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Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第九章 灰かぶりの少女は魔女の夢を観る
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怯えの奥にある光

 ――ゴオオオオオ!

 洞窟の奥から、風の音とは違う低く重たい音が響き渡った。地の底そのものが唸っているような、腹の底を叩く重圧。


「せせせ、先輩っ!? 今の音っ!」


 雪の声は震えていた。言葉の端々が掠れ、息の白さが細くちぎれていく。暗闇の中で彼女の瞳だけが怯えたように光り、まるで照らされた小動物のようだった。


「ああ、奥の方からだな」


 沙希は息を吐き、肩を竦める。この辺りで魔獣(マインドイーター)が出没する報告なんて聞いたことがない。だから、内心緊張はしている。だが、それを悟られるわけにはいかなかった。

 こういう時、どちらかが冷静さを保っていないと、恐怖は連鎖していくからだ。


「どどど、ど、どうしましょうっ!?」


「大丈夫、心配すんな雪。魔獣(マインドイーター)か、それとも冬眠から目覚めちまった熊か分からないが、近寄らなければ大丈夫。なあ、どうするアリシア?……って」


 慌てふためく雪を宥め、判断を仰ごうと振り返った瞬間、沙希の表情が固まった。さっきまで隣にいたはずのアリシアの姿が、忽然と消えていたのだ。


「っち! あいつ勝手にッ!」


 舌打ちとともに、額に手を当てる。吹き込む風の音で足音に気づけなかった。

 嫌な予感が脳裏をよぎる。目の前が丸きり見えていない。あの子は――また、無茶をする。自分の傷を埋めるみたいに。


「ね、ねえ、先輩っ」


「あ? なんだよ?」


 焦燥を押し殺しながら、少し苛立ちながら沙希は返す。


「そ、その、えっと」


「あー、はっきり言ってくれ。今チンタラしてられないってのは分かるだろ?」


「す、すみませんっ! その、ですね。アリシア先輩は魔獣(マインドイーター)が憎いんですか? 魔獣(マインドイーター)が憎いからこんなことをしてるんですか?」


 その言葉に沙希は眉をひそめた。雪の瞳はまっすぐだった。怯えながらも逃げずに見つめてくる。


「……どうしてそう思う?」


「判りますよ。だって、魔獣(マインドイーター)の話が出た時の先輩の顔は、どこか遠い眼差しで。私と話している時でも、私の後ろ側にいる“誰か”を視ていましたから。そ、それくらいは、私にも分かります」


「そっか。んー、分かったよ」


 沙希もアリシアの気持ちは理解していた。雪に口止めをする理由、それは心配を掛けたくないから。

 雪はまだ精神面で幼く、脆弱な部分がある。それこそ、自分の意志すらも確立できていない。他人を心配する余裕が無いのだ。けれど、他人を気遣おうとする。それはとても危なげで不安定な生き方に思えた。

 けど、それを理解したうえでなお、沙希は不公平だと感じた。目の前にいる、森に迷い込んだ雪ウサギみたいな少女は、今にも泣きだしそうな顔でこちらを見つめている。


(そんな顔されたら、しょうがないよな)


 自分の行為が不義理なものだとしても、それがいつだって正しいとも間違いとも思わない。なら、泣きそうな少女の瞳から、零れ落ちるであろう涙を拭ってやるくらいはいいと思った。


「アイツには口止めされてるんだ。アイツに言わないって約束してくれよな?」


「はい」


 雪は真剣な眼差しで頷いた。その瞳に映る誠実さを見て、沙希は覚悟を決める。ゆっくりと、けれど包み隠さずに語り始めた。

 アリシアの妹が魔獣(マインドイーター)に殺害されたこと。父と母も同じ日に姿を消してしまったこと。新時代の人類(ネクスト)として生まれてしまったために、厄介者として疎まれてきたこと。そして、妹を殺したその(マインドイーター)を探し続けているということ。

 語り終える頃、洞窟の奥でまた低く唸り声が響いた。雪は両の手を胸の前で握りしめ、小さく震えていた。

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