「ノリ悪いぞお前! そういう時は黙って助けてくれーって言えっつの!」


「無茶言うのはやめてあげなよ、千寿流はカード分からないんですから」


 カードゲームがとっても好きな子。

 あたしは頑張って覚えようとしたけどやっぱりわからなかった。カードゲームってすごく難しい。


「千寿流、人生の先輩でもある私が良い事を教えてあげますよ」


「えっと、どんなこと?」


「どんな下らないことも笑いにつなげる事、ですよ」


「カード濡らされて笑うのは違うと思うけど、それって笑える? あのカード光ってたし」


「……慣れました」


 その子に付き合っていつも負けてる子。大事なカードにジュースとかもこぼされて笑っていられるのは凄いけど。

 あたしにはちょっと真似できないな。


「ねぇ、ちずちゃん、今度いっしょに卓球しよ! 体弱くても簡単なものなら出来ると思うんだ!」


「うん! でも、あたし卓球やったことないよ? 大丈夫かなぁ」


「私もやったことないから! いっしょに上手になってみんなを驚かしちゃおっか!」


 体が少し弱いけど前向きでいっしょに笑ってくれる子。

 あたしより年上ってこともあって、いつも引っ張ってってくれる頼れるお姉ちゃんだ。

 あたしもいつかこんなしっかりしたお姉ちゃんになりたいな。


 他にもたくさん。色々な人と友だちになれた。

 何で忘れてしまったんだろうか。それとも思い出せて良かったというべきか。


「そう、忘れてもいいのよ。記憶はあなたの事をいつまでも待ってくれているのだから。もし、あなたが忘れても、思い出せなくても、あなたの帰りをずっと待っていてくれるの」


 これは、シャルルージュちゃんの声?


「シャルルージュちゃんっ、あたしは!」


「ふふふ、なにそれ。いつもみたいに“シャルちゃん”って呼んでくれないのかしら?」




 ……ず……る……


 ち……ず……るっ


「ちずるっ!」


 少女の声で現実に引き戻される。今のは夢、それとも過去の記憶なのか。

 そして、ここは館の入り口?


挿絵(By みてみん)


「ちずる! はやくいこうっ! クラマが まってるよ!」


「――――うん、シャルちゃん!」




 中庭に出る。あれから少し時間が経ち、日が昇り始めていた。


「えひひ、いい天気だね!」


「ちずる クラマのこと ほんとうに どこにいるか わかるの?」


 紫髪の少女、シャルルージュ・クレッセンは千寿流に再度問いかける。


「え、え~と、その知ってるっていうか、この館にいるのかなぁ~って。ほ、ほら、お外に出てるかもしれないでしょ? こんなに天気いいんだし!」


 一言一言でどもる上ずった声。挙動不審の塊。クラマという子は知らない。だから、当然どこにいるのかも知らない。

 内心千寿流もごまかしきれていると思ってはいないが、とにかくこの不気味な館から離れたい一心だった。


「なるほど! さすがだね ちずる! じゃあ さっそく クラマをさがしに でかけよう!」


「あぁ! シャルちゃん、ちょっとまって!」


 この先にはあの門がある。何回試しても同じ場所に戻されてしまう難攻不落の門。いや、門ではなく結界という方が相応しいだろうか?


 ずきりと右膝の傷がうずいた。

 あれだけ何回も試した。いろんなところから脱出しようと試みた。今回もきっとどうせ駄目なんだ。気持ちは曇り空のような暗い灰色に染まっていた。


「ん? どうしたの? はやくきてよ ちずる」


「あ……れ?」


 シャルはそこに門など無かったかのように、いとも容易く通り抜ける。

 白昼夢でも見ていたのだろうか、何度試しても駄目だった。


 夢の中は想像の世界だ。だから、何をするにも自由。自由も不自由も、そこに在る。もしかしたら囚われていると妄想して、自らを閉じ込めてしまっていたのかもしれない。

 もし、そうだとしたのなら、何の問題もない。夢は覚めた。彼女の声で。見上げた空は鬱屈とした灰色を洗うかのような青。

 目をきゅっとつぶって門をくぐる。今度はどうかそのままでと、祈るように大地を踏みしめた。

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