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Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第二章 クラマを探して
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トラブルメーカー

 命の家を後にした一行は、再び横浜市に続く切り立った崖に訪れていた。

 千寿流は先の服が奈落に消えていった事件の手前、あまり乗り気ではなかったものの、夜深に「いいからいいから」と押し切られてしまい、しぶしぶといったところだ。


「とりあえず戻ってきたけど、どうしよう夜深ちゃん? 何か考えがあるんだよね?」


 当たり前だが辺りを見渡してみてみても、橋の代わりになるようなものは何もない。先ほどと同じ風景が寸分違わずそこに在るだけだ。

 夜深はにやりと表情で返事を返すと、地面に手を付き異能を解放し奇跡(アクト)体現(こうし)する。

 目視できるほどの力の奔流。それは奇麗とも禍々しいとも云える不思議な光。その黒い粒子はアスファルトの隙間に所々と生える雄日芝に纏わりつくと、そのまま丸ごとを飲み込んだ。

 時間にして数秒。真っ黒に染まった雄日芝はシュルシュルと音が聴こえてきそうな勢いで異常発達し、そのまま伸び続け、向こう岸の地面から盛り上がった岩突起に巻き付くと、岩が砕けそうなほどにきつく締めついた。

 薄く伸びた雄日芝は幾重にも絡みつき、人が乗っても千切れないような強度を誇る橋へと姿を変える。


「わ、すごい。へ? なにこれ? すごいすごいっ!」


 隣に目を向けると、シャルちゃんがキラキラした目で夜深ちゃんを見ていた。

 こうして目をキラキラ輝かせているシャルちゃんも暗いところを一気に明るくできるような、夜深ちゃんに負けず劣らずのすっごい異能(アクト)を持っている。


(あたしだけが何も持っていない。あたしだけが能無し(ノーレア)。あたしもなにか役に立ちたいな)


 あたしの悪い癖だった。他人と自分を比べて自己嫌悪して、落ち込んで。異能(アクト)なんてギフテッドなもの、いくら悩んだって解決しないのにダメな方向ばっかに考えてしまう。


「ち~ず~る~!」


 シャルに名前を呼ばれ落ち込んでいた顔を上げると、すでに二人とも草で出来た橋の向こうの岩崖で待っていた。


「わ、ちょ、いつのまに!? 置いていかないでよ~!」


 呼ばれて置いていかれると思い、慌てて橋を渡ろうとする千寿流。

 空気の淀み。ブレる蜃気楼。在ってはいけないものがそこに在る。


「……っ! まって千寿流ちゃん! 橋から降りるんだ!」


 それは悪兆。

 二人とも千寿流の友人だ。別に少し先を歩かれたぐらいで置いていかれるはずはない。だからゆっくりと安全を確認しつつ渡るべきなのだ。

 橋は大人三人が並んで立てるほどの幅とはいえ、手すりのような気の利いたものは存在しない。お世辞にも安全とはいえないそんな不安定な場所で襲い掛かるのは、いつだってイレギュラーな厄介事ばかりなのだから。


 ズザザザザ……ッ!

 岩盤をヤスリで削るような、耳障りな音が響く。同時に漂う、乾いた土と独特の腐敗臭。見下ろすと岩壁の横穴から、巨大な化け物が鎌首をもたげていた。普段から岩場に住み着いているのか、その表面は乾燥している。

 先の人型の魔獣(マインドイーター)同様、黒く覆われた甲殻に血液が走ったような赤いライン。しかし姿は全く異なり、それは巨大な蚯蚓を連想させた。

 驚くべきはその大きさで、千寿流を丸ごと飲み込んでもおかしくないほどに巨大であり、宙をうねるように回転し、その口を大きく開き、橋の上に立つ千寿流を捕食せんと襲い掛かる。


「へ? いやちょっと。えっと、なになになになになに!?」


 突然の出来事に脳内がショートして正常な考えを巡らすことができない。日常の中にある非日常。誰もが心の片隅のどこかで期待している予想外のハプニング。

 しかし、それは予想して準備して理解したうえで迎え入れることで、ようやくエンターテイメントとして成立するのだ。

 急に視界の端から巨大な蚯蚓が口を開けて襲ってきたら、誰だって頭の中が真っ白になるだろう。

 芯を刺す恐怖から体が一瞬硬直して、その次に頭に浮かんだのは逃げなければ飲み込まれるという感情。横に飛びのくか、しゃがんでやり過ごすか。そんなことも考えられず、重心を後ろに預け一歩後退する。


「わ」


 後ずさった右足が、虚空を踏み抜く。声に出した時には既に遅かった。

 世界がスローモーションになり、胃袋が喉の奥までせり上がってくるような浮遊感。重力が千寿流の身体を、容赦なく奈落へと引きずり込んだ。


「っ! ちずるぅぅぅぅぅぅー!!」


 その光景を目の当たりにして、シャルは千寿流のもとにいち早く駆けだした。

 落下する千寿流に勢いよく飛びつき抱き着く形になる。落ちる恐怖とシャルが飛び込んでくれた嬉しさ。

 けれど、死を手前にして思考できることなんて何もない。体はそのまま真っ逆さまに重心を頭に預け落ちていく。


「やれやれ、トラブルが絶えないな、君たちは」


 首を左右に振りながらため息を吐く。


「面倒事も見方を変えれば喜劇となる。君たちといると退屈しないね」


 そう言いながら、夜深はもう一度地面に触れた。

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