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Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第二章 クラマを探して
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岩壁の攻防2

「キシャァアァァッ!!」


 再度視界が黒くなる。まるで映画館で照明が前触れなく落ちるように映像が切り替わった。

 それは赤黒く輪っかのような境で区切られ、黒い牙のようなものが円状に生えており、そのどれもがドロリと粘性を纏っている。

 例えるならば巨大な八目鰻が口を大きく開いた時のような、そんな恐怖としかいいようのない光景だった。


「ひぃいいぃいぃ!?」


 あまりの恐怖に腰を抜かして、その場で倒れ込んでしまう千寿流。

 これは危険だ。到底太刀打ちなんかできようもない。逃げなければ喰われて、咀嚼されて、跡形もなく無惨に殺される。そう直感し、尻もちをつきながら何とかという思いで後ずさる。

 幸い千寿流を捕食しようと大口を開けていたこともあり、岩壁に思い切り体をぶつけてしまい、中まで入ってくることはなかった。

 しかし、知性が低いとはいってもそれは人間と比べればという話。魔獣(マインドイーター)といえど捕食者であるならばそこまで浅慮ではないだろう。次は勢いをつけて穴の奥深くまで侵入してくるはずだ。

 千寿流は相手を刺激しないようにゆっくりと、確実に後退する。


(どうしよう、息を殺していないふりしてやり過ごせばいいの!? でも、いつかは出ないといけないよね? いやいやいや、そもそもこの穴ってあの魔獣(マインドイーター)が掘り進めたものなんじゃ!?)


 頭の中で考えが錯綜する。そのどれもが意味のない思考。いろいろな案を考えてみても、どれを選んだとしても助かるビジョンが見えなかった。

 絶体絶命のピンチ、その過程で後ろをふと振り返った。


「シャル、ちゃん」


 気を失っているシャルが、壁にもたれかかる様にして眠っていた。

 眠ってしまっているはずなのに、千寿流を守ることができたのが嬉しかったのか、その表情はどこか安心しているように見えた。


(そうだ、あたしには逃げ道なんてないんだ)


「グルゥゥゥゥゥゥウッ!!」


 その瞬間、千寿流たちを捕食せんと横穴に侵入するために大口を窄めたワーム型の魔獣(マインドイーター)が顔を覗かせた。

 首に刃を突きつけられた土壇場に、緊張からか顔に一筋の汗が流れた。考えてる時間は数秒だけだ。

 もちろん千寿流にはシャルを置いてここから逃げるなんて選択肢は有り得ない。というよりもここが横穴の中の以上、逃げ道は完全に断たれてしまっている。


 じゃあ、覚悟を決めるしかない。

 傍らに転がっている傘を両手に持ち、困難を迎え撃つように相手を見据えて構える。頬を伝って汗が一粒、地面にぽつりと落ちた。

 いつもは抜けててもいい。馬鹿にされたっていい。勇気がなくたっていい。怖がって一歩後ろを歩いて誰かについていく。それでも笑い話にできると思うから。

 だって近衛千寿流という人間はそういう人間なのだから。

 けれど、この瞬間だけは。この一時だけは、毅然たれ。


(何も考えちゃだめだ。怖いってことも、逃げ出したいってことも)


 手は震えているか。

 いや、震えててもいい。震えていても逃げ出すな。

 逃げ出さなければこの瞬間はあたしだけのものだから。


「こ、こい、魔獣(バケモノ)! あたしがやっつけてやるっ!」


 ワーム型の魔獣(マインドイーター)は千寿流たちを再度認識すると、ものすごい勢いで横穴の壁面を抉りながら突進してくる。


「やぁあぁあぁぁあぁっ!」


 千寿流は馬鹿でかい音を鳴らし続ける自分の心臓の音に呼吸を合わせて、傘をクロスカウンター気味に横振りで思い切りスイングした。

 見事に傘はワーム型の魔獣(マインドイーター)の窄めた口に直撃する。しかし、魔獣(マインドイーター)の外殻は岩よりも固く、自分よりも何十倍もある巨体を殴りつけた衝撃はすさまじいものだった。

 幼い千寿流の腕力ではその衝撃に耐えられるはずもなく、持っていた傘とともに吹き飛ばされてしまった。


(がぁっ! 痛ぁ。で、でも、立たなきゃっ。あたしはっ。あたしはっ!)


 視界の上下があべこべになる。吹き飛ばされた衝撃で天井に強かにもんどりを打ってしまうが、精いっぱいの気力を振り絞り、千寿流は何とか立ち上がろうとする。

 シャルを守りたいという一心だけで立ち上がる。それ以外、何か考えることなんてできなかった。

 腕が動かない。動かないし、すさまじい痛みが断絶的に襲ってくる。千寿流には痺れているのか、既に折れてしまっているのか、それすらわからなかった。

 ワーム型の魔獣(マインドイーター)は目の前に停滞していた。それはゆっくりと口を開ける。すでに動くことができず、満身創痍の獲物を前に焦る必要など何もない。

 だから、ゆっくりと。千寿流たち(えもの)を捕食するため、味わうためにゆっくりと。

 魔獣(マインドイーター)の口がゆっくりと開いたからだろうか。周りの物の動きさえゆっくりに時間がスローモーションのように感じられた。だから、自分はこれから食べられて死んでしまうんだと強く実感した。悲しくて、怖いけど、仕方がないんだって思ってしまった。


「っ……ごめん、シャルちゃん……あたしじゃ、無理だよ」


 悔しくて涙が流れた。謝るためにシャルの方向に振り向こうとした。その瞬間――


「ギゲ!? ギィ゛イ゛ィ゛ィィィイ゛ぃ゛!?」


 ッブッシュウウウウゥゥウ!


 あれだけ強固で頑強な、絶対に敵うはずはないと思っていたワーム型の魔獣(マインドイーター)は、千寿流の目の前で弾け飛んで消滅した。

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